異形の生物
暫く揺れていたが徐々に揺れは収まり私は立ち上がって周囲を見渡す
最初投げ出された時に見た景色と異なり完全に倒壊したビル
交差点にポッカリと空いた大穴
街路樹は根本から折れ
電柱は真っ二つ
千切れた電線はバチバチと青白い火花を放っている
道路に走る地割れはキレイに割れており隙間に自動車が挟まっている
あちらこちらに黒煙を吹く自動車と横転する自動車
頭を抑えて蹲る人
母親を泣きながら呼んでいる子供
とにかく地獄絵図である
私は幸い怪我もなかった
立ち上がりヨロヨロと自宅の方面へと歩き出す
道中も悲惨な状態で所々通ることも出来ず迂回しなければならない道もあった
「酷すぎる…」
毎日見る通学の風景とは異なり変わり果てたその風景に言葉を漏らす
バスが横転したところから計算して普段歩きなら1時間で来れるところを数時間をかけて帰宅
家の中もメチャクチャだった
割れた皿に隅の方に飛んでいったテレビ
固定されていなかったタンスや棚は全て倒れていた
ブレーカーを落とし割れた食器類を片付けていると外から人の叫び声や怒鳴る声、緊急車両の他聞いたこともないサイレンが鳴り響き出した
外では叫びながら逃げ惑う人々と必死に避難誘導する警察と消防士
何事かと思い身を乗り出そうとすると黒い影が頭上を通過した
その影は飛行機でもヘリコプターでもドローンでもない形をしていた
落下物だとしても周囲にそんな高い建物はない
上を見上げた頃には影はもういなかった
遠くから爆発音が聞こえてくる
それに混じって聞こえるサイレンと悲鳴
何を見たのか爆発した方面から避難誘導をしていたはずの警察や消防士までもが己の職務を捨て必死の形相で逃げていく
またしても黒い影が横切る
余りにも凄惨なこの状況に避難する事を考えたがこの状況下では危険だと判断し中に留まるとこにした
一階よりは外の確認がしやすいだろうと考え二階に上がりベランダから外を見て驚愕した
爆発音が聞こえてくる方面に見えたのは赤い色をした四足歩行の化け物が歩いている
大きさは遠目で見る限り昔見たことのある戦車と同等かそれ以上に大きかった
移動速度は速い
赤の化け物は通り道に何やら塊を落としていく
塊はまるで生きているかのように呼吸をするように上下している
…数秒後眩しい閃光とともにあの大きさからは想像できないような威力で爆発した
周囲は瓦礫の山と化し熱線により周囲の家が炎に包まれ激しく燃え盛っている
赤の化け物は塊を落とすだけでなく、化け物自身より火炎放射のような熱線を吐き出している
「…何あれ!?」
見たこともない異形の化け物が徘徊している事に理解が追いつかず驚愕する
またしても黒い影が頭上を横切る
同時に人間の悲鳴が聞こえてくる
声が聞こえてきた上を見上げて固まる
私の目に映ったのは巨大な虫
その足には人間が抱えられていた
必死にもがく人間と意にも介してない巨大な虫
即座に室内へと転がり込み窓とカーテンを閉める
「何あれ何あれ何あれ!!?」
アニメや漫画でしか見たことのないような光景が今目の前で広がっている
スマホを取り出してSNSを開く
電波塔はやられていないためかネットにアクセスすることができた
そこには信じられないような投稿が複数存在した
赤い化け物や虫だけではなく紫色の丸い塊
超巨大化した大ムカデ
テレビでよく見るようなゾンビ
よくある最弱と呼ばれるスライム
見た目は人間だが魔法を使う者等
様々な化け物が蠢いているとの写真付きの投稿
現状を信じられずに手が震える
またしても地震が起こる
カーテンの隙間から外を覗くと
黒い雲が蔓延していた
その隙間より異形の化け物が降りてきている
世界の終焉を感じさせるような恐ろしい光景となっていた
彼女はただ信じられない光景にただただ愕然とし恐怖することしか術がなかった
2026年6月6日
世界の崩壊が始まった瞬間である