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終止符からのルーシー 〜なんでも屋で解決します〜  作者: 清川和泉


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第13話 依頼者の真意

ご覧いただき、ありがとうございます。

「それで、どんな依頼なの?」


 ソフィアは奥の給湯室で土産にと買ってきた包みを広げ、その中身のチョコレートケーキをナイフで切り分け、各自の皿の上に置いていった。


「えっとですね、『試験のヤマを張って欲しい』と言う依頼ですが、依頼主さんに関することは個人情報にあたるのでお話出来ないんです」

「試験の……ヤマを張る?」


 キョトンとし、思わずナイフの動きを止める。


「何でも屋って、そんなことも引き受けるの?」

「前にも、アルト君に同じようなことを言われました」


 苦笑いしながら、ティーカップに紅茶を注いでいると、ソフィアがうーんと唸り始めたのが気にかかって、ルーシーの手の動きも止まった。


「それって、言いにくいんだけど、やっても良いことなのかな……」


 背筋が凍りついた思いだった。


「……と言いますと……」

「あらかじめ試験で出題される問題を()()()当てるんでしょう? 普通に考えて学校側にそんなのバレたら、依頼者の子、停学とか最悪退学になっちゃうんじゃないのかしら」

「…………」


 正直なところ、ソフィアに指摘されるまで全くその考えに思い至らず、ルーシーはともかく固まってしまった。

 その様子を見て、なるほど、こう言う性格なのかとソフィア呟いたのだった。


「……確かに、そうですね……」

「アルトは? 彼は特に何か言っていなかったの?」


 うーんと唸ってから巡らせると、依頼を受けた際のアルトのため息を思い出した。


「特に試験の内容事態に問題があるとは言ってはいませんでしたが、……そう言えば引き受けた時に大きなため息をついていました」

「そうなんだ」


 てっきりもっと深刻な受け方をするかと思ったが、ソフィアは意外に思っているのか目を見開くのみだった。


「アルトが特に何も指摘しないのなら、大丈夫なのかな……?」


 年下のアルトに対するソフィアの信頼度の高さに対して不思議に思いつつ、ルーシーはともかく彼に訊いてみようと思い立つのだった。


 ◇◇


「ああ、まあ確かに」


 チョコレートケーキを頬張り、紅茶を一口飲むと、先程の疑問を打ち明けたルーシーに対してアルトは頷いた。


「やっぱり、まずいのかな……」

「そのことに関しては、僕も最初に疑問に思ってすぐに端末で調べたよ」

「ありがとう! ……それでどうだった?」

「うーん、まあ民間で運営している塾等では講師が試験のヤマを張ることもあるし、特に問題はなさそうかな」

「そっかー! よかったー!」


 ほっと胸を撫で下ろすルーシーを傍目に、ソフィアは二人のやり取りを興味深そうに眺めている。

 口元は緩んでいるが、その目はどこか初めて遭遇した生物を見るかのようだった。

 その視線に気が付いたのか、アルトは反応を示した。


「何?」

「ううん。……アルトがいつもと全然違うから少し驚いていただけ」


 思わず疑問に思い、ルーシーは気がついたら訊ねていた。


「そうなんですか? 普段のアルト君ってどんな感じなんですか?」


 途端に興味が出てきたのか、ルーシーの瞳は生き生きと輝いている。


「えっとね、まず姿が……」

「おい」


 咄嗟に口を挟み、その表情は無表情であり無機質に感じられた。


「……姿はスウェットとかジャージが多くて、まあもっと……そう、適当な感じよ」


 そうなんだなと、なんだか意外なような納得できるような感覚を抱きながら、ルーシーは微笑ましく思った。


「それに、アルトがこんなに会話してるの見たことないかも」

「ええ! アルト君って普段あまり喋らないんですか⁉︎」

「うん、全然。無口でね、本当に必要最低限のことしか」

「僕のことはいいから。……それよりもルーシー、今回の依頼はどうするか考えているの?」


 会話の腰を折られて思わずソフィアは眉をひそめるが、ルーシーは冷静になろうと努めて呼吸落ち着かせて頷いた。


「やり方はこれから模索するけど、……アルト君と話してたらボブさんがどうしてこの内容の依頼をして来たのかは分かった気がする」


 アルトとソフィアは顔を見合わせた。


「それってどう言うこと?」

「つまりね、ボブさんは私と一緒できっと勉強自体に苦手意識があるんだと思うんだ」

「苦手意識?」

「そう。落第寸前って言っていたのに塾とか学校の先生に対策を聞くわけでもなく、何でも屋にヤマを張ることを依頼するってことは、先生には自分自身の勉強スタイルを指摘されるのが嫌だからかなって」


 確かにと、アルトは呟き頷いた。


「私も落第寸前だったから分かるんだ。いつも勉強のやり方を見直せって言われたり、もっと勉強しろって言われ続けて、それだけで勉強自体にアレルギーを起こしてたから」

「毎回そんなことばかり言われてたら、きっと私も勉強嫌いになっちゃうな」

「だから、それは毎日地道に……」


 そうだね、と言って頷きルーシーはチョコレートケーキを食すために握っていたフォークを皿の上に置いた。


「それを含めて、きっとボブさんは勉強との向き合い方を誰かに教わりたいんだと思う。こんなことって今更人に聞けないことだと思うから」

「……じゃあ、最初からそう言えばいいのに」

「本人はきっと自分が何を欲しているのか分からないけど、焦りはあったんじゃないのかな。……だから今回の依頼はヤマを張るだけじゃ駄目なんだと思う」


 スッと立ち上がって事務机にいつものノートとシャーペンを取りに行くルーシーを眺めるアルトを目にし、改めてソフィアは興味深そうな視線でルーシーを見つめるのであった。

お読みいただき、ありがとうございました。

次回で今回の依頼は終了となります。次回もお読みいただけると嬉しいです。


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