第11話 黄緑渓流の山道
えっと…たしかここで現れるモンスターはビッグボアにオーク…後は戦角鹿と尾火狐だったっけ?
ビッグボアは人間より大きな猪で体当たり攻撃が危険だ。
オークは豚頭の巨人で身長が四メートルはあり怪力、スピードは遅い。
このあたりは他のゲームでも出て来るメジャーなモンスターだ、レベルを上げて駆け出しから初級冒険者になった人間がパーティーを組んで戦う事を推奨されてる。
メジャーなだけに戦い方もわかりやすく共に前衛が足止めをしてるウチに後衛の魔導師が魔法で或いは弓師が矢で攻撃すれば倒せるだろう。
一方の戦角鹿や尾火狐は少し工夫がいる。
戦角鹿はやたらと鋭い刺のついたゴツい角を持つ好戦的な鹿だ、メスにも角がある。
尾火狐は普通の狐より尻尾が大きく目立つ、その尻尾の先から火の玉を出現させてそれを放ってくるモンスターだ。
戦角鹿は隠れてたりして不意を突いて後衛を狙ってくるモンスターだし尾火狐は尻尾の炎を飛ばしての遠距離攻撃を仕掛けてきて距離を詰めようとすると逃げる。
少し厄介なモンスターをこのあたりから配置して冒険者にモンスターへの対応を考えるさせようとしてくるとネットに書いてあった。
どうしてそこまで王道なファンタジー世界を作り上げといて最終目標が世界を滅亡させるとかになるのかね…。
まあ『ワールドエンドゴッド』は邪神が人間に成りすましてこの世界を生きていくゲームだ。
邪神が就ける職業も冒険者や商人以外にも農民でも貴族でも或いは異種族(人間からみればモンスターと大差ないと差別されてる種族)の国の職にも就ける。
本当に良く出来たゲームみたいだったんだけどな…。
まあゲームだった頃とは色々と勝手も違うのは十分に分かってる、油断せずに行こう。
『黄緑渓流の山道』を進んでいくとやはりモンスターと遭遇した。
敵はオークだ、見た目こそ豚頭の巨人っぽいが人間の大人でも一撃で殺せる怪力を持っている。
「フゴォオッ!」
「この世界ってオークの肉は食用なんだろうか?」
そんな事を考えながらロングソードを抜いてゆっくり接近する、オークが雄叫びを上げて殴りかかって来た。
バックステップで躱してその拳にロングソードで攻撃する。
斬られた手が痛いのか更に大きな声を出すオーク、防御力はそこまでないのか。
しかし攻撃されても距離を取ったりする事もなく拳を滅茶苦茶に放ってくるだけだ。
この世界のオークはかなりお馬鹿なのかも知れない。
一撃は怖いが当たらなければ意味はない、私は拳を掻い潜り接近しオークの右足を切りつけた。
オークは片足では立つのも大変なのか体勢を崩した。
それでも私に殴りかかってくる戦意は大した物だ。
私はこの最後の悪あがきを躱して頭へと接近しロングソードを叩き込んだ。
オークは絶命した。
見た目通りタフなモンスターだ、群れで相手はしたくないな。
それにしても自分の倍以上大きな体躯の怪物を前にしても怯まない自分自身にも驚いた。
そこはやはり邪神に転生した事が影響してるのか?
「にしてもオークも倒した後の剥ぎ取りとか出来ないだよな」
本来なら皮とか睾丸が売れるらしいが素人にはちょっと無理。
戦角鹿ならその立派な角が、尾火狐なら毛皮と尻尾が売れるとのことだが…。
仕方ない、このオークも邪神ビームで掃除しとこう。
剣での戦い方も大分慣れてきたのでここからは杖に武器を持ち替えて進もうかな、丁度山道なので杖の方が歩くときに使えるし。
一応あるんだよ主人公である邪神専用の魔法ってのがね。
今度はソイツを試してみようかな。
そして私は何食わぬ顔でさらに山道を進む。
そんな私を狙っている者がいる事に………は、気づいてるんだよね。
何しろ邪神ですから。