3.気持ちの変化
シビラと出会ってから数ヶ月。
第一印象はあまり良くなかったが思わぬ共通点があったことで、それから私たちが打ち解けていくのに時間はかからなかった。
最初はミスズが授業をサボる僅かな時間だったが、気づけば学校の終わりに会ったり、休日に会ったり、と二人で過ごす時間が増えていく。
シビラは気にしないと言っていたが、同級生に見られないように最大限の注意を払い、気を配り、常に気を張った。それでもシビラと会う時間を減らそうとは思わなかった。
何故ならシビラと話していると自分が普通の女の子になったように思えるから。
マフィアの一人娘で、同級生から疎まれて、大したことないことでも自己嫌悪に陥り、一歩屋敷から出れば孤立していた私が、本当にただの女の子のように……。
シビラと一緒にいることを望む一方で、まざまざと感じるのはシビラの謎。
話せば話すほど彼の本質が分からない。
最初に声をかけてきたときに感じた軽さは今では全く影を潜め、どちらかと言えば寡黙な印象が強くなった。でも、それが嫌というわけじゃない。むしろ穏やかな空気が一緒にいてとても心地良かった。
人のことをとやかく言えないが、自分のことを話そうとしないのも気になる。
私と同じように意図的に何かを隠しているように感じるのだ。あれ以来袖の長い服を着ているせいで手首の火傷の跡も確認できずにいた。
ただそれを追求すればこの時間が終わってしまうような気がして、いつも当たり障りのない会話で誤魔化すことしか出来ない。
そもそも自分からマフィアの娘と明かすことが酷く怖かった。
このままでいいなら、ずっとこうやって二人で穏やかな時間を過ごしていきたい。
それ以上は望まないから。
だからこのささやかな時間がどうか一日でも長く続きますように。
ミスズは今日も気を張りながら二人の時間を楽しんでいた。




