18pt それぞれの関係性
時の流れとは速いもの。
会社の運営と取り巻きたちの相手に、護衛として将来役立てる予定の子供達の教育。そんなことをしていたらあっという間に時は経ち、
「もうすぐ小学生だね」
「そういえば、あと数か月か」
「そうですわね。皆さんはもう入学する学校決めてまして?」
小学生となる日も近づいている。
この世界でも義務教育は存在し、それは財閥の令息や令嬢たちにも適用されるものだ。ただ、一部で財閥の者達にはしきたりのようなものも存在するのだが、それに触れるのはまた今度にしよう。
それよりも、
「ねぇ。光ちゃん」
「ん?なんですの下僕」
「もうすぐ小学生になるんだし、関係を少し良くしない?」
下僕こと作弥。
彼からこんなお願いが舞い込んできた。
まだ作弥自身は下僕という位置づけをよく理解していないように見えるので、これを仕掛けたのはおそらくその周囲の人間。
親なのか使用人なのかは分からないが、作弥の実家である紫金財閥のどこかしらが動いているのは間違いない。小学生に入る前に解消すれば、今後に響くことはないだろうという考えなのかもしれない。
だが、だからと言って、
「良くするって、いったい何になるつもりですの?」
「え?えぇ~と。と、友達、とか?」
作弥はまず下僕という立場をあまり正しく認識できていないので、下僕から少し良くなる立場というのがあまり思い浮かばない。そんな中で彼が出したのは友達という立場だった。
実際、それくらいに改善できれば彼の背後にいる者たちも満足できるだろう。
が、
「ん?私にとって下僕と主人は、友達以上の関係ですわよ」
「そうなの?」
友達以上。
その以上の方向性がどうなっているのかは全く説明されていないが、そういわれると作弥としては黙るしかない。
彼は友達以上の関係性と言われると、それでなんだか満足してしまうのだから。
――まあ、友達以上に便利な関係性って意味なんだけどね?以上としか言ってないし、勝手に勘違いした君が悪いんだよ作弥君。
「で?下僕より発展した関係なんて私も知りませんわよ。どうしますの?」
「ど、どうしよう」
「下僕も具体的に知っているわけではないですのね………では、このまま下僕と主人を継続しますわよ」
「う、うん!」
簡単に流されてしまう下僕あった。子供であるから仕方ない事ではあるが、ちょろい。
ちなみに、作弥以外とは、
「光ちゃん。またお洋服会に行こう!」
「ええ。かまいませんわよ。かわいいものを買いに行きましょうか」
「やったぁ!!」
取り巻きの中の紅一点。赤金小百合とは友人に。
よく買い物に行ったり、遊びに行ったりする関係である。
「師匠。これを教えてはもらえないだろうか」
「ああ。かまいませんわよ。そこは………」
眼鏡のクールっぽい取り巻き、白金零里とは師匠と弟子に。
彼は知的好奇心が強く色々と調べたりしているのだが、それの分からないというところを光が軽く教えたりしている間にこうなっていた。
「姉御!見てくれ!こんなの作ったぞ!!」
「おお。すごいですわね。では次はあの機械に触ってこんなものを作ってみてくださいまし」
「分かった!やっぱ姉御に教えてもらうのは楽しいな!」
元気で元気すぎる荒々しい性格をした取り巻き、黄金炎勝とは姉御と舎弟に。
黄金財閥はもともとそういう気質の家らしく、色々と世話をしている間にいつの間にかこう呼ばれるようになっていたのである。いろいろと仕掛けて野菜を食べさせていいるので、舎弟にはしたものの黄金財閥からは感謝されている雰囲気がある。
ちなみに炎勝と零里はそりが合わずよく衝突する関係性だ。社交界の場などでも言い合いになることがよくある。
ちなみに2人を止められるのは光だけということに何故かなっており、それで両者の家の財閥から若干感謝されている節もあった。
今も、
「今日こそテメェをつぶしてやる!」
「ふんっ!それはこっちのセリフだ。負けて泣き叫ぶと良い」
光の会社で没になった商品のゲーム機を使って2人で戦っていた。
喧嘩するほどなんとやらのように光には見えている。
「ぐおおおぉぉぉ!!!卑怯だろテメェ!」
「ふんっ!勝負に卑怯なんてない………って、そっちも卑怯じゃないか!!」
「テメェがやったからお返ししただけだ」
「度合いが違うだろ度合いがぁぁ!!」
現在、ゲーム機から両者とも目を離し、ひたすら現実の方で互いの邪魔をするという愚かな行為をしていた。しまいにはお互い完全にゲーム機から体を離し、取っ組み合いを始めてしまった。両者とも相手の体をつかみ、床をゴロゴロと転がっている。そして、その周囲の者にぶつからないよう気を遣って移動させている光の会社の社員たち。
さすがに目に余るものであり、
「2人とも、ステイですわ」
「「はいっ!」」
光の言葉で瞬時に取っ組み合いをやめて正座になる2人。体に染みついた動きだった。
幼少期の現状は、そんな関係性である。




