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たった一人の《大罪人》〜唯一無二の天職で世界最強に〜  作者: 白崎 仁
第一章 自分だけの力
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幼馴染

ーー遡ること三年前


俺、ハイド=デッドリーは農業を営む両親の手伝いをしていた。


「母さん、この人参はどこに置いとけばいい?」


「それは向こうの箱に入れといて」


「分かった!」


父さんは貴族の次男だったが、親とうまくいかず家を飛び出してきたらしい。その後、今住んでる町の町長の娘だった母さんと結婚し、それ以来ずっとここに住んでいる。


「今日も朝から頑張ってるね、ハイドくん」


「あら、ディアナちゃん!」


「おはようございます、おばさま」


彼女はディアナ=エルドリア。エルドリア男爵家の長女で、この近くに住んでいる。昔から知り合いで、小さい頃はよく遊んでいた。


「どうした?何かあったか?」


「別になにもないよ?」


「じゃあなんで来たんだよ」


「べ、別にいいじゃない、理由がなくたって」


そういうものなのかな?ディアナは顔が赤くなってるし。なぜか母さんに至ってはずっとニコニコしてるし。


「あ、おばさま、私も手伝います!」


「あらー、いつもありがとね。それじゃあ、これを向こうに運んでくれるかしら」


「はい、分かりました!」


理由はないと言いつつも、来たら仕事を手伝ってくれる。自分の家のことは大丈夫なのか聞いたことがあるが、いつも大丈夫だよ!としか言わない。


貴族の娘なら何かと忙しいはずなのに、ディアナは何も話さない。信用されてないのかな、俺。




その後、作業を続けていると


「こんなところにいたのか!ディアナ!!」


そう言いながらディアナの方にずかずかと歩いていくこいつは、ベガー=ラスランド。ラスランド子爵家の長男で、昔からディアナにちょっかいをかけていた。今回もその類だろう。


「なんですか。私がどこにいようと私の勝手でしょ?」


「未来の妻のことを案じて何が悪いのだ?」


「なっ!?」


「ちょっと!やめてよ!」


「なぜだ?本当のことではないか」


「ディアナ、どういうことだ?」


「おや、まだハイドには言ってなかったのか?しょうがない、僕が直々に教えてやろう。ディアナは僕の婚約者(フィアンセ)になったのだ!」


...まじかよ。だけど、ディアナの顔は嬉しそうじゃない。むしろ嫌がっているように見える。


「私はあなたとは...」


「そんなこと言っていいのか?ご家族はさぞ悲しむだろうな〜〜。嫌だろ?そんなの。なら、黙って僕に従え」


ディアナは黙って下を向いた。状況を察するにディアナの家で何かあったんだろう。それを助けてもらうために、上の位である子爵家のベガーの家にディアナが嫁ぐって感じか。

あくまで予想だが、大体合ってると思う。そうでもない限りディアナが、嫌いなベガーと婚約する訳がない。


そうか。ディアナはこのことで悩んでたのか。言ってくれたら、俺も何か出来たかもしれないのに。


「そういう訳だから帰るぞ、ディアナ」


「...はい」


「ディアナ!」


俺はディアナを呼び止める。彼女は一瞬だけ振り返るが、すぐに歩いていった。



ディアナに対して横柄な態度をとるベガーにも腹が立ったが、一番腹が立ったのはディアナを引き止められなかった自分にだ。


少しだが、貴族に逆らうということについて考えてしまった。貴族、それも子爵家に逆らうとなると、俺たち家族はもうここには住めないだろう。そうなると両親に迷惑がかかってしまう。


俺は両親を理由に動かなかった。こんなにも自分が嫌になるのはこれで二度目か。


今すぐにでも行きたいが、おそらくディアナたちは馬車に乗っているだろう。子爵家だけあって、警備は厳しい。今行ったところで追い返されるだけだ。


なら、チャンスは一つ。明日の天職鑑定の時だ。

その時にもう一度ディアナを呼び止めて、今度は絶対に引き止めよう。手を取って逃げよう。


俺はそう固く決心するのだった。



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