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札憑き・サイコ・エンバーミング~撲滅メメントモリ~  作者: 満月小僧
第五部 ブルースプリングはもう二度と
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ブルー、ブルー、ブルー

 不知火あおいは良く夢を見る。


 夢の中で自分は制服を着ていて、その隣には同じ制服を着た京香の姿があった。


 夢の場所はいつもまちまちだ。教室であったり、校庭であったり、コンビニであったり、リビングであったり。


 何処でもあおいは京香と一緒に居て、食べたり遊んだり勉強したりする。


 新しくできたというクレープ屋に行ってみたり、カラオケで熱唱したり、試験勉強に四苦八苦したり。


 夢の中であおいは京香と笑っている。無垢な顔をして、今が一番楽しいと根拠もなく信じていた。


 他にも夢を見た。京香に抱えられて飛び回る風景だ。


 何度も何度も京香の問題にあおいは巻き込まれ、その度に京香は全身全霊であおいを助けていた。


 京香に抱えられ、彼女に抱き着きながら飛び回るのが、実はあおいは好きだった。


 夢の世界には眼が潰れてしまいそうな程の輝きがあった。


 それはかつてあった青春の日々。


 かつての親友と駆け抜けた二度と戻らない刹那の日々。


 青い奇跡に居たのだと、当事者であった頃は気付いていなかった。




 だから、あおいは夢から覚める度、涙を流すのだ。




「……」


 頬を濡らしてあおいは目が覚めた。


 あおいが居たのは懐かしきシカバネ町の目新しいホテルの一室。


 滲んだ視界で窓からあおいは空を見る。


 月明かりで照らされた雲。手が届きそうな星。


 ゴシゴシと瞼を擦り、壁時計を見た。朝までは時間が未だあった。


 寝直す気にも成らなかった。網膜には青い輝きが焼き付いている。


 あおいは壁掛けのテレビを点け、ピ、ピ、ピとチャンネルを回していく。


 深夜バラエティ、時代劇、アニメ、その中でふと目に留まったチャンネルがあった


 少年と少女が空を目指す冒険映画が丁度始まる所だ。


 この映画を何度も京香とあおいは観た。台詞だって全部覚えている。


 青い残照が胸を焦がす。眼を瞑りたい。けれど、あおいはこの映画を見ることにした。


 オープニングのラッパを聞きながら、かつての親友を想った。


 壊れてしまった友情へ何ができるのだろう。


 答えはきっと簡単で、あおいはそれが分かっていて、踏み出す勇気を持っていないのだ。

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