外へ
あの日から数日が経過した
外はあの日から何も変わらない
異形の化け物が徘徊し街を破壊していく
一つ違うとすればあれだけ逃げ惑っていた人々は姿を消し人間が出す音が一切しなくなった事位だ
屋内に避難したのか街を離れたのか分からない
少しの間だけラジオが機能していたが電波塔が破壊されたのか砂嵐の音がするだけの機械となってしまった。
暫くは自宅にあった食べ物や飲み物で何とか生き延びていたがそれもそろそろ底を付く
私は考える
ここに留まってもいずれ飢えにより命を落とすだけ
飢えの苦痛は何にも耐え難い物だと聞いたことがある
ならばどうするか
この家を離れ他の家や店から食べ物を入手する以外に方法はない
昔家族が趣味でしていた登山用のリュックを引っ張り出し食料や必要な装備を詰め込む
必要そうな装備を詰めるだけ積み込み玄関前に立つ
一歩出れば危険地帯だ
襲われればひとたまりもない
だが動かない以上何も得ることは出来ない
飢えながら死を待つか
僅かな希望にすがり最後まで足掻くか
どちらかしか選択肢は無い
深呼吸をし扉を開ける
外は不気味なほど静まり返っている
一歩を踏み出す
静かすぎるその地に私の足音だけが響く
少し歩いたところにコンビニが有る
まずはそこまで行くことを目標にする
何が潜んでいるか分からない以上なるべく足音を立てずに歩く
コンビニまであと数百メートルという所で異変に気がついた
コンビニはもはや廃墟と言ってもいいほどに荒れ果てていた
誰かが逃げ込んで棚やある物でバリケードを張ったのだろう
壊された棚等が散乱している
窓ガラスは割られており
中は刃物を持った何かが暴れたのか
壁や床は切り裂かれた跡がある
その光景に目を疑ったが悠長にしている暇は無い
いつ襲われるか分からない今、やるべきことは生きるために必要な食料や道具を揃え、安全な場所に身を潜めて生きることである
散乱している瓦礫の中からまだ使えそうな電池や食料、道具等をかき集めてバックに詰め込む
ひとしきり集め店を出る
本当はもう少し漁りたかったが長時間留まるのはリスクが大きいため一通り集め後にする
先客がいたのか残っている物資は思いの外少なかった
現状今の装備や物資では心許ないが仕方ない
店を離れなるべく物陰に隠れるようにして移動する
いつ化け物が襲ってきてもおかしくはない
私達は平和すぎるゆえに平和ボケし何もしてこなかった
だから逃げる為の体力や力も無い
隠れ方や戦闘や医療の知識も何も無い
襲われれば為す術無く命を落とすだろう
取り止めなく溢れる恐怖心を何とか押さえ付けながらあるはずも無い安全地帯を探し前へと進む
ふと違和感を感じた
あまりにも静かすぎる
この引きこもっていた数日間
化け物は外を徘徊していた
大きいものや小さいものもいたはず
なのに外に出てからこの数時間
一度も見かけていないし音一つしていない
幼稚園児くらいの大きさの化け物でさえ歩くときには数百メートル先まで聞こえるような大きな音を発しており、大きくなれば成る程その音も大きくなっていた
それだけ大きな音がするはずなのに全く聞こえない
少し前まではあちらこちらから聞こえていたはず
耳がおかしくなったのかと思ったが自分の歩く靴の音は聞こえるし自身の息遣いも聞こえる
聴力は正常である
自分の耳や精神がおかしくなっていけなれば考えられることは一つ
今現在この街に化け物はいないということである
その考えに至った…〈〈至ってしまった〉〉
私はこの地に化け物はいなくなった!と思い不用心にも安心感から周囲の確認もせず走り出してしまった
その油断が命取りだった