表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これはゲームの能力でして  作者: 夢想童子
5/11

第5話『繋がる暴れる』

一つ、この世界の神話を思い出した。


人が魔法が使えるようになった始まりは神々が争って降った血の雨を飲んだ事で人は魔法が使えるようになった、というものだ。


その話で引き裂かれた神と呼ばれる、バラバラにされて血の雨の元になった神の紋章がこの覆面の輩の更衣室に飾られたタペストリーに酷似していた。


さらに、その引き裂かれた神は元々はあらゆる存在を産んだ女神とされ、地上の生き物の他に万の怪物を産み出したとされ、引き裂かれると同時に怪物はこの世界から消えたとされている。


また、その女神が引き裂かれた事を皮切りにこの世界には死という概念が生まれたと言われていて、それ以前は死は存在せず、生命を産むのはこの女神の特権だったともされている。


さて、その女神の特徴が顔が無い、つまり無貌の女神だとされ、顔以外はどんな姿にでも変えられる。


この世界では怪物なんてモノは空想の産物でしかないと思われているが、俺にとっては存在してもおかしくないと思ってしまう。

だって魔法があるし。


何故、こんな話を思い出したかと言うと死がきっかけでとしか言いようがない。


簡潔に言おう。

俺は彼女に首を折られて殺された。


流石、獣人。

彼女との距離は少なくとも10メートル以上はあったのに瞬きする間に目の前まで迫って首に一撃を受けた。

倒れる前には電源でも切られたかのように意識を失ったさ。


ちなみに、俺はあの世で彼女の身体能力を賞賛している訳じゃない。


他にもゲームの能力、というか設定を受け継いでいた。

『魔王の契約』の主人公は基本、戦闘には出ない。

戦闘に移ると主人公はどこかに逃げたのか画面に映らなくなるのだ。

例え、それが物陰の無い荒野だろうと逃げ場の無い個室だろうと画面からは映らなくなる。

そして部下となった魔物や怪物が暴れ始めるのだ。

ゲーム内の設定ではそうだった。


しかし、例外はある。

それは部下が全員倒されるか、戦闘ができない状態になると主人公が画面に映るのだ。


そして、逃げる。

ひたすら逃げる。

逃走が成功すればペナルティなしで戦闘から逃れる事ができるが…大抵は敵に倒される。


だってスライムより弱いから一撃でも喰らえば終わりだし、大抵の敵は主人公よりも早く動けるからな。


主人公が倒されると画面が暗くなりデスペナルティを受けるがその場から再開するか、セーブ…データを記録した所に戻るか選択肢が出る。


もう分かっただろうか。

この現実世界にはセーブする、なんて機能は無い。

つまり、デスペナルティを受けてその場に復活するという状況が今だ。

いやー、死因の痛みさえキレイになくなるのはありがたい。

首の骨折ってとても痛そうだし。

この様子じゃ他にもゲームの設定や能力があるんじゃないかと思うが、自覚できたのがついこの頃だからな。

見落としがあるのは当然だ。


デスペナルティと言っても部下のレベルが半分になる事とその戦闘で使っていた【支援】が一定時間使用ができないというものだ。


彼女のレベルは1だから下がりようがないし、使った【支援】も【反転】と【魔力吸収】で致命的なものではない。


【反転】は《呪い》のデバフ効果をバフ効果に変える【支援】だ。

例えば攻撃力をダウンさせる《呪い》ならば攻撃力をアップさせる効果。

時間経過でダメージを受ける《呪い》ならば時間経過で体力が回復する効果など。

その上、精神状態異常の耐性が付くおまけつき。

敵が呪ってくるならば強い味方になる【支援】だ。


【魔力吸収】は特殊能力による干渉を受けた場合、それを無効化して魔力の回復、もしくは能力値・魔の数値を上げる【支援】だ。

だからこそ、魔法であるはずの牢屋の見えない壁を壊せたのだし、覆面の輩に魔法で攻撃されただろうが彼女が無傷なのはその為である。

ま、物理干渉は防げない事には注意が必要だけどね。


つまり、現時点ではデスペナルティはそんなに重くないものだ。

《呪い》の対象も一つだけではないしな。

レベル1にしては高コストの【支援】の方が効果が高いから採用、という理由で【反転】と【魔力吸収】の二つは決めただけだしね。


【支援】を使うには魔力を使わないといけないのだが、それとは別にコストというモノが存在して部下に対してどれだけの【支援】が使えるか指標になるものだ。

コストを超える【支援】は残念ながら使えないからゲームを始めた時はよくコストオーバーして使いたい【支援】が使えずに悩んだものだ。


コストはレベルによって決まっていてレベル1ならば100、それからレベルが一つ上がるにつれてコストは10づつ増えるシステムだ。

最大レベルは100であり、最大コストは1万だ。

しかし、主人公の魔力を上げるには必要な材料を集めて魔力が増えるアイテムを作らないといけないのは大変だったな。

魔力がカンストしても調子に乗って【支援】を大量に使えばすぐにコストオーバーするんだけどね。


ゲームの魔力とこの世界の魔力が一緒か分からないけど、多ければ多いほど良いのは間違いない。

それに俺の適正属性の多さは多種多様な【支援】が使える影響なのかもしれない。


さて、狂戦士と化していた彼女については心配ない。

今は彼女は《呪い》の影響で近くの壁でブルブルと震えてるよ。

どうやら俺が死んだら【支援】の効果が強制的に解除されたようだ。


ゲームでは部下が戦闘可能な状態の場合は戦闘に参加しないから無かったけど、確かに主人公も倒されてその場に復活した時は【支援】も仕様上の理由で全部解除されるしな。


それ以外だと大抵は任意で解除てきたけど、一部は時間経過で解除されるモノもあるし、一部の敵は【支援】を解除してくるタイプも少数のボスクラスに居た。


この世界でバフ効果を打ち消す、なんて魔法は聞いた事はないが、魔法を使われる時に妨害して失敗させる、なんてやり方はありそうだ。


しかし、驚いたな。

まさか復活機能まで俺にあったとは。

思えば最低でも3回は発動しているのだが。


1回目は移動ゴーレムに水も食料もなしで何日乗っていたと思うんだ。

人は3日も水を飲まなきゃ終わりだからね。


2回目は彼女に【契約】を使った時。

死んで思い出したけど、彼女、【契約】を使った時にびっくりしたのか俺を突き飛ばしたのさ。

子供とは言え獣人。

思いっきり押された俺は頭を強く打って死亡、そんなとこだろ。


3回目は暴走状態の彼女に首を折られた。

幸いにも2回目で色々と出したお陰か今回は流血も粗相もなしです、ラッキー。


うん、復活の機能があって本当に良かった。

無かったら死んでたぞ。

というか、ここの奴らは俺に死んで欲しかったのか?

俺の死体、体でも手に入れたかったのかね?


ここに居ては、いつ、彼女が倒した覆面の輩が目を覚まして俺達を捕まえに来るか分からないから逃げるとするか。


まずは彼女の呪いに対してだな。

意思疎通ができなきゃ面倒事が増えそうだしな。


「汝に光の祝福あれ、【聖光】」


【聖光】、《呪い》の効果を無効化し、大抵の状態異常に耐性がつき、状態異常が回復しやすくなる効果がある。


これで彼女は耳が聞こえるはず。

壁の側でまた大きく跳ねた彼女の様子を見るが暴れるような事はなかった。

それでは会話を試みよう。


「改めて、自己紹介からだ。

俺は鬼灯(ほおずき)

お前の呪いを解決したが…なんだ?」


話を聞くにはまだ早い状態だったらしい。

彼女が泣き出してしまったのだ。

大粒の涙が次から次へと流れ出る。

泣きながら何かを話しているが人と獣の鳴き声を混ぜたような意味が理解できる言葉にはなっていない。


それはダムが決壊したような様子だった。

まるで今まで言えなかった言葉や思いが一気に溢れてしまったかのようだ。


流石に敵のアジトで号泣が止むのを待つ訳にもいかず首が折れた時に落としてしまった覆面の輩の服を拾って、ここから彼女を連れて逃げる為にそっと彼女の手を握った。


その時、彼女は力強く俺の手を握り返した。

なるほど、少なくとも彼女は俺を拒絶していないようだ。


俺は泣き叫ぶ彼女の手を引いて陽の光が見える外に歩き出した。

次回、『狂信者の追跡』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ