天翔乱舞
「僕たちが教えれるのはここまで。この力をどう使って、どう発展させるかは君次第。そこのところをしっかり肝に銘じておいてね」
「ああ、分かったよ」
「それじゃあ頑張ってねーー」
俺は現世へと戻った。
「ふふふ、頑張ってね、ハイドくん」
◇
目を開けると、奴がすぐそばまで近づいていた。俺はルシファーの能力で全身の傷を回復させる。
ルシファーの能力『傲慢』は時間を止める能力ではなく、時間を操る能力だった。そのため俺は自分の体の傷の時間を巻き戻して全回復させた。
「さあ、いくか」
俺は剣を握りしめ、奴の前に立つ。そして『強欲を発動。すると、俺が握りしめた剣が目の前に大量に現れる。
『強欲』の能力は三つある。一つは相手のものを強制的に奪う強奪、二つ目はものを自分の手元に移動させる取り寄せ、三つ目は俺が知っているものを作り出す複製だ。俺が今使ったのは複製だ。
「キュルルルルル……」
奴はじっとこっちを見据えたまま動かない。警戒しているのか、なんなのか。考えは読めない。
俺はその間に『憤怒』の能力で出現させた大量の剣を操作する。『憤怒』は道具の力を最大限に引き出す能力だ。その力で武器の操作もできる。
俺は数百にも及ぶ剣を宙に浮かせる。これで準備は整った。
「ギャァァァァァァァァァ!!!!!!!」
奴がこれまでで一番大きな叫びを上げる。これが最終決戦だと気づいているのかもしれない。
「斬り裂き百閃・天翔乱舞」
宙を舞う剣が奴を何度も斬り裂いていく。全ての剣に強化を施しているのでダメージはしっかり入る。
「ギャォォォォォォォ!!!!」
奴も負けじと攻撃を放ってくる。だが、俺には効かない。『暴食』の能力で全ての攻撃を消し去る。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「ギャァァァァァァァァァァ!!!!!」
正真正銘の最後の一撃が奴を貫き、今度こそ本当の終わりを迎えた。これでようやく解呪の宝石にありつける。
「はぁ、はぁ、はぁ」
能力の使いすぎで体力をだいぶ持ってかれた。《大罪人》はその能力を使う代償として体力を消費したり、強烈な頭痛に襲われたりする。こればかりは『傲慢』でも治せない。
俺は力を振り絞って奥の部屋へと向かった。