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突然だが、飲料系アイスをご存知だろうか。
これはツキヨタケ命名の飲んで食べるタイプのアイスの名称だ。
最近会社でコレが流行っている。
自作するくらい。
自作するのは主に料理が得意なやつだが。
実のところツキヨも作ったりする。
最近暑いのでちょうどいい。
味以外は。
ツキヨはすぐに馬鹿をするので味がおかしなものが量産されるなんてよくあることである。
「それ何味のアイス?」
「鶏肉」
だからこの会話もよくある会話である。
「あ、おかえりぃ、テングダケにササ。地獄はどうだった?」
業務時間を過ぎているのに書類を置きに戻ってきた二人を迎えたのは、ツキヨだった。
栄養ドリンク片手にパソコンと向き合っていたらしい。
回るイスをぐるぐる回しながら最終的には二人の方を向いた。
「地獄、ですか?」
「あのお姉様(仮)がいたところ、あ゛ぁー……バーだよ。最後に行った」
ツキヨの言葉が伝わっていないササにテングダケが説明した。
「あぁ、あそこですか。いい人ばかりでまたきてね、なんて言われました」
ぱあっと向日葵が咲いたように笑うササに、ツキヨは若干引いたようだ。
テングダケもその気持ちはよくわかるので、ツキヨに「同意」とアイコンタクトを送った。
「そっか、天然ここに極まれり」
ボソッと呟かれたその言葉はササには届かなかった。
「ところでツキヨ先輩、業務時間過ぎてますが、何していたんですか?」
素朴な疑問を掲げたササ。
ツキヨはくるりとまたパソコンに向かってパチパチと何か操作をしてから、画面を二人に見せた。
画面には何かの成分表が描かれている。
「なんです? コレ?」
「新作ペット用アイスの成分表作成。こっちが犬用で、コレは猫。鳥、魚、爬虫類……」
スクロールしながら見せてくれるツキヨにササは尊敬の目を向ける。
「いろんなペット用を考えているんですね、すごいです」
「僕はメカニックだから、この商品を作る機械を考える役割なんだけどね。この会社、提案するのが、誰でも問題視しない会社だし、研究し放題だからあっちこっちに手が出せるんだよね」
「そんな多方面に研究しても頭がパンクしないのはこいつが優秀だからだな」
テングダケの言葉にササはなるほどと相槌をうつ。
「そして、無駄なことをする」
いつのまにか後ろから現れたハピネスがササの方に手を置いた。
「うわっ!!?」
気配も足音も全くなかったためにササはとても驚いた。
「イエス、イエス! はいどうぞ」
そして肯定しながら、ツキヨは飲料系アイスを三つ取り出した。
「人間用だよ」
にへら、と笑いながら一本ササに渡される。
緑色だ。メロン味か、変わり種で野菜か。
一口食べて、撃沈した。
「げっほっ、ゴホッ。……先輩、辛いです。舌がっ!」
「それわさび味」
「コレは?」
テングダケは渡された黄色のアイスに口をつけずに言った。
「カラシ」
「ならこの赤いのは唐辛子かしら」
ハピネスのセリフにツキヨは首を横に降る。
「ケチャップ」
「素直にトマト味って言ったらどうですか」
「トマトよりは甘い。砂糖入ってるから」
復活したササの指摘にツキヨが返した。
「お前らー、もう帰れー。今何時だと思ってんだー」
「「「「夜中の一時 (です)!」」」」
社長の指摘で四人は帰路に着いた。