④ 損な役回り
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ジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――パァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアvアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
磁気嵐が唐突に弾けたのをヤマダは目撃した。
何が起きたのかは分からない。けれど。周囲へ広がっていたデタラメなPSI磁場も消失している。
そして、ヤマダは目撃する。弾けた磁気嵐の中心で、京香が倒れていた。
「セバス!」
「仰せのままに」
最短の命令でセバスはヤマダを抱えて京香の元へと走り出す。
「リュウイチ!」
「分かっている」
既に隆一も続いていた。
全速力で駆け、十三秒でヤマダ達は京香の元へ到着する。
京香は幸太郎を抱き締める様に倒れていた。その体を鮮血に浸しながら。
「救護班急げ!」
救護班を連れて関口も到着する。
それを待たず、ヤマダは膝を折り、手が汚れるのも厭わず、京香と幸太郎を触診した。
生暖かい、べたべたとした血。血はただ一人から出ていた。
「……」
「ヤマダ、どうだ?」
隆一の質問が頭上から投げられる。この質問の意図は疑問ではなく、確認だった。
「キョウカは大丈夫デス」
「……そうか」
この期に及んでもヤマダは少しばかりの期待をしていたのだ。もしかしたら、ギリギリでのハッピーエンドが待っているかもしれないと。
あり得ない。この世の全ての現象はあるべくして起きるのだ。
死ぬような戦い方をすれば死んでしまうのは当たり前の話なのだ。
小物カバンからスマートフォンを取り出し、ヤマダは短縮ダイヤルを打ち込む。
トゥルル。トゥルル。トゥルル。
ピッ。
『おお、どうした?』
通話音の先に居たのは第六課のキョンシー技師だ。
いつもの様に研究室に籠っていたのだろう。そういう男だ。
フーッとヤマダは息を吐く。自分がこういう役回りに成るとは思わなかったのだ。
――アカネがやると思っていたんですがね。
しょうがない。結局は確率。その確率をヤマダが引いてしまったというだけの話だ。
あまりにもフラットにヤマダは声を出した。
「マイケル、あなたの仕事の時間デス」
『――』
マイケルの沈黙がヤマダの耳に届く。彼がどんな顔をしているのか計算でも分からない。
『……幸太郎か?』
「ええ」
『了解だ。俺の仕事を全うしてやるよ』
残念そうな声でマイケルは笑う。いつかこんな日が来ると思っていたかの様に。




