19.愛の円卓会議
繁華街から少しだけ離れた商業ビルの地下にある、かの中華の名人と言われる料理人が開いた銘店がある。その貸切個室には中華料理屋らしい円卓が二つ置かれており、挟まれるように高波と美知子が座らされていた。
「とりあえずビール人数分と、二人はコーラかなんかでいいかな。
あと紹興酒のボトルを二本と焼酎一本とアイスにミネ適当に。
料理はコースで頼んでおいたけど北京ダックと点心で良かったかな?」
「うん、スポンサーのリリ子にお任せでー。
最近はどうなの? ユンユンに出てるのは見たけどさ。
ドメブラのコレクションでも見かけたよ、すごいね」
「まあ景気はいい方かな。
でも最近は芸能事務所とか群がってきてムカツクんだよね。
あいつらすぐ枕要求してくるからイヤ過ぎる。
女抱きたきゃデリでも呼んでろっつーの」
「マジ真理、突っ込みゃ気持ちいいわけじゃねえっての。
ただ穴が開いてるんじゃなくてナマモノなんだから大事にして欲しいよなぁ」
「そんで美咲? 摘まんだらしいけどどうだったのよ。
あなたの眼鏡には適ったのかな?」
「そうねぇ、肉体はいいんじゃないかしら。
もうちょっと大事にして欲しいからこれから面倒見てあげたいかなぁ。
無理なダイエットしてるわけじゃなさそうだけど、栄養状態が悪すぎなのよね」
「まだ十五なんでしょ? まあそんなもんじゃない?
食べるより無理してでも遊んでた方が楽しい時期ってね」
総勢十二名の年上女性たちがわいわいと身勝手にしゃべっているうちに飲み物が運ばれてきて一時中断となる。高校生の二人にはコーラが渡されて乾杯となった。
音頭を取ったのは最年長でモデルの高坂リリ子、彼女は最初に高波を見出した一人であり初めての女性、つまり高波の童貞を金で奪った女である。当時はまだ大学生で、人気も大したこと無かった。
そんなとき家出していた高波と出会って連れて帰り、女を教えてしまった。それからしばらくは預かってる従妹と偽り連れまわしていたが、周囲の女友達や仕事の関係者が次々と高波に夢中になると言う異常事態を味わい、彼女の精神状態もおかしくなっていく。
その時に読モになったばかりの野々村桃花と知り合い、今も一緒に高波を愛でている。彼女は精神科医を目指す医大生だったのだが、年が近かったこともあって意気投合し愚痴をこぼし合っている間に精神面は改善していった。
その精神不安の元が年下の中学生だったことを知った桃花は、興味本位で高波と話をしたいと申し出て、そのままその魅力に堕ちてしまう。この辺りからリリ子は高波を独占することは無理だと考えるようになり、高波が望んだ場合その女性の相手を許し、時には費用を負担した。
関係が始まって三年目に、大学入学のために地方から出てきたばかりの美咲が、アルバイトとしてリリ子の所属事務所へやって来た。雑用の事務員として働き始めた美咲はその頃から両性愛者であり、モデルであるリリ子を女性ファッション誌で見かけたことが切っ掛けでアルバイトへ応募したのだ。
そのリリ子が連れ歩いていた高波と出会い一目ぼれしたのだが、彼には愛や恋と言った感覚がわからないどころか、その概念すら知らないことを知った。リリ子からは愛とは肉体関係のことだと学んだようなものだったし、家族愛に触れたこともない。
美咲は何とか自分に振り向いて欲しいと願ったが、実は高波はリリ子の従妹ではなくペットのように囲っている家出中学生だと知る。体格が良く落ち着いていて大人びているし、学校に行っている様子も無かった高波を成人だと思っていた美咲は、この時本気で口説こうと張り切っていた。
美咲が本気になる前にやめさせようとリリ子は仕方なく秘密を明かし、結果として弱みを晒すことになってしまった。別に脅すとかそう言うつもりは無かった美咲だったが、リリ子に勧められるがままに高波に抱かれ、そして溺れた。そのまま流れでリリ子を含めてベッドを共にし、今ではリリ子ともしばしば愛し合う関係となっている。
美咲と同じ大学に通う笹原智代は同級生の中ではまあまあ仲が良い程度だったのだが、DV彼氏依存から抜けられず、美咲から桃花の勤めている病院を紹介された。そこでたまたま高波と出会ってしまい沼にはまってしまったのだ。今では高波を泊める役目を維持するためにキャバクラのバイトを頑張り過ぎて留年必至である。
鈴本爽と花園みくるは、リリ子の事務所に勤める男性スタッフが高波を合コンに連れて行ったときに出会った大学生だ。二人が通うのは、学力よりも嫁入り時のステータス目的で通わされる学生が多い女子大で、通っているのはそれなりに金持ちで有力者の娘ばかりらしい。
ちなみに鈴本爽はどこかの社長令嬢、花園みくるは地方議員の何番目かの娘で同じ高級マンションに住んでいる。高波曰く、バスルームだけで実家より広い。
一番最近ハーレム入りしたのは三木桜子と言う裏カジノで働くディーラーだ。ありがちな話ではあるが、彼女が働くハウスで素寒貧になったホストに逆恨みされ、早朝の閉店後にさらわれそうなところを高波が助けたのだった。
あまり感情豊かではない桜子は、とりあえず避難と言うことで美咲の家に数日匿われた。そこで例によって美咲の餌食となったのだが、それが初めての絶頂であり、目覚めの切っ掛けだった。
快楽を知った桜子は上手な男性も経験したくなり高波を襲いその肉体を貪り味わったのだが、その後はそれほど執着することはなく、彼を家に泊めている時だけは求めるが、それ以外は静かなものである。だがしばしば美咲の家には押しかけている。
この七人を中心に高波の宿泊先はローテーションされており、仕事で急に家を空けてしまうリリ子の穴埋めのために、もう五人の大学生がスタンばっている。今回の件で不満を感じているのはこの五名である。
「それじゃ料理も出てきたし、それぞれの意見を聞いていきましょうか。
間違えないでほしいのは、今日はあくまで話を聞くだけってこと。
最終的にはタカシが決めることだけど、きっとこの子を選ぶんでしょうね。
でも言いたいことを我慢していても仕方ないから言うだけ言っておきましょ?」
高波には見慣れた集まりだが、美知子にとってはあまりに不思議過ぎる光景だった。




