表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
239/499

④ 損な役回り




***




 ジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリジャリ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――パァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアvアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!




 磁気嵐が唐突に弾けたのをヤマダは目撃した。


 何が起きたのかは分からない。けれど。周囲へ広がっていたデタラメなPSI磁場も消失している。


 そして、ヤマダは目撃する。弾けた磁気嵐の中心で、京香が倒れていた。


「セバス!」


「仰せのままに」


 最短の命令でセバスはヤマダを抱えて京香の元へと走り出す。


「リュウイチ!」


「分かっている」


 既に隆一も続いていた。


 全速力で駆け、十三秒でヤマダ達は京香の元へ到着する。


 京香は幸太郎を抱き締める様に倒れていた。その体を鮮血に浸しながら。


「救護班急げ!」


 救護班を連れて関口も到着する。


 それを待たず、ヤマダは膝を折り、手が汚れるのも厭わず、京香と幸太郎を触診した。


 生暖かい、べたべたとした血。血はただ一人から出ていた。


「……」


「ヤマダ、どうだ?」


 隆一の質問が頭上から投げられる。この質問の意図は疑問ではなく、確認だった。


「キョウカは大丈夫デス」


「……そうか」


 この期に及んでもヤマダは少しばかりの期待をしていたのだ。もしかしたら、ギリギリでのハッピーエンドが待っているかもしれないと。


 あり得ない。この世の全ての現象はあるべくして起きるのだ。


 死ぬような戦い方をすれば死んでしまうのは当たり前の話なのだ。


 小物カバンからスマートフォンを取り出し、ヤマダは短縮ダイヤルを打ち込む。


 トゥルル。トゥルル。トゥルル。


 ピッ。


『おお、どうした?』


 通話音の先に居たのは第六課のキョンシー技師だ。


 いつもの様に研究室に籠っていたのだろう。そういう男だ。


 フーッとヤマダは息を吐く。自分がこういう役回りに成るとは思わなかったのだ。


――アカネがやると思っていたんですがね。


 しょうがない。結局は確率。その確率をヤマダが引いてしまったというだけの話だ。


 あまりにもフラットにヤマダは声を出した。


「マイケル、あなたの仕事の時間デス」


『――』


 マイケルの沈黙がヤマダの耳に届く。彼がどんな顔をしているのか計算でも分からない。


『……幸太郎か?』


「ええ」


『了解だ。俺の仕事を全うしてやるよ』


 残念そうな声でマイケルは笑う。いつかこんな日が来ると思っていたかの様に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ