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これはゲームの能力でして  作者: 夢想童子
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第十一話『遠距離から高威力で』

俺の祖国、と言うべきなのだろう魔法や魔導具が発展した魔法王国マギドニア。

その隣国でしょっちゅう小競り合いをしていたカルラ教を国教とするカルラドル教国。


まぁ、小競り合いと言っても武力衝突なんて皆無で両国の一方通行な言い合いだが。


カルラ教とは、唯一神にして現人神、聖なるカルラを奉る宗教だ。

この大陸で幅広く信仰されており、世界を壊さんとする『偉大なる父』から今も護っているとかなんとか。

残念ながらマギドニアでは神の存在を否定している為、貴族の伝でも詳しい内容は分からず仕舞いだ。


俺は魔法が有るなら神の存在だって否定できないと思うんだがな。

現に俺は地球から今の世界にゲームの能力を持って転生している訳だしな。


教国は信奉しているカルラ教を更に広めんと周辺国家に信者をばら撒いている。

そして一番近い王国に集中するのだ。

カルラ教の教え上、魔法や魔導具を使う事を禁じられている事も関係していると思う。

ゴーレム馬車が主流の大陸で魔導具が封じられていれば自分の足で歩く他ない。

誰だって遠い国に歩いて行きたくないのだ。


前世の地球では遠い地でも喜んで神の教えを説いていた人達が居た気がするが、世界変われば宣教師も変わるというものだ。


最近では観光旅行も兼ねて布教に来る人も増えたとか。

うん、やっぱやる気なくね?


その観光宣教師用の宿場町まで王国では造られているのだから商魂逞しい、というべきなのか。


その無気力系カルラ教徒の一部には奇跡と呼ばれる異能を扱える者達が居る。

奇跡は防衛と治癒に特化したモノだ。

俺には同じくファンタジーな魔法にしか見えないのだが、他の王国民には全くの別系統に見えるらしく魔法研究者や魔導具職人が奇跡の仕組みや再現方法を日夜探っている。


特にその道のベテランは奇跡は別系統の魔法であって、聖なるカルラの加護では無いと宣言してる無神論者の集団だからな。


中には教国に行って奇跡を学ぼうとした勇者もいたようだが、門前払いで王国に送り返されたという話は有名だ。

まぁ、宗教の核とも言えそうな情報を外部に、それも神を否定する者に漏らすとは考え辛いから当たり前と言えば当たり前なのだが。

うん、殺さず国に送り返すだけ寛大な処置だと言えるわ。


魔法の為なら山越え海越え空を飛ぶ。

ある島の人を喰うと言われる妖にさえ妖術を学びに旅立った命知らずもいる程だ。

その人が国に帰って来たとは聞いてないが…


ゾロゾロと群れを為して神を崇めよと言い募る観光宣教師と、己の命すらかけて魔法の発展を望む向こう見ずで勤勉な開拓者。


その両者が揃えば、噛み合わぬ話し合いが発生しても仕方がないだろう。


一方は神の教えを説いて信者にしようとする。

一方は奇跡という名の謎を解明しようとする。


カルラ教徒は奇跡は魔法ではないと否定してるけど。


そんなどこか似た者同士な国柄なせいか、会えば争いが絶えない。

仲が険悪かと聞かれたら友好関係なのだが。


教国には魔導具の材料で欠かせない鉱物の産出地だが、食糧問題を抱えている。

奇跡の仕組みは教えないが出し惜しみはせずに、医療現場で多くのカルラ教徒が活躍している。


王国には安価な食べ物、オベムを大量生産できる体制が整っている。

さらに、魔導具で水源も確保して教国に浄水した上で流している。


共生共存のウィンウィンな関係なのだ。


俺は熱々の美味いミートパイにかぶりつく。

前世でもあまりミートパイを食べてはいなかったが、このミートパイだったら多少値が張っても買ってしまう美味しさだ。


隣では口の周りを赤く染めながらベリーパイを頬ばるルーが居る。

俺とルーの間にはパイが山積みに入ったバスケットが置いてある。


もちろん、あの異臭を放つ雲羊(羊の鳴き声と離れて見ると雨雲に似ていた為)から逃げ切って別の村に辿り着いたというハッピーエンドを迎えたって訳ではない。


勝つ為に離れた高台で相手(雲羊)を観察していた。

カルラ教の教会から俺達がどこにいるのか、あの雲羊をどうにかしないと逃げられないと分かってしまったからだ。


教国は山地が多い。

その中で草原が広がっているのは二箇所だけ。

一箇所は紫色の薬草が年中群生していて有名。

でも、目の前の草原は緑一色。


場所は特定できた。

帝国の方角も大体見当が付いた。


あの雲羊は村に強い執着が有るのか、村から一定距離を離れると追いかけてくるのを辞めた。

【支援】の効果が切れてルーが走れなくなった時はメニューの地図機能を見ながら来るな来るなと強く念じたのを今でも覚えている。


あの雲羊が引いていくのを確認できた時は思わず安堵の息を吐いたぞ。

そしてメニューの異変に気付いた。


『魔王の契約』にはストーリーを進めていくとミッションというモノが出てくる。


《〇〇の種族を◇◇匹、集めよ》

《▼▼村を防衛せよ》


というように、ストーリーを楽しむ為の要素として組み込まれていたのだ。

報酬で新たな【支援】を手に入れたり、新しい種族を部下にする事ができるようになったりとストーリーの鍵ともなる重要な要素。


それが、今、発令されていた。


《カロッソ村に現れた#####を討伐せよ》


一部文字化けして読めない部分もある。

しかし、ミッションだ。


文字化けしている部分は十中八九、あの雲羊の事だろう。

誰が、何が俺をこの異世界に、ゲームの能力を持たせて送ったのか分からないが…


何をすれば良いのか、よく分かったさ。

神様は俺に英雄になれって訳かよ。

齢10歳の小娘に何を期待しているのやら。

俺が普通の娘っ子かと聞かれたら否定できないが。


さらに悪い事に雲羊はボス特性を持っていた。

村一つを押しつぶせそうな大きさだから意外ではないが厄介だ。


ボス特性とは『魔王の契約』で一部のモンスターに実装されていたシステムだ。


どんな手段でも部下にできない。

フィールドをボス部屋、脱出不可能な領域にする。

負けると部下のレベルを大幅に下げられ強制セーブ。


リスクは高いが、経験値や討伐報酬が桁違いなのだ。

ハイリスク・ハイリターンのゲーム要素。

それがセーブ機能の無い現実で実装されるとは、逃げ場なしで強敵に強制戦闘とか理不尽にも程があるぞ。


俺だけはあの雲羊を討伐しない限り、この草原から出る事が叶わない。

一度でも負ければ終わりの大一番。


だから観察した。

敵の情報を収集した。

持ち札から勝ち筋を探した。


ゲームでやっていた事をリアルで一発勝負で決めるだけ。

負ければボスフィールドの外に出されるのではなく、死しか待っていない点には文句を言いたいけどな。


今食べているパイは俺の験担ぎ。

空腹じゃ勝てる勝負も負けてしまうもの。


【支援】の一つ、【至高の食籠】というモノで使ってパイを無制限に生み出すバスケットを出現させる。

パイの中身は完全にランダムでゲームではこのパイを敵モンスターに与える、というより投げつけて上手く口元に当たれば無条件で部下にできる、という効果があったのだがこの世界でも通用するか分からない。


至高という名に反しないほどに超絶品な出来立てパイなので良し。

限定的なモノとは言え食糧を気にしなくても良いのは大助かりだ。

なぜ、パイしか出ないのかと聞かれれば仕様だとしか言いようがない。


遥か遠い空には黒い点が見える。

雲羊はまだあそこに居る。

あの、村付近の上空に居座っているのが俺にも見える。


【支援】の中には組み合わさの相性がすこぶる良い、相乗効果が高いモノはいくらでもある。

その中からルーの《光属性適正》、いつの間にか習得していた《魔性特攻》の推測をも考慮して組み上げた遠距離高威力の一撃。


どうやら、ルーもお腹を満たしたようだ。

頃合いだな。

俺はルーの口元を綺麗にしてやってからルーと向かい合う。


【至高の食籠】解除


「ルー、俺の合図で伝えた通りにやってくれ」


「うん、いつでも良いよ!」


ルーは満面の笑みで応える。

今から英雄になるか醜悪な結末になるか分からないというのに、怯えや恐怖は見当たらない。

あるのは俺への腹を満たした充足感と信頼のみ。

あぁ、とても良い顔つきだ。


俺はルーの背後に回り、ルーから見えない位置へと離れる。

ルーは槍を投擲するようなポーズで雲羊の方を見る。


「汝、我が敵を討ち滅ぼさん、【必滅の一撃】」


俺の周囲は光に塗り潰された。

次回、『幼い英雄』

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