青髪の来訪者
「ふー」
恭介は頭を上げて一度空気を吐いた。報告書はもうそろそろ終わりだった。
太陽は上がり、白んだ空は明るさを主張し始めていた。
何故、この様なことが起きてしまったのだろう。恭介は過去の第六課で起きたすれ違いを思ってしまう。
清金京香と上森幸太郎。どちらが悪いという話では無かった。でも、どちらも正しくは無かったのだ。
取るべき選択、向き合うべき事象、それらの正しさを少しずつ掛け違えた結果、彼ら彼女らは悲劇へと走っている。
未開封のビール缶を探し、それを開けてコップへと注いだ。クーラーボックスに入れていた事もあり、キンキンに冷えている。
それをゴクゴクと飲み、冷たいのどごしが心地良い。
――続き、読むか。
気合を入れて最後の部分を読み直そうとした時だった。
コンコンコン。
第六課のオフィスドアが再びノックされた。
――またヨダカが来たのか?
恭介は立ち上がり「はーい」と声を出し、ドアを開けた。
そこには見知らぬ女性が立っていた。年はおそらく清金京香と同年代で、青く染めた髪が鮮烈だった。
――青髪?
この外見的特徴を恭介は知っている。
「おお、あおい! やっと来たのか!」
「飛行機が遅れちゃってね。何処まで話したの?」
「上森幸太郎が死ぬ直前。つまり、誘拐されたお前を助けに京香が失踪した所までだ!」
「……そっか。じゃあ、ちょうど良いタイミングだったかもね」
スタスタと青髪の女、不知火あおいは慣れた様子でオフィスに入り、「あ、私もビール貰うね」と適当に空いていた席、すなわち、恭介の隣へと腰かけた。
「……君は第六課の新人さん? 聞いてるかもしれないけど、私は不知火あおい。よろしくね」
「あ、はい。木下恭介です」
「ん。じゃあ、木下くん。ここからは私も話すよ。何で京香が失踪したのか。あの時何があったのか。話して欲しいってそこのキョンシーに言われたからね。私が話せるのはここだけだけどさ」
突然の人物に恭介は戸惑ったが、彼女の話がこの報告書の理解に繋がるであろうことは直ぐに分かった。
「不知火さん、あなたが誘拐されたんですか?」
「そ。そんな私を京香は助けに来たんだ。まあ、失敗したんだけどね。じゃあ、報告書を読みながらあの時のことを補足していこうか」
恭介は不知火あおいの隣に左隣に座り、報告書を読み直す。
そこには不知火あおいの言う通り、こう書かれてあった。
事後調査によって、清金京香の失踪はメルヘンカンパニーに誘拐された不知火あおい(先日殉職した不知火あかねの実妹)を救出するためであったことが明らかになった。
「それじゃ、話そっか」




