犯人はお前だ!!
花子は深刻な顔で次郎を呼び出した。
やってきた次郎は、目の前の花子のその顔を見てなぜか冷や汗をかいている。花子は意を決して、口を開く。
「次郎君、私誰かに命狙われているみたい」
「命を?」
「階段から突き飛ばされたの」
「ふぅーん。そいつは大変だな」
まったく他人事の次郎の暢気な言葉に、花子は泣きそうになる。
「私、怖いの。一人で心細いし、それに犯人半殺しにしたいから、次郎君、私の周囲を見張っていてほしいの」
「え。めんどくせぇ」
「お願い、次郎君。私たち友達でしょう?」
「まぁな」
照れ臭そうにする次郎君。
「ありがとう、次郎君。次郎君が困った時には、私なんでもするから。めんどくさくないかぎりは」
「俺はいまもうめんどくせぇよ!」
そう怒る次郎の頭をなでた。はたかれた。
一人花子は放課後学校に残っていた。
なぜか?
花子は憂いに満ちた顔を、同じクラスのアイドル山笠薫の席の方を見る。
放課後だというのに薫の席の椅子の腰かけには、薫の脱ぎたての上着がかかっていた。
薫はどうやら上着を学校に忘れていってしまったのだ。
花子は周囲を見渡し、誰もいないことを確認すると、脱ぎかけの薫の上着を手に取り、顔をうずめ、そして匂いを嗅いでみた。
「なにしてるの!!」
女の悲鳴と声に、花子は慌てて上着を元に戻す。
そこには花子が一番今いけすかないと思っている女、桜が立っていた。桜は薫の近所の幼馴染で、いつも薫と一緒にいる女だ。きぃー!!
「まさか、薫の上着の匂いかいでたの?気持ち悪い」
「き、気持ち悪いって。私そんなに匂いなんて嗅いでいない。罪をかぶせるのはやめてよ!ひどい」
「いや、私みたもん。におい嗅いでいたわよね?」
桜の追跡の手はひるまない。
やばい。このままでは桜によって、今のこの状況を薫に言いつけられてしまうだろう。そこはなんとかしようと、こうなったらと咄嗟に花子は声を上げた。
「私のこと嫌いだからって変なこと言うのはやめて!!どうせ私のことを階段から突き飛ばしたのもあなたでしょ!あなただってひどいじゃない!!」
必殺罪かぶせ。
桜に罪をかぶせて、うやむやにして花子は今この状況を打破しようと考えた。
もちろん本気でいいふらさないし、少しこの時だけの話である。
「どうしてわかったの?」
「へ?」
桜は暗い目で花子を見て、呆気なく罪を認めたのだった。




