⑦ 金色の力
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ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
アネモイを〝見た〟上で発動したバツのパイロキネシス。夜空を焼いた業火は風の神の名を冠するキョンシーを包み込んだ。
通常であればアネモイの体は灰燼と化していただろう。バツの炎とはそういう物だ。
しかし、空に残る炎の残滓、その向こう側から数百を超える風の大槍が放たれた!
「キャハハハハハハハ! 避けられたね!」
「HAHAHA! 流石はゴールドなA級キョンシーだ!」
バツの笑い声にフォーシーは頷く。
必殺のタイミングだったはずだ。少なくともバツはアネモイの体を視認し、間髪入れず炎を生んだ。避けられる余地は無かったはず。
テレキネシストの論理回路ならばそう考える。だが、相手は稀代のエアロキネシストだ。
理由を探して風の槍の向こうの空を見る。バツの炎で熱せられ、ゆらゆらと揺らめく先にアネモイが居た。
「屈折率を弄ったな!?」
フォーシーはすぐに答えに行き付く。アネモイはバツの炎を受ける刹那、周囲の空気を弄り、屈折率を変えたのだ。
バツのパイロキネシスは視認により座標系を認識する。蜃気楼の様に座標が曖昧ならばバツのの炎も避けられよう。
キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
空より降り注ぐ風の槍をフォーシーはテレキネシスで叩き落す。
「HAHAHA! それでもアネモイ、お前の体は大分砕けたじゃねえか!」
「mおndない」
しかし、戦況はフォーシー達に有利だった。アネモイは左足を欠損させ、腕も捩じり折れている。空気を固めて支えているのか、首の骨も折れている様だ。
肌の三割以上が炭化している。バツの炎を完全には避け切れていなかったのだ。
「さあ、燃えて!」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
自己判断だろう。バツが眼を開き、アネモイの声がした空を燃やす。
しかし、その瞬間、グン! アネモイが一気に左方へ移動し、フォーシー達へと壊れかけの手を向けた。その移動速度は先程よりも速い。
「そのゴールドな加速は軽くなったからか!?」
HAHAHA! フォーシーは笑う。流石、世界で初めてのA級キョンシー、アネモイだ。追い込まれて尚その力は絶大である。
だが、アネモイの損傷もまた凄まじい。エアロキネシスで移動しているとはいえ、あの動きをそう長く保てないはずだ。
フォーシーの予測は当たる。バツの炎を避けながらアネモイの蘇生符が激烈に輝き出した。
ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!
刹那、アネモイが突き出した手の平、そこを中心に空一帯の空気が一気に吸い込まれる!
「そんなものをこの町へぶっ放すつもりか!? それはゴールドじゃねえぜ!」
アレをフォーシーは知っている。去年、モルグ島でのアネモイとアネモイ2の戦いで見せた圧倒的な圧力で液体空気を作り出す荒業だ。
フォーシーの記録通り、アネモイの手の平の前にバスケットボール大の薄青色の球体が創り出される!
圧縮された空気。圧力により、液体と化した気体成分。それを一挙に解放した時に起きるのはゴルデッドシティを破壊するに足る衝撃波だ。
「バツ! お前を放すぞ! ゴールドに着地しな!」
「バツちゃん眼を閉じてるのに!?」
返事を待たずにフォーシーのテレキネシスの手がバツを手放した。
バツでは止められない。炎ではただ衝撃を生むだけだ。
ならば、アネモイの蛮行を止めるのはフォーシーしか居ない。
「自己判断だ! ゴールドフォース発動!」
音声による略式申請、続けてフォーシーは自身のPSIへの制限を解除した。
蘇生符によるフォーシーの論理回路、それが自国の民を守るのに必要と判断した時のみ、フォーシーは自己判断でのPSI制限解除が許されている。
キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
空間が軋む様な音を立てながら、フォーシーの蘇生符が金色に輝き、その全身から目視できる程の大量のテレキネシスの腕が生えた。
「HAHAHA! ゴールドに潰してやるさ!」
キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
半ば無尽蔵にテレキネシスの手が空中のアネモイへと伸びた。制限解除した時のフォーシーのPSIの射程は距離にして十キロメートルを超える。アネモイの最大射程には届かないが、この距離ならばほぼ誤差に等しい。
「はjkろ」
自身へと瞬間的に伸びる必殺の手。それにアネモイが圧縮された青色液体の球体を撃ち出した。
青色球の速度は音速。その球体をフォーシーのテレキネシスが掴んだ。
その瞬間、アネモイのエアロキネシスにより圧縮された力が開放される!
バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
凄まじい圧力、鼓膜を破らんばかりの大音。されど、その衝撃波とフォーシーのテレキネシスが拮抗する!
「HAHAHA! 力比べなら俺様は負けないぞ!」
キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
テレキネシスの出力を上げる。腕の数を増やし、弾けようとする空気圧をフォーシーは抑え込む。
ブシュウ! 過剰なPSI出力に脳が悲鳴を上げ、フォーシーの眼から薄紅色の血が噴き出した。