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空は白み、終わりが始まる

「ここで、不知火あかねが死んだんですか」


「ああ、その死体をこの場に居る全員が、そしてこの場に居ない当時第六課に所属していた全員が確認した。体中の骨は折れ、胸が撃ち抜かれた死体であった」


 シュワシュワ。ほとんど無意識に恭介はビールを飲んだ。喉が酷く渇いていたのだ。


 途中、何度か手洗いに行き、腹に溜まった水分を輩出したが、酔いが覚める気配はない。当然だ。ひたすらに酒をあおり続けているのだから。


 窓から見える空は白み始めている。


 七面鳥は八割がた食べ終わり、マイケルとヤマダとセバスチャンはピーナッツやサラミなどを摘まんでいた。


 チラリと恭介は自分のキョンシー達を見る。ホムラとココミは我関せず、互いの手をリボンで結び、ソファで抱き合って眠っていた。


 ホムラはともかく、ココミは今恭介が読んでいる第六課の過去について全て知っていたに違いない。これだけ近くの距離で長い間過ごしていたのだ。テレパシスト相手に隠し事は不可能である。


 フレームレス眼鏡の向こう。視界がショボショボと霞む。体が眠ろうと提案し、心が起きろと命令していた。


 恭介は過去に起きた出来事を想像する。匂いも音も見え方も何もかも知らない過去の第六課。その中で起きてしまったこの悲劇は一体いかなる意味を持つのか。


「不知火あかねの死は致命的だ」


「ああ、そうだ。その通りだ。あの時の第六課において不知火あかねは欠けてはならない人材だった。では、この後どうなったのか、想像が付くか、恭介?」


 上半身だけのスケルトンな霊幻が問い掛ける。


 その顔は笑ったままだ。このキョンシーの表情はやはり出力を間違えている。


「清金先輩が不知火あかねの死に関わった自分を許すはずがない」


「その通りだ」


「そして、上森幸太郎が清金先輩に不知火あかねの死を背負うことを認めるはずが無い」


「正にそうだ」


 ふーっと恭介は息を吐く。


「清金先輩と上森幸太郎の間に亀裂が生まれたんですね」


 両者が思うことは真っ向から対立していて、踏み込む事をしてこなかったそれまでが、致命的な結果を生むのだ。


「ああ、その通りだ」


 ペラリ。いよいよ報告書はあと数枚しかない。


「……清金京香の失踪」


 恭介は次章のタイトルを読み上げる。


「さあ、いよいよ上森幸太郎の終わりが始まったぞ」


 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!


 霊幻はどうして笑うのだろうか。


 理解できる日はきっと来ないのだろう、と恭介は思った。

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