古龍グリセリオン
俺とローザは古龍というヤバそうな奴に遭遇してしまった。
「どうする?逃げるか?」
「そりゃ逃げないとーー」
その時、古龍の凄まじい咆哮が響いた。どうやら気づかれてしまったらしい。
「これはまずいよな?」
「え、ええ、とっても…」
「逃げ切れると思うか?」
「99パーセント無理ね」
「なら残りの1パーセントに賭けるしかないよな」
俺はグッと手を握り、ローザにそう言う。
「はぁー、もうどうにでもなれだわ」
そうして俺たちが決心を固めていると意外なことが起きた。
「待て、人の子よ。少し話をしようではないか」
なんと古龍はが話しかけてきたのだ。なんというか思っていたより友好的な気がする。
「どうする?」
「分からない。だけど、こんなのは滅多にあることじゃないことは分かるわ。ここまで来たら乗ってみるのもアリね」
「よし、じゃあいくか!」
俺たちは古龍の誘いに乗ることにした。これが吉と出るか、凶と出るか楽しみだ。
「おい、俺たちに何か用か?」
下手に出るのは悪手だと思い、俺は少し高圧的な態度で話す。
「急に悪いな、人の子よ。私はグリセリオン。古龍と呼ばれておる。人を見るのは久しぶりなので少し話してみたくてな」
「そうか。俺の名はハイド。んで、こいつがローザ。グリセリオン、要件を言え。ただ話したいってのは嘘だろ?」
もちろんそんなこと分かっていない。だが、なんとなく変な感じがしたので俺はカマをかけたのだ。
「ちょっ、ハイドッッ!?何言ってるの!?」
「大丈夫だ。これでいい」
俺が嘘という言葉を口にした瞬間、空気が変わった。古竜と言えど、さすがに反応してしまうらしいな。
「はっはっはっはっ!!面白い、面白いぞ、ハイドよ!よもや見抜かれるとは思わんだわ。ああ、たしかに我はただ話をするために話しかけた訳じゃない」
やっぱりな。俺の予想通りだ。…30パーセントくらい。
「汝らに頼みがあるのだ。どうか聞いてくれんか?」
…それはちょっと…予想外かな?
「聡明なハイドにはもう分かっとるかもしれんがな、儂はもう長くないのだ」
すみません、全然分かりません。というかカマをかけただけなんですけどね。
「誰にでも寿命はある。生きているものはいつか必ず死ぬのだ。それは儂も同じ。だが儂にはやらなければいけないことがある。儂は絶対に奴を……」
どうやらこいつにも色々あるみたいだ。それは俺も同じこと。どうにも親近感が湧いてしまう。助けたくなってしまう。そんな時間は俺にはないのに。
ふとローザの顔を見る。彼女も俺の顔を見ている。どうやら彼女はもう意思を固めているらしい。その姿がどことなくディアナに見えた。
「いいぜ、グリセリオン。その依頼、請け負ってやるよ」
「ほ、本当か…!?すまない、恩に着る…っっ!!」
グリセリオンは心から感謝しているようだった。俺は咳払いをして、本題に話を戻す。
「それでその依頼の具体的な内容は?」
「それはだな――」
グリセリオンの依頼の内容を聞いて、それがとても難しいものだということを俺たちは理解することとなる。