ブルー、ブルー、ブルー
不知火あおいは良く夢を見る。
夢の中で自分は制服を着ていて、その隣には同じ制服を着た京香の姿があった。
夢の場所はいつもまちまちだ。教室であったり、校庭であったり、コンビニであったり、リビングであったり。
何処でもあおいは京香と一緒に居て、食べたり遊んだり勉強したりする。
新しくできたというクレープ屋に行ってみたり、カラオケで熱唱したり、試験勉強に四苦八苦したり。
夢の中であおいは京香と笑っている。無垢な顔をして、今が一番楽しいと根拠もなく信じていた。
他にも夢を見た。京香に抱えられて飛び回る風景だ。
何度も何度も京香の問題にあおいは巻き込まれ、その度に京香は全身全霊であおいを助けていた。
京香に抱えられ、彼女に抱き着きながら飛び回るのが、実はあおいは好きだった。
夢の世界には眼が潰れてしまいそうな程の輝きがあった。
それはかつてあった青春の日々。
かつての親友と駆け抜けた二度と戻らない刹那の日々。
青い奇跡に居たのだと、当事者であった頃は気付いていなかった。
だから、あおいは夢から覚める度、涙を流すのだ。
「……」
頬を濡らしてあおいは目が覚めた。
あおいが居たのは懐かしきシカバネ町の目新しいホテルの一室。
滲んだ視界で窓からあおいは空を見る。
月明かりで照らされた雲。手が届きそうな星。
ゴシゴシと瞼を擦り、壁時計を見た。朝までは時間が未だあった。
寝直す気にも成らなかった。網膜には青い輝きが焼き付いている。
あおいは壁掛けのテレビを点け、ピ、ピ、ピとチャンネルを回していく。
深夜バラエティ、時代劇、アニメ、その中でふと目に留まったチャンネルがあった
少年と少女が空を目指す冒険映画が丁度始まる所だ。
この映画を何度も京香とあおいは観た。台詞だって全部覚えている。
青い残照が胸を焦がす。眼を瞑りたい。けれど、あおいはこの映画を見ることにした。
オープニングのラッパを聞きながら、かつての親友を想った。
壊れてしまった友情へ何ができるのだろう。
答えはきっと簡単で、あおいはそれが分かっていて、踏み出す勇気を持っていないのだ。




