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たった一人の《大罪人》〜唯一無二の天職で世界最強に〜  作者: 白崎 仁
第二章 解呪の宝石
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刹那



「ふーーっ...」


 私は毎朝家に届く新聞を片手に、目覚めの紅茶を飲んでいた。


(最近は物騒な事件が多いなぁ・・・)


 宝石店の強盗事件や古龍の目撃情報、子爵家の長男の殺害事件など、新聞にはそんな記事しか載っていない。


 私ーーローザ=バンガルはバンガル伯爵家の三女だ。私の家は王都ディールフィアより南の地区の領主を任されている。


 上には二人の姉と一人の兄がいる。下はいない。末っ子ということもあって比較的自由に過ごさせてもらっている。


 今は冒険者をやって、自分の実力を確かめている。冒険者ランクは上から二番目のAだ。Sランクへの昇格試験には何度か挑んでいるのだが、なかなかうまくいかない。今日また試験あるので今度こそは昇格をしたい。



(そういえばこの子爵家ってラスランド家なのね・・・)


 ラスランド家はパーティーの席で何度か見かけたことがある。その時は特に気に留めてなかったが、まさかこんなことが起こるなんて・・・。


(この事件が起きたのは一ヶ月前。そういえば()()()が現れるようになったのもちょうど一ヶ月前からか)


 私が住んでいる要塞都市エルゲルの冒険者ギルドに一ヶ月前から妙な冒険者が来ている。そいつは大量の依頼を一気に受けたと思ったら、それをたった一日で終わらせてしまうのだ。そして異例の速さでランクを上げて、今は私と同じAランクだ。


 そうやって一瞬で何事も終わらせてしまうことから、そいつには刹那というあだ名がついた。まあ、本名が分かる人がいないから、分かりやすくするために付けただけらしいけど。


(あいつも今日の昇格試験を受けるのかしら・・・。いや、さすがに早すぎるわね)


 そんなことを考えていたら昇格試験の一時間前になったので、私は支度をして冒険者ギルドへと向かった。・・・悪い予感が当たるとも知らずに。



 少々支度に手間がかかってしまい、ギルドに着いたのは試験開始の10分前になってしまった。

 だけど試験開始までならいつでも受付は出来るので、慌てることなく無事受付を済ませた。


 そこには既に何人か冒険者がいた。おそらく試験を受ける人だろう。大柄で筋骨隆々な人や騎士のような鎧を身につけた人など様々な人が試験開始を待っているようだった。


 するとそこにギルド職員と思しき男性がやってきた。


「おーし、これで全員だな。今日の試験の担当をするヴァイザスだ。よろしく頼む」


 ヴァイザスと名乗ったその男性はこの場にいる誰よりも大きくて強そうだった。もしかしたら彼もSランク相当の実力があるのかもしれない。


「今回は試験を受ける者が12人と少しばかり多いんだ。ということで今回は特別方式として二人一組になってもらい、試験を受けてもらう。早速ペアを作ってくれ」


 今回は人数の関係でいつもと違う方式になった。たしかに普段と比べると、人が多い気がする。

 

(よし、私もペアを見つけないと・・・)


 近くにいた男の人に声をかけることにした。


「あのー、すいま」


「おう、組もうぜ兄弟!」


「ああ、いいぜ!」


(私の方が先に声かけたんだけどな・・・)


 完全にシカトされた私はそれでもめげずに他の人に声をかけようとする。


「すいません、ペアに」


「私と組まない?」


「ええ、いいですよ」


(う、またか・・・)


 私って弱そうに見えるのだろうか。誰も私と組んでくれないみたいだ。

 最終的に残ったのは私ともう一人ーー外套のフードを目深に被った人だけだった。服装や体格から、おそらく男性と思われる。


 私は彼に話しかけにいった。


「あのー、残っちゃいましたね。良ければ一緒に組んでくれませんか?」


 私はとても下手に出て、話しかけた。すると彼は目深に被ったフードを取り、顔を出して私の言葉に答えた。


「そうですね。ぜひよろしくお願いします」


 私はその顔を見て、とても驚いた。なぜなら彼は今話題の刹那だったからだ。


「お、おい、あれってまさか・・・!!」


「刹那じゃねえか!!」


「うそ・・・。もうSランクの試験を受けるの・・・!?」


 たしかにSランクの試験を受けるには時期尚早な気がする。とはいえ、私は彼の実力を知らない。もしかしたらとんでもなく強いのかもしれない。


「えと、よろしくお願いしま」


「おい!刹那!俺と組んでくれよ!」


「な、抜け駆けはずるいぞ!俺と組んでくれ!」


(こ、こいつらまじか・・・)


 彼が今話題の刹那と分かった瞬間、態度を変えて自分と組めだなんて。身勝手にも程があるでしょ。

 でも、この人たちは全員私より強そうだ。もしかしたら彼も別の人と組むかもしれない。


 そんな一抹の不安を抱いていると、


「お気持ちは嬉しいのですが、すみません。僕はもうこの人と組むって決めたので」


 そう言って、彼は私の肩にポンと手を置いた。どうやら彼は見た目で決めたりしないらしい。

 私は少しホッとした。


「改めてよろしくお願いします。・・・えーと、お名前は?」


「ローザ=バンガルって言います。ローザでいいですよ」


「僕はハイド=デッドリーです。ハイドって呼んでください、ローザ」


「分かったわ、ハイド」


こうして私は刹那ことハイドと試験のペアを組むことになった。



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