第7話 財布の捜索
ともかく、魔法が使えないなら体を動かすのみ! と意気込み、ルーシーは早速依頼者が財布を落としたと思しき場所までやって来た。
時刻は十九時を回っており、アルトはこれから用事があると言って既に帰宅していた。
ちなみに先ほどまで雨が降っていたのだが、幸い今は止んだようだった。
そこは事務所から徒歩二十分程の歩道橋が側にある国道だった。
車通りも多く、近くに商業施設もあるので人の往来も多かった。
「うーん、とは言うものの、お財布を落としたのは三日も前なんだよね。何か手がかりが残っていれば良いけど……」
ともかく周辺を細かく探索してみることにした。
ルーシーはついでにとゴミ袋と軍手を近くのコンビニで買ってきて、ゴミ拾いをしながら捜索を始める。
腰をかがめて、ともかく落ちているゴミを徹底的に拾ってみるが、肝心の黄色い財布は見当たりそうにない。
それから二時間ほど周辺を捜してみたが、ゴミ袋は二枚が容量いっぱいになったがそれらしいものは拾えなかった。
ともかくゴミ袋を一旦事務所に置きに行き、改めて戻ってきた。
「ここまで探して無いとなると、どう言った可能性が考えられるんだろう」
呟きともかく身支度を整えてから紅茶を淹れ、椅子に座ると考え始めた。同時にノートを取り出し書き込んでいく。
『一 誰かが拾った。
二 雨風に晒され、どこか別の場所に移動してしまった』
そこまで書いて何か違和感を覚えた。財布は善良な人しか拾わないのだろうか。
そう思うと、ふと気がついた。
「そう言えば、ゴミ箱は捜していなかった」
思えば自分はいつも路上ばかり探していて、ゴミ箱は捜したことは無かったと思った。
あまり考えたくはないが、人によっては財布を拾って中身だけ出してゴミ箱に捨てるということもするのでは。
この世界では魔法を使って物を探すことができると聞いて、正直焦っていた。
この事務所に今まで紛失物の捜索の依頼が何件もあったが、依頼者は自分が捜索系の魔法を使って捜索してくれるものと思っていたのだろうか。
期待に応えられないだけではなくガッカリさせてしまったかもしれない。そう思うとルーシーは右手をギュッと握り、真剣な顔でシャープペンを握った。
『三 誰かが拾った財布の中身を捨ててゴミ箱に捨てた』
「となると、三日も前のゴミ箱なんて、もう中身が入れ替わってるかもしれない」
そう思うと、すぐに思い立って事務所の倉庫からトングを取り出すと、先程の場所へ戻った。
既に十九時半を過ぎており、辺り真っ暗闇だが街灯に照らされているので、捜索は続けられそうだった。
「ゴミ箱は、近くにあるかな」
周囲を確認すると、ちょうど近くに小さな公園がありそちらに置いてあった。最近は回収に来ていないのか、ゴミ箱は満杯に近かった。
早速軍手を身につけ、ゴミ袋とトングを取り出すと、ゴミ袋に一つずつ確認しながら移していく。半分くらい出したところで、水色の長財布が見つかった。
「……見つけた!」
すぐさま財布をビニール袋に入れると、ゴミ袋の中身は流石に勝手にどうにかしてはいけないと思ったのでゴミ箱に戻して、他の後始末を終えると早々に事務所へ戻った。
事務所へ戻ると、念のため洗面台の上で財布を確認すると、案の定、紙幣や硬貨は抜き取られていたが他のカード類等は入っていたので安堵の息を吐いた。
そしてルーシーは、すぐに依頼者に電話をかけた。
「……はい、そうです。見つかったんですけど、お金は抜き取られていました」
「そう、残念だわ。でも、孫からもらったお守りさえ手元に戻れば良いの」
ルーシーの動きがピタリと止まった。
「お守り、ですか?」
「ええ。コインなんだけどね」
そんなもの入っていただろうかと思い、すぐに財布を確認したが、入っていなかった。
「……すみません、入っていません」
マーサは、途端に大きなため息をつく。
「……そう。何でもあのコインは、三年前の国際競技大会を記念して発売されて、孫がわざわざ並んでお守りとして買ってきてくれたんだけど、まあ、孫には事情を説明して納得してもらうわ」
「そんなに大切な物だったんですね……」
ルーシーは青ざめ声を震わすが、マーサは余計なこと言ってしまったかしらと思い、ともかく見つけてくれたことの礼を彼女に伝え、後日事務所へ足を運ぶ旨を伝えると電話を切った。
「……もう一度、ゴミ箱を確認してみよう!」
再び先程の場所へと向かい、ゴミ箱を同じ方法で今度は全ての中身を確認したが、コインは見つからなかった。
「……やっぱり、お金だと思って持ってっちゃたのかな……」
ルーシーは青ざめながら、ゴミ箱の中身を戻したのだった。
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