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札憑き・サイコ・エンバーミング~撲滅メメントモリ~  作者: 満月小僧
第七部 ゴールドラッシュは終わらない
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第百回キョンシーサミット

第七部開始します。

今回のテーマは〝復讐〟です。

よろしければ、どしどし反応をお願いします。

「『それでは第百回キョンシーサミットを開幕します』」


 アメリカ合衆国、カリフォルニア州、ゴルデッドシティ、リバイバーズホテル。


 館内に響き渡ったサミットの開催宣言を聴いて京香は溜息を吐いた。


「ハハハハハハハ! 始まってしまったな京香! さあ、気合を入れろ! 敵はいつ来てもおかしくないのだからな!」


 霊幻の狂笑がリバイバーズホテルのホールに響き、各国の要人達が眼を向ける。


「どうにか止めたかったんだけどねぇ」


「吾輩達はどう見ても不審者であるからな。護衛を許可されただけでも奇跡だ。水瀬め、何か裏取引でもしたな」


 やれやれと京香はその白髪を振るう。彼女のすぐ近くではキョンシーを連れた第六課の部下達がホールの中を歩き回っていた。


 ガヤガヤガヤガヤ。人もキョンシーも多い。言語も多彩。トーキンver5が無作為にとりあえず設定した英語を拾い、京香の右耳に無理やり翻訳した言葉を響かせる。


――うるさいわねぇ。


 自分では止められない言葉の羅列。もう三日もこの状態だ。いい加減頭がおかしくなりそうだった。


 ジロリと京香は周囲を睨む。白髪で屋内だと言うのに黒いコートを着た京香達の姿は悪目立ちし、各国の護衛用キョンシーが警戒態勢を取っている。


 当たり前だ。今日この日、この場に集まったのは世界各国のキョンシー関連の最高責任者やそれに準ずる者達ばかりなのだから。


「ああ、でも、もう一回言うけどさ。何でわざわざサミット強行しちゃうかな。ウェブ会議で良いでしょウェブ会議で。時代はオンラインよ」


 京香は愚痴る。集まった者達の危機意識の低さ。簡単に危険を避けられる選択肢を選ばない愚かさ。どうして自分達の要求を聞いてくれないのか。


「『しょうがねえよ。だって今回のサミットは記念するべき第百回。急に中止ってのはゴールドじゃねえ』」


 キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン。


 頭上から声が響き、同時に京香の眼前へ何かが落ちてきた。


「……フォーシー。外に出歩かないでって言ったはずだけど」


「『むりむりむりだ。俺様はフォーシー。このアメリカが誇る世界で一番ゴールデンなA級キョンシー。みんな俺を見に来てるのさ。このゴールドな姿を』」


 そこに居たのは全てが金色のキョンシーだった。


 髪も瞳も肌も歯も、眼が痛く成る程に金色に輝く炭鉱夫の恰好をした異常なキョンシー。


 アメリカ合衆国が持つ世界最高A級テレキネシスト、フォーシー・ゴールドラッシュだ。


 京香達の今回の護衛対象の一体である。


「もう何度も言っているけど、フォーシー、あんたは敵に狙われているの。どこか安全な場所に隠れてて。前夜祭で充分暴れたでしょ」


「『昨日のショーのことか! あれはゴールド! 会場中が大盛り上がりだったな! だがな、京香、ゴールドな俺様の価値は人間様達に見られてこそなのさ!』」


 ギラギラと金ピカに輝くフォーシー。京香は歯ぎしりする。理屈は分かっていた。京香達外部の人間が他国のA級キョンシーをどうにかできる権限は無い。


 状況は悪い。京香達が今回守らなければいけないのはフォーシーだけではないのだ。


「『ハオハオ! フォーシー、京香、霊幻、昨日ぶり!』」


 とてとてとて。二つのシニヨンキャップと付け、真っ赤なチャイナドレスを着たキョンシーが付き人に手を引かれて京香達の元へと現れる。


「『おお、バツ! バツじゃないか! 昨日のショーはお前のおかげで素晴らしいかったぜ!』」


「『ハオハオ! みんなバツちゃんだよー!』」


 いえーい! とバツと呼ばれたキョンシーが周囲へピースサインを送る。だが、その方向は点でバラバラだ。なぜなら、このキョンシーの眼はグルグルと巻かれた赤い布で塞がれているのだから。


 この目隠しをされた少女のキョンシーの名前は(ばつ)。中華人民共和国が威信にかけて開発した世界最強のA級パイロキネシスト。


 もう一体の京香達の護衛対象である。


「バツ。あんたも何で出てきちゃうかな。あんたこそ閉じこもっていないとダメでしょう? 眼隠ししてるんだから」


「『大丈夫大丈夫。バツちゃん肌感覚凄いから。結構ちゃんと戦えるよー』」


 京香は強く舌打ちした。二体の護衛対象どちらもが全く話を聞かずに動き回っている。これでは満足に護衛もできない。


「『京香、顔がゴールドじゃないぜ。大丈夫だ。俺様とバツはそう簡単に破壊されねえよ』」


「『シー! バツちゃんの炎はすごいよー! 格闘術もすごいよー!』」


 ヘイ! と二体のA級キョンシーが仲良くハイタッチした。


「ハハハハハハハ! 京香、吾輩達もやるかハイタッチ! こういう時こそ、撲滅のための結束だ!」


「やめい! ああ、もう! めんどくさい!」


 京香は髪を掻き、思い出す。何故この様な状況に成ったのだろうか。

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