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第二話

ブ、ブックマークをしてくださっている方がいる?!

このような駄文を読んでいただき、

ブックマークまで…

ありがとうございますm(_ _)m!

 

 サミュエルは普段通り、王家主催のパーティーが開かれる数日前にユリアにドレスを贈り、迎えに行く時刻の先触れを出した。

 この時点では、特に異変に気が付くことはなかった。

 従者が何かを言いたげに見つめてきても特に何も思わなかった。

 


 王家主催のパーティ当日、サミュエルは婚約者であるユリアを迎えに公爵家を訪ねた。

 そこで、驚愕の事実が告げられた。ユリアはこの国にいないという事実を。

 

 サミュエルは数分立ち尽くした。

 

 自分にはユリアの留学は知らされていなかった。

 公爵家の様子からすでにサミュエルへの信用が落ちているのが窺えた。

 サミュエルは茫然とした。サミュエルなりにユリアを大切に思っていた。大切にしてきたつもりだった。

 

 けれど、サミュエルには他に心揺さぶる人、アイリーンが現れてしまった。真面目なサミュエルは嘘がつけなかった。アイリーンも同じ気持ちだと知ったなら尚更に。

 だからこそ、ユリアに願い出た。学園の間だけでよいからと期間を設けて。もちろん、アイリーンにも確認した上で。そして、ユリアの了承は得られた。

 

 サミュエルはできる限りの正しい選択をして仮初の時間を得たつもりだった。

 そう、つもりだった。でも、間違っていたのだとようやく気が付く。

 


 ユリアとの関係が変わったわけではない。未だサミュエルの婚約者はユリアだ。

 なのに、サミュエルは不安でたまらなくなった。

 決して犯してはいけない間違いを犯してしまったという焦りに襲われた。

 ユリアに会いたくてたまらないのに、ユリアはここにはいない。

 留学期間は半年だという。半年もの間ユリアに会えない。

 言い訳すらできない。いや、言い訳しようもない。

 サミュエルは嘘など1つもついていないのだから。

 サミュエルは公爵家から逃げるようにその場を去った。

 

 ユリアの家族たちはサミュエルの様子に、ほんの少しだけ溜飲を下げた。

 




 サミュエルは学園の一室で意中の相手、アイリーンと会っていた。

 頬を染めて1日のことを話す彼女に頷き返す。皆の前では隙を見せない才色兼備な彼女が、自分と2人だけの時には可愛らしい様子を見せる。サミュエルはそんな彼女が愛おしかった。

 普段ならば愛しい彼女の頭くらい撫でているところだ。

 

 だが、サミュエルにはそんな余裕もなかった。

 大切な彼女との時間。それなのに、彼女の言葉が1つも頭に入ってこない。

 彼女を可愛いと思える余裕もなかった。

 

 頭を占めるのはユリアとなんとか連絡を取る方法がないかということばかり。

 アイリーンは話し終えたところで、ようやくサミュエルの様子に気が付いた。

 どうかしたのかと尋ねたが、サミュエルは何でもないと首を振るばかり。

 まともに会話も成り立たず、結局、貴重な逢瀬のひと時はぎくしゃくしたもので終わった。



 アイリーンが部屋を立ち去って従者と2人きりになる。

 

 「せっかくのお時間よかったのですか?」

 

 「…後で、手紙でも出しておくよ」

 

 何か言いたげな従者にサミュエルがふと気が付く。

 そういえば、この従者は最近この表情をすることが多い。

 サミュエルは気になって問いかけたが、従者は首を振るばかり。

 

 「最近の自分がおかしいのはわかっている。何を言われても不敬罪などとは絶対に言わない。約束しよう。お願いだ言ってくれ」

 

 「…では、申し上げます。サミュエル様はいったい何がしたいのですか?」

 

 「何がとは?」

 

 「はっきりと申し上げまして、今更ユリア様を気にする意味がわかりません」


 「ユリアは私の婚約者だ。気にして当たり前だろう。第一、婚約者に何も告げずに留学するなど…」

 

 「ユリア様は公務でかの国に行かれました。サミュエル様が気にかけていればすぐに手に入る情報です。パーティーでの件についても、ユリア様からの手紙がない時点で気が付かれるべきでした。…公爵家としては、腹に据えかねる出来事だったと思いますよ。『なぜ、本人がいないのにドレスや手紙が届くのか。そんなにも娘に興味がないのか』と」


 従者のはっきりとした物言いと内容に普段は温厚なサミュエルも頭の中がカッと熱くなったのがわかる。

 同時に、自分の愚かな行いに青ざめる。確かに従者の言う通り、公爵家に喧嘩を売ったととられても仕方がないようなことをしていた。



 「…私はわざとそのようにされているのかと思っていました」


 「なぜ私がそんなことをしなければならない?!」


 「ユリア様との婚約破棄をお考えだったのでは?」


 「何を言う!私の婚約者はユリアだ!」



 とうとう我慢できなくなったサミュエルが従者に向かって吠える。けれど、従者は表情を変えずに不思議そうに問うた。



 「アイリーン様とは本当に学園の中だけのつもりなのですか?王太子妃に迎える気はないと?」


 「当たり前だ。そのようにアイリーンもユリアも認識している」


 「恐れながらサミュエル様。そのように考えているのはあなた様と、学園外の者達だけです。少なくともこの学園内では、将来の王太子妃はアイリーン様だと認識している者が過半数おります」


 「な、なぜだ?!」


 「なぜも何もあなた様が、そのようにふるまっていたからでしょう」



 確かにサミュエルは公務や学園外ではユリアを連れ立っていた。

 しかし、学園内ではそうではない。

 サミュエルとユリアが仲睦まじくしている様子を見たことのある生徒達は少ない。


 反対に、いくら隠していてもアイリーンとの仲を知るものは少なからずいた。

 学生たちの狭い世界では娯楽も少ない。興味をそそる話題はあっという間に広まるのも早い。

 政治関係を把握している生徒達以外は、サミュエルは将来ユリアとの婚約を破棄して、アイリーンと結ばれるつもりなのだろうと思っていた。


 知らぬは本人ばかり。サミュエルは己が気づきもしなかった公然の事実を初めて聞かされて唖然とした。

 震える手で顔を覆った。



 「私はそんなつもりではなかった…ユリアは、ユリアは私を見限るつもりだろうか」


 そんなことはないと言って欲しくてサミュエルは従者に問いかけた。

 従者は首を横に振った。


「いいえ、ユリア様とサミュエル様の婚約は政略的なものです。陛下の判断なくして破棄されるものではありません。ユリア様も、公爵家の方々もその点は重々承知しているはずです。…ですが、ユリア様のお気持ちはご本人にしかわかりません」


 「ユリアの気持ち…」



 そういえば、最近ユリアとまともに話したことはあっただろうか。

 幼馴染ということもあり、ユリアとは口にせずとも互いにわかることが多くあった。

 政略結婚とはいえ、気を張らずにいられるユリアとならば間違いない未来が築けると確信していた。


 けれど、今はどうだろう。


 ユリアの考える事が一つもわからない。近くにあったはずのものがひどく遠くにいってしまった気がする。否、気がするのではなく、現実的にそうなっている。

 今まで当たり前に隣にいたユリアがいないことがサミュエルの不安を煽った。

 従者は、青ざめ身体を震えさせるサミュエルを冷めた目で見つめ、この国の将来を憂いた。



 

バタバタと投稿しましたので、後日予告無しで訂正を加える可能性があります。ご了承ください。

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