間違った選択
俺は静かに待った。だが、一向にベガーは来ない。もしかしたらベガーはディアナを連れて逃げたのかもしれない。まあ、想定の範囲内だがな。
「準備はできてますか、レヴィアタンさん」
『ああ、いつでも大丈夫だぞ』
俺はこの時のために準備をしておいた。あいつの魂胆なんか手に取るように分かる。
「嫉妬」
レヴィアタンさんの能力、嫉妬。
俺が今発動したのは対象の追尾だ。俺が仕込みをした相手の居場所を知りたい時に知ることが出来る。
この能力は対象の周りの様子も少し分かるので、今のベガーの周りの状況を確かめる。
どうやらベガーの周りには5人の人間がいるようだ。その一人はディアナとみて、間違いないだろう。その他は護衛だと思われる。
俺はボロボロの鉄剣を携えて、ベガーの元へと走った。
◇
「早く出せぇ!!」
急にベガーが来たと思ったら、私を無理やり馬車に乗せてどこかへ行こうとしている。
「一体何をしようとしてるの?」
「うるさい!お前は黙って僕に従えばいいんだ!」
はー、ほんと自分勝手な人。・・・私の選択は間違ってたのかな。いや、自分の選択だもん。自分が信じなくてどうするのって話だよね。
ハイド君はどうしてるだろう。私のせいで牢屋に閉じ込められて、辛い思いをさせてしまった。彼には合わせる顔がない。そう思っていたのに・・・。
「早く!急げ!」
「し、しかしこれ以上は」
「いいから早く!あいつが来る前に!」
「なー、あいつって誰のことだ?」
「「「!?」」」
そこに現れたのは汚れた服にボロボロの鉄剣を握った少年だった。私はその少年を見て、思わず涙を流してしまった。後悔や自責の念に駆られたこともあるが、何より生きてくれていたことが嬉しかった。
「ハイド君・・・」
「迎えに来たよ、ディアナ。だから、泣かないで」
「うん!」
私は精一杯笑った。君をもう悲しませないために。
◇
「な、なぜここが!?」
「さー、なんでだろうな」
「ぐっ、やれ!お前たち!!」
ベガーは護衛に命令をする。護衛はそれぞれ剣を構えるが、俺の敵ではないだろう。
「くらえぇぇぇ!!!」
「死ねぇぇぇ!!」
「ラスランド家のために!!」
「悪く思うな!」
全員一斉に飛びかかってきた。俺はある能力を使って迎撃する。
「・・・邪魔だ」
俺は全ての剣をいなしつつ、護衛全員を斬った。致命傷にはしてないので、適切な治療を受ければ、よくなるはずだ。
「さて、ベガーよ。お前はどう責任を取るつもりだ?」
「ふざけるな、ふざけるなよ!!もういい。こうなったらディアナは道連れだ」
そう言って、ベガーは何かを唱え始めた。何かを悟った俺はそれをやめさせようとしたが、もう遅かった。
「え?」
「な、ディアナ・・・?」
ディアナの胸にいつの間にか大剣が突き刺さっていた。ベガーの言っていた道連れとは、このことだったのか。
「おい!ディアナ!聞こえるか?返事をしろ!!」
俺は呼びかけるが、返事は聞こえない。まさか本当に・・・?
俺は万が一を考えて、ルシファーの能力をディアナに使った。これで何があっても、ひとまずは大丈夫だ。
「あはははは!!!こりゃ傑作だよ!どう?今どんな気持ち?」
こいつだけは。
「おいおい、何か答えろよー。つまんないだろ?」
こいつだけは絶対に許さない。・・・殺す。
俺はベガーを一思いに斬り裂いた。