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③ エレベータートーク







「どうしようか恭介? 各国のお偉いさんの前で話すとかマジでやりたくないんだけど」


「僕もそうですよ……。いやほんとどうします? 事前に質問とか送られてきますかね?」


「モーバとの今までの戦いや知っていることを説明しろって言ってたわね」


「今までの報告書を見直さないといけませんね」


「あーやだやだ。まあ、資料自体は黒木さんが作ってくれるらしいけどさ」


 第六課のオフィスに戻りながら京香と恭介達は先の会議について話し合う。


 二週間後、シカバネ町で行われるモーバ対策会議、その重要参考人として京香と恭介が選ばれてしまった。


 拒否権は無い。ハカモリで最もモーバと相対してきたのは第六課で、その中で最も敵について詳しいのは京香と恭介だ。


「でも、水瀬さんもどういうつもりなのかな? アタシも恭介もそんなに口が上手い方じゃないじゃん。結構簡単に言い包められちゃう気がするのよね」


「まあ、だからこそ黒木さんが中心に成って話をするんでしょうね」


 今回の会議においてハカモリでの主役は京香と恭介だが、その主人公と言えるのは黒木白文だった。


 彼はハカモリにおけるあらゆる事前事後処理を担当する第三課の主任である。そんな彼が今回のハカモリでのホストを担当し、あらゆる会議でのまとめ役をするというのだ。


 自分達が矢面に立って話さなくても良い。そう思えば少しは心が軽くなるが、京香の心配は尽きなかった。


「とりあえずさ部屋に戻ったらちょっと打ち合わせしようよ」


 京香の言葉に恭介が頷く。今回は京香と霊幻だけの話ではない。特にこれからのことについて恭介とちゃんと話し合わなければならなかった。


「恭介の家でしばらくお世話になるんだしね」


「それが一番本当に大変ですね」


 京香と恭介にとってこれが一番の懸念事項だった。


 モーバ対策会議には世界各国から様々な人間とキョンシー達が来るだろう。


 この会議の間、普段から抜け漏れが多いシカバネ町の関所が更に緩くなることは簡単に予想できた。


 ハカモリの捜査官とキョンシー達の補充は未だ完了しておらず、当日の警備の甘さについてが先程の会議の終盤で話し合わされたことだ。


 話し合いは当然、最も危険なのは一体誰かという話になった。


「確かに一番危ないのはあんた達なのよね」


「にしても、清金先輩が僕の部屋に住む必要がありますかね?」


「しょうがないでしょ。一番強いのはアタシなんだから」


 恭介達を、より正確に言うのならココミの護衛を少しでも万全とするため、京香と霊幻がこの会議の前後、恭介達の護衛に当たることと成ったのである。


――アタシは護衛が苦手なんだけどなぁ。


 内心でぼやくが断れない状況であるとも京香は理解していた。


 毎週、下手をしたら毎日のように現れているココミへの刺客達にとって今回のモーバ対策会議は垂涎物の大チャンスである。


 結果として、しばらくの間京香と霊幻が恭介達と寝食を共にすることと成ったのである。


「清金先輩も良かったんですか?」


「しょうがないわよ。何か恭介の家特有のルールとかあったら教えてね」


 京香にとって複雑な心境ではあった。恭介は確かに大切な後輩で、ホムラとココミは大切なキョンシーだ。彼らを守れるならば全力を尽くすという覚悟はあるし、護衛をすることや恭介宅にしばらく済むことには何の不満も無い。


 けれど、今の京香にとって時間は貴重である。


 霊幻と過ごせる時間は残り少ないのだ。


 京香は少しだけ後ろを歩く霊幻の顔を見た。彼はいつものような笑みを唇に貼り付かせながらこちらを見ていて「ハハハハハハ! どうした京香、吾輩の体におかしなところでもあったか?」と、的外れなことを言うだけだった。


「何でもないわ」


 ごまかして前を向き直し、京香達は第六課のオフィスの前に到着した。


――まずは、とにかく、どうするのかを恭介と話さないと。


 軽く舌先を噛んで京香は思考を切り替える。とにかく決まってしまったことなのだから、グチグチ と思考をループさせるのはやめた方が良い。


「良し、じゃあ、ヤマダとかの意見も聞きながらどうするのかを決めましょうか」


「賛成です。僕達だけじゃ煮詰まりそうですから」


 そう言いながら京香はオフィスのドアを開けた。


「ハオハオ! バツちゃんだよー!」


 瞬間、キンキンとする様な明るい声が京香達の耳へと届く。


「……何で居るの?」


 第六課オフィス中央に置いたソファには何故かバツが居て、シニヨンキャップを揺らしながら的外れな方向へ手を振っていた。

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