第10話 レアエネミー、ホロウシリーズ
……元は人間だったって設定とかあるモンスターだろうか?
他のゲームならゾンビとかが有名だが似たような感じでこの世界にも人間に近い姿をしたモンスターって結構多い。
しかしこのモンスターは姿は人型だが頭が灰色の霧のような物で覆われているな、まあ完全な人間と戦うよりは気が楽なので結構だけど。
「確かネットでレアエネミーに彷徨う者の系譜ってあったっけ……?」
『ワールドエンドゴッド』の全マップに低確率で出現するレアエネミーの一種だ、彷徨うなんたらって名前のモンスターで大抵はそのマップに出て来る通常モンスターとは一線を画す戦闘力を持っている…らしい。
まさかそんなレアエネミーがこんな街を出て直ぐのタイミングで現れるとは。
この手のレアエネミーは倒すとレアなアイテムや装備をドロップするかも。
……ってんなわけないか。
残念ながら先程まで戦ったモンスターとの戦闘でモンスターを倒しても死骸は消えないしアイテムもお金もドロップしない事は分かっている……ゴブリンは棍棒を残してたがあんなの要らないよ。
つまりはレアエネミーなんてただ強いだけで戦うだけ損な相手って事だ。
正直な話で言えばどっかに行って欲しい。
しかし敵さんは手にした槍をこちらに向けてきた。
…やるしかないか。
こちらもロングソードを抜いて構える。
邪神スキル発動!
邪神サーチアイ!
ゴブリンやスライムみたいに見た目で名前が分からんのでせめて相手の名前くらいは知っておきたい。
この邪神スキルはそんなのが分かるのだ。
名前:彷徨う槍術士
本当に名前だけ…まあ分かる情報が多すぎても邪神おじさんの頭がパンクするので別にいいか。
すると無言で敵さんが動いた。
ゴブリンよりも遥かに速い速度で接近、槍が届く範囲まで近付くとそれ以上は接近せずに連続で突きを放ってきた。
バックステップで躱して更に距離を取る。
熟練された槍の突きは速く、そして連続で放たれるので隙もない。
少なくとも槍が当たれば苦痛で動きを止める人間にはかなり不利だ。
そもそもロングソードじゃリーチが違うのでなかなか攻めあぐねるのが普通だろう。
しかしそこは邪神おじさんなのだ。
「悪いが強そうな相手の戦い方に合わせるなんて事はしないから」
邪神ビーム!
私の人差し指の先から放たれた黒いビームはアッサリと槍術士を捉えて消し飛ばした。
邪神おじさんは彷徨う槍術士を倒した!
ふうっ邪神スキルのおかげで助かった。
こう言うレアエネミーとかのゲーム的な要素があるのなら気が抜けないな。
先程の邪神サーチアイでレベルとかステータスが現れなかったのはそう言う要素は特にないって事か?
カルマゲージはあったのに…。
もう少しゲーム好きに優しい仕様にして欲しいもんである、ステータスとかで相手に勝てるなって裏打ちの一つもないと割と不安になってしまうくらい緩いゲーマーなんだよ邪神おじさんは。
……まっ言ってても仕方ないので先へ進むもう。
もう流石にレアエネミーとかないだろう、多分。
そうして私は『新風吹く深緑の森』を徒歩で抜け、更にその先へと進んだ。
森を抜け出た先は小高い丘になっていてその先の景色を見下ろせた。
「これが……『黄緑渓流の山道』か!」
自然の深い緑色と時折混じる黄色の山々の雄大な景色、それの間に垣間見える流れる川とまさに大自然の渓流だ。
そこにある自然の道と旅人の為の木造の道とを合わせた山道を進む事になる。
その木造の山道を何故モンスターが攻撃しないのかは分からん、ゲームならそう言う仕様で片付けられる話なんだろうけど…。
答えなんて出ないので先に進もう。
邪神フライ発動だ。
私は少しだけ飛んで下へと移動した。
そして私は『黄緑渓流の山道』を進む、最初の入り口となる山道は木造の橋だったが少し進むと自然の山道が見えてきた。
道幅も広いな、まあここでも普通にモンスターが出る筈なので当たり前だが。
なんかそれを考えると少し残念だ。
本来ならこの美しい景色を何か食べながらのんびりと散歩でもしたい。