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9pt 即ビンゴ

「じゃあ、ちょっとゲームをしまぁす!」


司会者がそんなことを言った瞬間だった。

一瞬にして、子供たちの動きが止まる。それは、じゃれあいすらもそうだった。すべての動きが止まったのだ。

そして、


「「「「ゲーム!!」」」」

「ゲームだああああぁぁぁ!!!!!」

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!」


今度はゲームだということで騒ぎ始める。

実に子供らしい反応だ。

司会者もこの盛り上がりは予想以上だったらしく、困惑した表情を見せている。それでもこのメンバーの中司会をできるだけの実力はあるようで、


「はぁい。これからやるのは、ビンゴゲームです!みんな並んでください!!」


「えぇ~!俺鬼ごっこが良い!」

「私おままごとが良いなぁ~」

「ちっ。『えふぴーえす』じゃねぇのかよ」


子供たちのテンションの差が激しい。

ゲームだと言えば盛り上がったのに、中身を告げれば多くの子供が不満そうに文句を垂れて興味を失う。

実に子供らしいが、ビンゴと言われると何か景品がある可能性もあるし光としてはぜひとも参加したい。

財閥令嬢になってももらえる物はもらっておきたい庶民の心は持ち合わせたままな光なのであった。

彼女は司会者のそばに行き、


「あら?皆さんいらないのでしたらすべて私がもらいますわ」


などと意地の悪そうな笑みを浮かべながら宣言する。

もちろん子供たちはそんなことを言われれば、


「あげないもん!」

「お前なんかにあげるわけないだろ!!」


奪われるのを嫌がるお年頃な子供たちは、あれだけ興味がなさそうにしていたビンゴを始めるように動き出す。光の思惑通りだった。

そのまますぐに光はビンゴカードを1枚司会者から奪い取り、


「これ、もらっていきますわ」


「え?あっ、はい」


カードをひらひらと降りながら離れていった。

すでにビンゴカードはスキルによって比較してあり、このカードが1番最良の結果を導き出すというのは確認してある。

たとえ子供用ビンゴであろうと抜かりはない光であった。


その後司会者に子供たちが群がり、1人1人1枚ずつカードが配られていく。

そこまでの数がいないということでさすがに1人にカードを複数枚渡すという事故が起きることもなく。実際の本番が始まる。


で、当然ながら始まれば、


「あっ。ビンゴですわ」


「「「「えっ!?」」」」


開始1分もしないうちに光が1番に1列そろえる。

子供たちはビンゴというものもあまりよく分かっていないようで首をかしげているが、大人たちの表情は驚愕一色。

注目していた光が最初にビンゴするという圧倒的豪運を見せつけてきたのだから、驚くのも当然だ。父親ですら驚いている。


 ――あの顔は、何も仕組んでないはずなんだけど!?って顔だね。


「え、えぇと。ビンゴの景品はこの中にいろいろとあるんだけど………」


司会者はそう言って、後に並べられたいくつもの景品であるプレゼントを見せてくる。

プレゼントはすべて箱に入っていたり包装がしてあったりして、さまざまな種類のものが入っていることが分かる。

中でも目を引くのは、光の身長の5倍は高く、横幅と奥行きも光の身長以上に大きそうな箱。

大きいため、子供たちは選びたがりそうなものだ。




が、当然光の判断基準は大きさではなく。

スキル、である。


 ――間違いかと思ったけど、何回やってもこれが1番みたいなのよねぇ。


「ではわたくしは、こちらをいただきますわ」


「え?そ、それでいいのですか?その小さいので」


光の拾ったものは、小さな封筒サイズのもの。

簡単に包装されたそれは、近くにある巨大な箱の数々と比べるとどうしても大した価値がないように見えてしまう。

仮〇ライダーベルトと図書カードくらいの差だ。


「これで構いませんわ。あまり大きいものは私では持てませんし……ここで開けてもよろしくて?」


大きいものは使用人たちに運んでもらわなければならない。

それはそれで面倒に感じてしまうのも光が庶民的な部分をいまだ持ち続けている証拠である。


司会者は光の質問を受けて少し迷うようなそぶりを見せつつも、


「ええ。かまいませんよ。どうぞ開けてみてください」


「分かりました。では」


光は一切の躊躇なく。

包装の接着部を切り、丁寧でありつつも迅速に開いていく。中から出てくるのは、


「書類、ですの?」


「ですね………………」


とりあえず、見た限り書類ではあるが借用書などではなさそうだ。もちろん連帯保証人関連や借金関係の書類でもない。

内容としては、


「えぇと。私に土地の所有権が譲渡される、ということですの?」


「そうなりますね」


書類に目を通した光が確認するように視線を向け、司会者がうなずく。

手に入れたのは、どこかの土地の権利書だったのだ。光個人としてはたいして今のところ土地などは欲していないのだが、


「お父様。後で私でも使えそうなものと交換してくださいまし」


結局そう言うしかなかった。

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