表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/512

2-23 痛み分け

 バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチ!


 石畳を踏み付けてエレクトロキネシストが向かって来る。

 磁力を使いながら体を飛ばし、京香は生身ではあり得ない速度でモルグ島の道路を高速移動した。

 背後に跳び続け、時速六十キロの風が耳を通り過ぎる。その視界に京香にしか見えないPSI磁場が縦横無尽に動き回っていた。


 今、京香が出せる全速力だ。それでも、敵のエレクトロキネシストの方が速い。

 戻ってきた八つの鉄球を散発的に発射するが、距離はジワジワと狭まり、必殺の電撃がこちらを狙う。


 ボオオオオオオオ! ボオオオオオオオ! ボオオオオオオオ! ボオオオオオオオ!

 ボオオオオオオオ! ボオオオオオオオ! ボオオオオオオオ! ボオオオオオオオ!


 炎の葡萄も苛烈さを増した。京香は砂鉄の雲を上部へ展開して防ぐが、爆発で砂鉄が弾け、爆風が体勢を崩していく。


「あんまり動き回るのは得意じゃないのよ!」


 京香の本来の戦い方は立ち止まっての中距離戦。高速移動しながら迫り来る敵が一番苦手だ。

 花開いたシャルロットをエレクトロキネシストへ向け、砂鉄の雲を上部へ展開し続ける。

 状況は不利。砂鉄の雲では今の量の炎球を防ぎ切れない。

 可能なら立ち止まり、一体ずつ対処したかった。しかし、いざ立ち止まろう物なら、設置型のエアロキネシスが京香の体を浮かせるだろう。


──設置型は厄介ね!


 設置型のPSIは力場を設置してから発動と言う二つステップが必要だ。速攻性は低い代わりに軌道が読み難く、避けるのは著しく困難である。

 炎球に当たり、爆発を繰り返す砂鉄の雲の向こう。エアロキネシストに支えられたパイロキネシストの頭は全ての穴から出血を起こしている。


──後、二十秒ってところかしら?


 PSIのオーバーワーク。後一分も待たずして脳は壊れ、パイロキネシストは活動を停止するはずだ。

 だが、それよりも早く、エレクトロキネシストが自分を捕まえるだろう。

 京香は賭けに出た。


「らぁ!」


 京香はエレクトロキネシストに向けていたシャルロットを上方に投げた。重さはそれほどでないが、半径一メートルの水晶の薔薇は頭の上一メートル程度まで上がる。

 それと同時に京香は前方へ磁場を集中させ、砂鉄の雲をそこに移動させた。

 一瞬にして薔薇の盾と砂鉄の雲がその位置を切り替える。


 ボォボボボボボボボォボボボボボボボボボボボボン!


 爆球を受けたシャルロットが悲鳴を上げてしちゃらかに回転する。けれど、一瞬、降り注く爆風の雨はその存在を消した。

 エレクトロキネシストとの距離は僅か二メートル。その間に差し込まれた砂鉄の雲へ京香はとある命令をする。


「ばらけろ!」


 命令は磁場を消失させること。正確には極端に弱くすること。

 砂鉄の雲がその硬さを失う。トレーシーの銃口を背後へ向け、京香は四つの鉄球を高速で撃ち出した。

 作用反作用の法則から京香の体へ強烈なブレーキが掛かる。


 ジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリ!


 半気体状態と成った砂鉄の雲がエレクトロキネシストの体を瞬時に包み込む。


 バリバリバリバリバリバリバリバリバリ! 電流が弾け、その全てが砂鉄雲に吸収される。


「固まれ!」


 再び京香は磁場のスカラーと回転を強くする!

 砂鉄雲は強烈な研磨剤の様にエレクトロキネシストの体を駆け回り、吸収された電流がそのまま蘇生符へと流れ込んだ!

 ブシュウウウウウウウウウウウウウウウウウ! キョンシーの体は一瞬にして()()()、金属パーツが露出し、その頭部が破壊された!


「次!」


 すぐさま左腕を振り上げ、京香は砂鉄雲を上部へと展開し直す。

 しかし、砂鉄の展開は一歩遅かった。


 ボォン!


「っ!」


 炎球が一つ京香の左腕と衝突し、その細腕が一瞬にして焼き砕かれた。

 激烈な痛みが駆け巡る。蘇生符を貼って痛みを鈍化させていなければ気絶していただろう。


「ハハ!」


 トレーシーをパイロキネシストとエアロキネシストへ向け、躊躇わず京香は残る四つの鉄球全てを撃ち出した。

 磁場の強度は一番強く、軌道は真っ直ぐ最短に。

 最速最短で放たれた鉄球の星は炎球の爆発を撃ち破り、敵のキョンシーへと届く。

 当たる直前、エアロキネシストがパイロキネシストの体を向かって来る四つの鉄球へと押し飛ばした。


 バキボキバキボキバキボキバキボキバキボキバキボキバキボキ!

 パイロキネシストの体だけが砕け、鉄球の一つがその蘇生符ごと頭部を砕いた。


──逃げられる!


 意図は明白だ。比較的損傷が軽微なエアロキネシストはこのまま逃げるつもりなのだ。


 ビュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!

 ビュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!

 ビュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 果たして、予想は的中した。

 上空のエアロキネシストは階段を駆け上がる様にその高度を増し、京香の有効戦闘範囲から速やかに離脱する。


「……追えないか」


 少しだけ京香は追撃するかを考え、すぐに止めた。

 左肘から先が本来向かない方に捩れ、一部の肉は炭化し、開放骨折を起こしている。

 突き破った骨からは血が滴り落ち、運動能力を著しく下げていた。


「塞げ」


 砂鉄を腕の破れた場所に貼り付け、京香は出血を止める。

 左腕から滴り落ちた液体は雪に赤いまだらを彩っていた。

 京香は気象塔へと飛ぶ。シャルロットは後で回収することにした。

 霊幻が行ったのだ。戦闘はもう終わっているはずだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ