2pt サクサク溜まる便利なポイント
光は理解した。自身がまず貴族でないという事実を。
財閥令嬢という立場であるから令嬢であることには間違いはないのだが、だからと言って物語の悪役令嬢のようなことはできないといった方が良い。
ならば少しでも生き残る可能性を高くするため、自分の力を確認する必要があった。
悪役令嬢ポイントという名の力を。
――悪役令嬢ポイントっていう名前なのと女神の望みを考えれば、これはきっと悪役令嬢っぽいことをすれば稼げるはず。
とは思うものの。
「あぅ~」
赤子の光に悪役令嬢らしいことができるかと言われるとそんなことはない。
裏工作は当然できないし、我がままにするといってもせいぜい、
「あっ。ちょっ!?タオルケットを投げないでください!!」
使用人を少し困らせる程度だ。恐らく通常の赤子とやることはそこまで変わらない………なんて思ったのだが、
《悪役令嬢ポイントを1pt獲得しました》
「へぶぅ?」
もらえてしまった。
光は本当にこれでポイントがもらえたのかと驚き、その体を硬直させる。そしてそれが何かの偶然ではないかと確かめるため。
「2回目ですか!?」
自分のタオルケットを投げ捨てるのであった。
当然結果は、
《悪役令嬢ポイントを1pt獲得しました》
――マジか~。
マジである。
たいして苦労することもなく、簡単に悪役令嬢ポイントというものを獲得できてしまった。これは彼女にとっては予想外のことであり、ある意味運がいい事とも言える。
とりあえず足掛かりができたから、あとはここから、
――検証が必要、かな。
その後、使用人の悲鳴が何度も響いたのは言うまでもないだろう。
で、そんな犠牲があったのだから当然失敗などは許されるはずもなく。
というか彼女がさすがにそうでないと心が痛み、
――なんとなく、分かったかな。
悪役令嬢ポイントを得られる条件は何となく理解できた。
その条件というのが、
――度合いはまだ分からないけど、他人へ迷惑をかける必要がある、かな。
他人の心に負荷をかける。それがポイントを得られる条件だということが分かった。
証拠の1つとなる事例もある。
使用人がいないときにタオルケットを投げ捨てたりもしたのだが、その時はポイントが得れなかった。ただ、そのあと使用人が部屋に入ってきてタオルケットが落ちていることを確認した段階でポイントが得られたのだ。
つまりそれは、何かした段階ではなく何かしたことで他人がストレスを感じたことがトリガーとなっていると予想できるわけだ。
と、そういったことが分かったわけで、とりあえず光は将来への心配が多少小さくなった。
他人へ迷惑をかければポイントはもらえるわけだし、今の立場があればたとえ年を重ねたとしても問題はないはずである。
となると現在やることが変わってきて、
――検証したら、後処理も大事だよね。
投げ捨てたタオルケットの拐取は使用人がやってくれた。
しかしその副産物に関してはまだ手が付けられていない。
使用人のストレスというのもそうだし、
――なんかポイント結構たまってるけど、どうしよう。