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⑧ オーバーヒート

 対外的に見て不利なのはフォーシーだ。


 アネモイは既に力の開放を終えている。撃ち出された空気の解放には既にエアロキネシスを割いていない。


 対してフォーシーはテレキネシスを発動し続けることで瞬間的な空気の爆発を抑え込まなければならなかった。


「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!」


 しかし、フォーシーは〝力〟を司るキョンシーだ。


「!」


 上空、アネモイが驚いた様に眼を見開いた。


 ググググググググググググ! 解放されたはずの空気。本来ならば空とゴルデッドシティを覆う程の爆発を見せたはずの切り札級の技。それが抑え込まれた。


「空気穴は必要だよなぁ!」


 フォーシーが僅かにテレキネシスの手に隙間を作る。それは空を向き、音速を超えた風がアネモイへと噴出された。。


 風の神へ空気の暴虐が襲い掛かる。


「おskえs」


 アネモイが自身へと向かって来る空気の塊へ手を向ける。どれ程の力、どれ程の量が有ろうとも、エアロキネシスを極めたこのキョンシーにとって脅威には成り得ない。



 そのはずだった。


「ぁr」


 瞬間、アネモイの体から力が抜け、落下を始める。


「HAHAHAHA! 当たり前だ先達様! お前は壊れてるんだからなぁ!」


 フォーシーは見抜いている。アネモイは一瞬意識を飛ばしたのだ。


 当たり前である。そもそもとしてあの風の神は既に壊れている。今動いているのは奇跡的だ。


 その中で、フォーシーとバツという二体のA級キョンシーを相手取ったのだ。


 加えて、大技の連発。脳の活動が止まるのも当然だ。


 結果、アネモイは空気の噴水を真正面から受け止めた。


 音速を超えて噴き出した空気。それを受け、アネモイの体が空遠くへと吹き飛ばされる。


 空圧は圧倒的だ。捩じり折れていた腕は千切れ跳び、体が砕けながら空高く空遠く飛んで行く。


 すぐに視界限界からアネモイの姿は消え、フォーシーは拳を突き上げた。。


「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA! アイムウィナー!」


 これで最大の脅威であったアネモイはこの場から排除された。ギリギリの戦いと言えた。何かを一手間違えていれば倒されていたのはフォーシー達だっただろう。


 一つの満足感がフォーシーにはあった。初めてである。これだけPSIを全力で使ったのは。


 自らの機能を全力で使えると言うのはフォーシーが思ったよりも良い感覚だった。


 そんな満足感の中、フォーシーは蘇生符を金色に輝かせたままテレキネシスで適当なビルに掴まりながらアネモイが消え去った空を見上げた。


 まだ、地上での戦いは終わっていない。すぐに皆を助けるために戻られねばならない。


 けれど、フォーシーもまたギリギリだった。脳の寿命を減らしたであろうPSIの全力発動。わずかなクールダウンの時間を身体は必要としている。


 その僅かなクールダウンを求めて空を見たからこそ、フォーシーは気付いた。


「……HAHAHAHAHAHAHAHA! ゴールドも過ぎるって物だぜ!」


 空、アネモイが消え去ったのとは別の方向。ゴルデッドシティへ向かって来る飛翔体の姿があった。


 記録回路に刻まれた防衛用のデータがフォーシーへ飛翔体の答えを開示する。


「AF99か!」


 AF99。中国が保有する最新核ミサイルの名称。


 それを認識した瞬間、フォーシーはテレキネシスの腕を地面へと叩き付け、一気にその飛翔体へと跳んで行く。


「俺様がゴールドに守ってやるのさ!」


 キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!


 脳は限界。それを無視してテレキネシスを再度全力で発動した。


 フォーシーの体がミサイルから百メートル先に刹那で到着する。


 体から生えた大小さまざまな無数のテレキネシスの腕。それらを全てフォーシーはミサイルへ伸ばし、その全体を包み込んだ。


 カッ!


 瞬間、テレキネシスの中で光が生まれた。


 バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


 刹那、フォーシーのテレキネシスに激烈なる圧力がかかる。


 核反応により発生する破壊の力。それは万全であったとしてフォーシーでも抑え込めるかどうかのエネルギーの発露だ。


「全部! ああ、全部ゴールドな俺様が抑え込んでやるとも!」


 フォーシーは叫ぶ。アネモイの風を押さえた時とは違う。一ナノメートルの隙間も無い程にテレキネシスの全てを使って爆発を包み込んだ。


 だが、瞬間の爆発。そのエネルギーは凄まじい。


 フォーシーの脳と蘇生符は冷静に判断していた。


 これは止められない。フォーシーのテレキネシスは破れ、ゴルデッドシティは核の爆発に晒されるのだ。


「俺様は負けねえ! ゴールドだからなあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!


 テレキネシスの出力を上げる。百パーセント中の百パーセント。出せる全力。


 それでも核爆発のエネルギーを抑え込むのには足りなかった。

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