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霊感、みなさんにはあるだろうか?
夏だし、墓地探索にでも行こうかと、テングダケが言い出した。
ササも楽しそうだなぁと思い参加することにした。
実際のところ、根っからの理系であるはずのツキヨタケと、その相棒ゼニゴケにはソレがある。
イチョウやハピネスは少しそれっぽいのがあるとか悪寒がするとかそれくらい。
テングダケとササにはない。
なのでこんなことが起きる。
「うわっ! 後ろ後ろ後ろっ!!!」
「ここ寒いわよ?! 鳥肌が止まんない!」
「え? そうか?」
「ぎゃああああ! なんだよここ! 幽霊だらけじゃねぇか!」
「なあ、あそこにぼんやりした灯火がいないか?」
「え? どこですか?」
とんだ異常事態である。
ちなみに、上から順に、ツキヨ、ハピネス、テングダケ、ゼニ、イチョウ、ササである。
見事に主催者に見えていないし、
武力行使しそうな奴にははっきりとは見えていない。
ツキヨは後方支援型なので、いくら普段から奇行を好むおかしな彼でも、殴ってなんとかしようとはしていない。
唯一、(見えている奴の中で)武力行使しそうなゼニだが、彼は虫嫌いだ。そして今は真夏の夜、そしてここは雑草が茂る墓地だ。当然虫だらけ、彼は幽霊にも虫にも怯えて使い物にならない。
他の武力行使勢はというと。
イチョウは、はっきりとは見えていないし、ぼんやりなんかいるなとか寒いかなとかそれくらいで、物理で解決できないことばかりがわかる。
テングダケには何も感じていないし何も見えていない。
ササにも上記と同じくわかっていない。
なぜササが武力行使勢かって?拳でコンクリート粉砕できる彼が武力行使勢でないとでも?
そんなわけで昨晩の楽しい墓地探索は、酷い結果だった。
主催者には何もわからなかったが、参加者には阿鼻叫喚の図だった。
「楽しかったな、皆怯えまくりで」
「でも蚊がすごかったので次はカラオケにでもしましょう」
見えない勢が何か言っているが、ゼニは耳をギョウザにしておいた。
蚊がいなくても、やりたくないなぁと、ツキヨは思った。
ところで、イチョウが誰だか、覚えていた方はいるだろうか?
テングダケと犬猿の仲の彼である。
普段から豪快で考えなしのところがある彼だが、テングダケとはなぜか相性が悪い。
会議中、9割の確率で喧嘩して4割の確率で何か壊す。
器物破損社員ランキングの上位である。
ちなみこのランキングの中間あたりにツキヨがいる。
ツキヨは、問題を起こすことは毎日のようにあるが、何か壊すのはあまりない、気長で喧嘩っ早くないことが理由だろう。
それはさておき、今、ササはイチョウと二人きりである。
たまたま、ササが提出する書類の印刷に行ったら、コピー機の前にイチョウがいたのである。
この会社にコピー機は3台あって、印刷時間があまりにも長いため前に長椅子が設置されている。いい加減買い換えろよと社員に急かされているのだが、社長はすぐに忘れるので未だにコピー時間が長くよくミスコピが出る。
イチョウは長椅子の隅に座っていた。
ササも反対端にちょこんと座って印刷を待つ。
何か喋ろうとは思うのだが、何を話したらいいものか、口を開いたり閉じたりしながら気まずい時間を過ごす。
「あ、あー? ツキヨとゼニは、しっかり先輩になれてるか?」
イチョウも気を使ってくれたらしい、先輩の話を振ってくれた。ササとしても先輩の話は話しやすい。
ネタに尽きない人だからな。
「あ、っはい。優しくて良い人たちです。この前なんて、べったら漬けを一緒に作ろうって誘っていただいて」
「べったら漬け……?あのニオイのひどいやつか」
「美味しいですよね。」
「変わってるな、アンタも」
首を傾げているササに、そういえばこいつあの食堂汚臭事件の日も普通に食堂に入っていたなと思い出した。
まぁ、この会社ではそんな嗜好の違いくらいかわいいものである。
リアルきのこたけのこ戦争で肋骨折ったり、失血死しそうになったりしないだけ、全然マシである。




