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③ 金の町を跳び回れ




***




「バツ! 絶対に俺様を見るなよ! ゴールド過ぎて消し炭に成っちまうからな!」


「キャハハハハハハハ! 何言ってるのかぜーんぜん分かんない! でも良いよ何をして欲しいのかは分かる! 任せて任せて! フォーシーもバツちゃんを握り潰さないでね!」


 ゴルデッドシティの夜空をフォーシーは跳ぶ。テレキネシスの腕の一本でバツを掴み、残り数十の腕を使って空を飛ぶアネモイを追いかけ続けていた。


 東区の三十階建てのビル。それが崩落した。中々にゴールドな建物だったのだが、フォーシー達のゴールドさには耐えきれなかったのだ。


 キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!


 バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


 テレキネシスの腕で地上のアスファルトを叩き、フォーシーはゴルデッドシティの地上を駆ける。


 アネモイは空から降りず、風の弾丸をフォーシーへと放って来た。


 ヒュウウウウウウン! ヒュウウウウウウン! ヒュウウウウウウン! ヒュウウウウウウン! ヒュウウウウウウン! ヒュウウウウウウン!


 極限まで細く萎めた風の弾丸。貫通力に特化したそれらはビルを貫き、そのままフォーシーとバツを正確に狙った。


「ゴールドな操作性だ!」


 キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!


 フォーシーはテレキネシスの腕でそれら弾丸を全てへ弾き飛ばす。


 当たれば終わりだが、風の弾丸はフォーシーのテレキネシスを撃ち破れない。


「フォーシー、早く早く、バツちゃんを空に持って行って。じゃないと眼を開けないよー」


「HAHAHA! ゴールドな俺様に任せろ!」


 バツは眼を閉じたままだ。頬に当たる風と音の反響からまだ地上に居ると理解している様だ。


 今ここでバツが眼を開いてしまったら、それこそビル群の全ては灰燼と化してしまう。それをこのA級キョンシーも理解しているのだ。


 だからこそ、アネモイもフォーシーとバツを地上に縫い留める。


 撃ち出される大量の風の砲弾。数はほぼ無限で方向も半球状の全てから放たれる。


――エアロキネシストの攻撃範囲の広さはゴールド過ぎるぜ。


 アネモイは地上から四百メートルの位置。そこからフォーシー達の周囲の空気を操り、武器として無尽蔵の攻撃を放って来る。


「HAHAHA!」


 キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!


 威力は大したこと無い。フォーシーのテレキネシスであれば簡単に散らせる。だが、数と範囲が問題だ。


 どうにかして遮蔽物の無い空近くまで駆け上がらなければならない。


 すぐにフォーシーは作戦を立案実行した。


「俺様はゴールドに突破するぜ」


 バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


 テレキネシスの腕で自身の右側を殴り、左上方、すなわち、偶々横にあった。二十階建てのビルの五階へ跳び上がり、フォーシーとバツは窓ガラスを破って突入した。


 ビュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 即座にアネモイが反応する。フォーシー達が突入したビルの階に秒速百メートル声の風が発生し、フォーシー達を外へ吹き飛ばそうとした。


 屋内で使われるエアロキネシスの出力は馬鹿に成らない。一瞬にして乱高下する気圧はフォーシーとバツのキョンシー用血液へ沸騰と凝固の双方を起こした。


 だが、フォーシーは笑う。暴風は凄まじいがテレキネシスの腕でフロアにしがみ付けば問題ない。自分達を地上に縫い留めていた圧力は今この瞬間消え去った。


「HAHAHA! その程度の力なら俺様は立てるぜ!」


「ハオハオ! すごいすごい! 何がどうなってるのー!」


 キャハハ! テレキネシスの腕で掴まれたバツの笑い声を聞きながらフォーシーはテレキネシスで五階フロアの床を全力で押し飛ばし、そのまま上階へと跳び上がった。


 ズガガガガガガガガガズッガアアアアアアアアアアアアアン!


 一秒も経たず、フォーシーとバツは屋根を突き破ってビルの屋上へと躍り出た。


「oちr」


 すぐ頭上百メートル先。アネモイがこちらへ両手を向け、全空から幅十数メートルの巨大な風の砲弾を弾幕の様に撃ち落とした。


 フォーシー達の動きに先回りした攻撃。制空権を持つ物の特権。


 風の砲弾群を避ける方法は無い。しかし、フォーシーは笑った。


「ゴールドな予測だ! でも遅いぜ!」


 テレキネシスで握り持ったバツ。それを上空へ向け、その体へ僅かに力を込める。


「キャハハハハハハハ! 合図だねー! バツちゃんには分かるよー!」


 音と肌で感じる風、そしてテレキネシスの意図をバツは理解する。


「バツ、もう一回ゴールドに空を焼いてやれ!」


「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」


 笑い声と共にバツがその眼を開けた。


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 夜空が焼かれる。


 圧縮されたことが災いした。風の砲弾はほぼ無色であるが、何処から放たれてるか程度は認識できる。バツにとってそれだけで発火条件だ。


「あtい」


 アネモイは瞬間的にビル群の下に逃げ、バツの炎を躱す。


 その間にフォーシーは移動を開始した。


「キャハハハハハハハハハハハハハハ! 燃えて燃えて! ああ、気持ち良い!」


「HAHAHA! ゴールドに楽しそうだなバツ!」


 ビルからビルへ。テレキネシスで体を打ち上げる。一ヶ所に留まっていては先のビルの二の舞だ。ここからは移動しながらアネモイを狙うのだ。


 ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!


「ゴールドに来るか?」


 地上から風音がする。地上にバツは向けられない。ビル群をスーパーヒーローの様に跳び回りながら、フォーシーはアネモイを迎え撃った。


「kt」


 ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


「ヒュウ! ドラゴンじゃねえか!」


 そして現れたのは全長三十メートル越す巨大な風のドラゴンを携えて眼下から登場するアネモイだった。


「チマチマと戦うのは止めか! 良いぜ俺様好みだ!」


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 秒速二百メートルを超す烈風がフォーシーを襲う。あまりの空圧にビル群全体にあっと言う間に罅が入った。


「ゴールドに守ってやるさ!」


 キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!


 キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!


 キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!


 キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!


 キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!


 対して、フォーシーは周囲一帯を包み込める程の巨大なテレキネシスの手を大量に肩から生やす。力場の腕は大きく、すぐさま竜巻の竜を掴み上げた、


 ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 竜の雄たけびの様な声。空圧を全てテレキネシスで受け切る。単純な力比べならばフォーシーは負けない。


「!」


 力業で自分の大技を止められた事実に驚いたのか、アネモイの体が一瞬硬直する。


 その硬直をフォーシーは見逃さなかった。


「ウラァ!」


 刹那で生まれるテレキネシスのアッパーカット! アネモイの体が一部砕けながら空へと打ち上がる!


「バツ!」


「キャハハハハハハハハハハハハハハハ! ああ、初めてアネモイを見れたああああああああああああああああああああああ!」


 バツの蘇生符が灼色に輝く。


「かb」


 対して、アネモイがその全身を空気で何かをしようと覆った。


 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 そして、再び夜空を炎が包んだ。

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