七人の悪魔
「誰だ!!」
声の主を探すが、どこにも見当たらない。
『僕たちはそこにはいないよ。僕は今、君の心の中から話しかけてるからね』
(心の中からだと?そんなことがあってたまるか!)
俺がそう思うと、
『でも、それが本当なんだよねー。なんなら確認してみる?』
声の主は俺が思ったことに対して返事をした。ということは、もしかしてこいつが言っていることは本当なのか?
「どうやって確認するんだ?」
『それはね、こうするんだよ』
その瞬間、俺の意識はなくなった。
◇
目覚めると、そこは自分の家の庭だった。いつも俺が農作業を手伝っている場所。隣には家も建っている。
だが、一つだけ違うのは誰もいないことだ。いつもならいるはずの母さんや父さん、それにディアナも…。
そのことが、この世界は俺の心の中だとしっかり認識させているみたいだった。
「やぁやぁやぁ。初めましてだね、ハイドくん。僕の名前はルシファー。君たちが言うところの悪魔だよ」
ルシファーと名乗ったそいつは、見た目は少年のようだ。身なりも整っている。特徴的なのは、幼い見た目に似合わない白髪だ。
「あんたが声の主か。ここは俺の心の中ってことでいいんだな?」
「へー、悪魔ってところにはまったく触れないんだね。まあ、いいや。君が言った通り、ここは君の心の中さ」
「心の中ってのは、人によって変わるのか」
「そうだよ。心の中っていうのはその人の心に影響を与えた場所やもの、人などが出やすいから。君の場合はこの場所が心に深く刻まれているみたいだね」
ルシファーの言っていることは当たっている。俺は家がとても好きだった。大好きな父さん、母さんの手伝いをしたり、ディアナが来た時は一緒に遊んだり、作業を手伝ってもらったりした、一番居心地のいい場所だ。
父さんと母さんは今頃何しているだろうか。そして、ディアナは・・・。
「それで本題に入るが、俺が力を持っているってどういうことだ?」
「・・・君の天職の《大罪人》はね、この世界で君しか持たない、とっっってもレアな天職なんだ。そして、《大罪人》は僕たち七人の悪魔の能力が使えるんだ」
「七人?」
「そう、みんな出てきて」
すると、それぞれの場所から六人が出てきた。
「僕たち七人の悪魔は『七つの大罪』と呼ばれているんだ。さあ、みんなハイドくんに挨拶して」
六人の悪魔たちが順々に自己紹介をしていった。
「俺はベルゼブブ。『暴食』を司っている。よろしく頼むぜ、ハイド!」
ベルゼブブさんは緑色の短髪に大きめのつり目から強気でワイルドな印象がする。さらにサングラスをかけているため、強面な感じもする。
「僕はマモンです。『強欲』って言われています。よろしくです、ハイドさん」
マモン君は紫色の髪で丸い目をしている。人当たりの良い好青年のようだ。『強欲』って言う感じには見えない。
「私はアスモデウスよ。『色欲』を司っているわ。よろしくね、ハイドくん」
アスモデウスさんはピンク色の髪で綺麗な顔立ちをしている。大人の女性という感じだ。
「・・・」
「えーと、名前を教えてほしいんですけど」
「あー、ごめんね。彼、サタンって言うんだけど、超絶無口でほぼ喋らないから。これが普通なんだ。許してあげて。ちなみに『憤怒』を司っているよ」
ルシファーから説明が入る。サタンさんはグレーの髪色に所々黒髪が混じっている。目は常に閉じているみたいだ。
この人も『憤怒』の理由が分からない。
「ベルフェゴール。『怠惰』。よろしく」
ベルフェゴールさんは紺色の髪に半分閉じかかっている目、猫背から『怠惰』の理由がすごく分かる。ちなみに背は小さく、声はとても可愛らしい声をしている。
「私はレヴィアタンだ。『嫉妬』と言われている。よろしく頼むぞ、ハイド」
レヴィアタンさんは黒色の髪を後ろで結んでいる。口調は男っぽいのだが、とても綺麗な女性だ。スタイルもとても良い。
「そして僕が『傲慢』のルシファー。ハイドくん、僕たちが君に戦う力を授けてあげるよ」
これが俺と七人の悪魔の最初の出会いだった。