プロローグ
新連載です。
よろしくお願いします。
とある1人の人間の人生が幕を閉じた。
その魂は回収され、記憶を抹消されまっさらな状態で新たな生として生まれ変わる。
「悪役令嬢って、いいわよね」
はずだった。
だが、なぜかその魂は記憶を保持した状態で、1人の女神の前へ連れてこられた。
「え?あ、はい。そう、ですね?」
魂は困惑しつつも女神の言葉を肯定する。
そうしながら考察を行うが、状況は全く理解できなかった。
なぜ自分がこの場所にいるのか。そして、なぜ自分だけが選ばれたのか。さっぱりわからない。
「そうよね。あなたもそう思うわよね……だから、あなたには悪役令嬢をやってほしいのよ」
「……は?」
悪役令嬢をやってほしい。そんな願いを今まで聞いたことがあるだろうか。
もしかしたら聞いたことがあるものもいるかもしれないが、とりあえずこの人間にはなかった。だからこそ困惑するのだが、女神はいちいちそんな人間の困惑に等興味を示さないし、関心もない。
だから、話は進んでしまう。
「やっぱり転生させるからいわゆるチートというのはあげるけど、悪役令嬢っぽいことやらないと死んじゃうから気を付けてほしいわ」
「は?死ぬ?」
「そうね。まあ、ちゃんと悪役令嬢をやれば大丈夫よ」
理不尽である。自分で転生させておいて、自分の思い通りに動かなければ殺すというのだ。
だが、それもまた神である。絶対者に理不尽はセットでついているものだ。
「わ、分かりました。ただ、悪役令嬢をやれと言われましても具体的に何をやれば悪役令嬢なのかという判定があいまいでして」
「ああ。そうね。でも大丈夫よ。今回はあなたのチートにもかかわってくるものだから、分かりやすいと思うわ。あなたは10歳から20歳までの間、1年に1000ptの悪役令嬢ポイントを集めればいいだけ」
「悪役令嬢、ポイント……」
知らない単語がどんどん増えていき、理解が追い付かなくなる。
しかし神とは非情な存在だ。
「じゃあ、そういうことで。頑張って」
「え?うそっ!?もう転生なんでs………………」
最後まで言うこともできず、魂がその場から消える。そして何もなくなった空間を見ながら、女神はにやりと笑った。
「いやぁ~。やっぱりこれくらいしないと、悪役令嬢は見れないと思うのよねぇ。だってあの子が転生する世界……」