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第四話

ブックマークをしてくださってる方が増えている?!

ありがとうございますm(__)m!!!!


 「い、今なんと?」


 サミュエルは震えた声で再び王に聞き返した。

 王が宰相に頷いてみせると、宰相がもう一度分かりやすくサミュエルに告げた。



 『パレンツェン王国から第三王子ミハエルとユリア・ヒュースとの婚約の打診が来ている。

 なお、第三王子本人の強い意向である。』

 


 サミュエルは王からもたらされた突然の話に理解が及ばず、普段人には絶対見せないような表情で立ち尽くした。

 父親である王が続けて何かを言っているが全く頭の中に入ってこない。



 "ユリアとサミュエルの婚約を解消する"という話題になり、ようやく意識が戻ってきた。

 サミュエルは慌てて王に詰め寄る。


 「ちょ、ちょっとまってください父上!ユリアは私の婚約者です!」


 「今はまだ、な。なので、ユリアとおまえの婚約は白紙にしようと思う」


 「なぜです?!」

 

 サミュエルの言葉に、王が片眉をピクリと上げた。

 昔から表情を変えることなく何事もこなしていた王子がうろたえている様子に、内心首を傾げつつ理由を述べた。


 「少し落ち着け、普段のお前ならばすぐに気づいたはずだ。…ユリア嬢とミハエル王子の婚約は我が国としても有益な話だ。この国と隣国とは元より同盟国ではあるが、ユリアが王族と縁続きになればより強い結びつきとなるだろう」


王のもっともな言葉に、サミュエルは反論の言葉が思い浮かばず言葉に詰まる。

理解はしたが、サミュエルはそれでも納得できなかった。

王はサミュエルの様子を見てますます不思議に感じ、尋ねた。


「何をそんなにユリアにこだわる。お前はユリア嬢とは別に懇意にしていた女性がいただろう?確か辺境伯の娘と。身分的にはなくもない相手だ。王妃教育さえクリアできればその女性を婚約者にもできるのだぞ?」


王の言葉にサミュエルはそんなことはまるで考えてもみなかったといった風に唖然とした。

アイリーンが生涯の相手となる。まるで夢のようだ。とサミュエルには思えなかった。

喜ぶどころか顔を青ざめさせたサミュエルの様子に王はとうとう眉根を寄せた。


「おまえ、もしや…」


サミュエルは何かを呟こうとした王の言葉を遮り、自分勝手を承知で己の願望を告げた。

今まで一度たりともしたことがないサミュエルの"我儘"に王はため息を吐き、了承した。







ユリアは戸惑っていた。

留学してからまだ4カ月、帰国の期限には余裕があるにも関わらず、母国から正式に留学取りやめの通達がきたのだ。

逆らうこともできず、ユリアはパレンツェン国王家の皆、特にミハエルに惜しまれつつ、4か月ぶりの母国へと足を向けた。



何かがおかしいとユリアは気を張り警戒していた。

急な帰国命令に加え、何故か公爵家に戻ることは許されず、そのまま王城へと連れていかれたからだ。



(国で何かあったのかしら。それとも、公爵家?どちらにせよ、私に関わることのようだわ)



困惑し緊張したままのユリアは侍女に連れられ、慣れ親しんだ王太子妃の部屋へと通された。

侍女に紅茶を出され、とりあえず気持ちを落ち着かせる為、口にする。

覚えのある味に帰ってきたのだなと感慨深く思っていると、部屋のノック音が響いた。


返事をすると、扉が開き、サミュエル王子が入ってきた。

ユリアが予想していた人物とは違い、思わず目を瞬かせる。

侍女はサミュエルにも紅茶を出すと、静かに部屋から退出した。

ユリアは思わず呼び止めようとしたが、無情にも部屋の扉は閉められた。


今まで一度たりともサミュエルと2人きりになったことはなかった。

というよりも、未婚の男女が2人きりにならないようにするのは常識だ。いくら婚約者とはいえ、何か起こるかわからないのだから。

それがなぜかサミュエル王子が指示したわけでもないのに、侍女は部屋を去り丁寧に扉を閉めていった。

まるで、元よりそう指示されていたように。



(何か、2人で秘密裏に話さないといけないことがあるのかしら)



ユリアは何かあったに違いないと思い、姿勢を正しサミュエルに向き直った。

久方ぶりに会うが、思ったよりも自分の気持ちが凪いでいるのにホッとする。

サミュエルの様子を落ち着いた気持ちで観察すると、いつもと違った様子に気が付いた。



ユリアの記憶にあるサミュエルはいつも爽やかで隙のない青年である。

それがどうだ、今目の前にいるサミュエルからは何かにおびえたような気配が窺え、表情にも陰りが見える。

サミュエルは何かを口にしようとして開けたかと思えば閉じる、というのを繰り返していた。

ユリアはさりげなく自分から話題を振ることにした。



「殿下。お久しぶりです」


「あ、ああ。ユリアはその、元気そうだな」


「ええ。あちらではよくしてもらいましたから」


ユリアの言葉に、サミュエルがグッと苦虫を噛み潰したような表情をする。


「その…ユリアとミハエル王子の婚約の件を聞いたのだが」



サミュエルの話にユリアはようやく合点がいった。

ユリアはサミュエルを安心させるように頷き、微笑みかけた。



「安心してくださいな。本当のことですよ。今回の話は両王家も我が家も乗り気だと聞いています。早々にまとまると思います」



だから、私のことなど気にせず安心してアイリーンを次の婚約者としたらいいとユリアは言外に含めたつもりで言った。

ところが、ユリアの予想とは全く違う反応をサミュエルは見せた。




短めです。次話でおそらく完結します。

もう少々お付き合いくださいませ。

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