第10話 打ち消し魔法の効果
そして後日、財布とその中身は無事にマーサに手渡され、依頼は本当の意味で完遂された。
「本当にありがとう。もう、二度と戻って来ないかもってどこかで思っていたから、本当に嬉しいわ」
マーサは思わず涙ぐむと、深々と頭を下げた。
ルーシーは慌てて頭を上げるように促すと、報酬は最初にもらった分だけで良いと理由も含めて伝える。
「そんな、ここまでしてもらって報酬を渡さないなんてこと、出来るわけないじゃないか」
「いえいえ、ともかく監査とか色々あるのもありますけど、マーサさんの元に無事お孫さんからの贈り物が戻ったことが一番ですから」
「そうは言っても……」
マーサはせめてこれだけでもと言って、あらかじめ渡そうと用意していた包装包みを彼女に手渡した。
促されて開けてみると、中身はネックレスだった。
「大したものじゃないんだけど、一応防御系の負荷魔法も付いているから、もらってくれないかい?」
そのネックレスの先端につけられた透き通った石が印象的で、一目で心奪われた。
「いえ、こんな素敵なものをいただくわけには。それにこれは報酬になるのでは……」
「もらっとけば?」
ドアベルを鳴らして、学生服を着たアルトが事務所に入ってくるなりそう言った。彼はこの状況を見て大体事情を察したのだ。
「これは、報酬というよりは個人的な贈り物だよ」
「そのお兄さんの言う通り。これは私からのほんのお礼。なんも気負うことないんだから」
「……そうですか?」
ネックレスを手に取ると、早速それを身につけてマーサに笑いかけた。瞬間、先端の飾りから小さな光が輝く。
「素敵な贈り物を、ありがとうございます!」
アルトは思わずその笑顔に見惚れたが、同時にそのネックレスを見につけたことによって彼女のカチューシャが妙な気配を帯び始めたのに気がつくと、思わず無言で静かに彼女のそれを手に取り、愕然とした。
「……なんで、今まで気が付かなかったんだ」
ルーシーが身につけたネックレスには打ち消し魔法がかけられており、それを身につけたことによりカチューシャにかけられていたある魔法の効果が消されたのだった。
ちなみに一般的にアクセサリーに付加されるおおかたの打ち消し魔法は呪い系の魔法や探査系の魔法等、かけられた者にとって不都合な魔法を打ち消すようになっており、防御魔法のようなプラスにはたらくものには作用しないようになっている。
ただ、マイナスの魔法でも打ち消されない例外もあるが。
「……とっくに奴らも、知っていると言うことか」
アルトは小さく呟くと、唖然としているルーシーの頭にカチューシャを再び身につけて、自分は奥の部屋へと小さく息を吐いてから入って行ったのだった。
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