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2-26 認識補強



 曰く、ホムラの全てはココミのテレパシーによって支えられている。

 ハカモリを相手取った大立ち回はホムラの脳に致命的なダメージが残った。これはマイケル・クロムウェルの腕を持ってしても修理できず、通常ならば廃棄処分されるに足る不具合が生まれた。


 ホムラが持ってしまった致命的な不具合は一点、記憶である。

 連続的なPSI使用はホムラの記憶領域を融解させた。このキョンシーが記憶、又は記録できる時間は僅か七秒程度しかない。その時間を過ぎると全ての記憶は瞬く間に焼け落ちるのだ。


 エピソード記憶だけではない、意味記憶、非陳述記憶を含んだ、全てだ。

 その精神で培ってきたありとあらゆる経験をホムラは記憶できない。彼女一人では立ち上がることも、否、立つとは何を意味した言葉なのかを理解することさえできないのだ。


 認識は感覚から生まれ、感覚は記憶から育まれる。記憶が燃え尽きていくホムラは只の肉塊に過ぎない。

 だが、ホムラは普段問題なく稼働している。それはココミと常に触れ合っているからだ。


 ココミは自身の認識、感覚、記憶を常にホムラと共有している。ホムラが失ってしまった脳の領域の全てを受け持っているのだ。

 テレパシー技能のほぼ全てをホムラに向けている。図らずもこれはココミを悩ませていた、外部から無作為に聞こえて来る心の声の緩和に繋がった。


 妹の眼を通して姉は世界を見る。妹の耳を通して姉は世界を聞く。妹の鼻を通して姉は世界を嗅ぐ。妹の全てを通して姉は世界へ触れる。

 互いをテレパシーの糸で巻き付けて自己の境界線を消失させて、ホムラとココミは今世界に現存できた。


 それがホムラとココミ、木下恭介の保有するキョンシーの在り方だった。

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