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空を目指して
キョンシーは立ち上がった。
足元には瓦礫に潰れたお友達。
思考がバグを起こしている。
それが致命的であるとも分かっている。
程なくしてこの体は機能を停止するだろう。
つい数分前まで何かをしようとしていた。
その何かをキョンシーは思い出せないでいた。
おそらく重要な命令だった。
けれど、復元不可能な記録と化したのなら、もはや実行は不可能だった。
故にキョンシーは僅かばかり停止した。
石の雨が降っている。それはどこから降っているのだろうか。
上からだ。上方からだ。
果たしてその先には何がある
――ああ、空を見なきゃ。
そう思って駆け出した。
ただ一つの夢。
それさえ叶うのならもう何も要らなかった。




