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札憑き・サイコ・エンバーミング~撲滅メメントモリ~  作者: 満月小僧
ラプラスの瞳――0と1の世界
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③ 調査と諜報、推理と推測




***




 第六課のオフィスにてヤマダはカタカタ、パソコンと向かい合っていた。


 上司たる京香から命じられた(くだん)の野良キョンシー二体を捜しているのだ。


 京香と霊幻が第二課のワトソンの護衛から帰ってくるのは明日の朝七時頃。


「セバス、紅茶ヲ」


「はい、お嬢様」


 執事たるセバスに奉仕を受けながら、ヤマダはモニターに表示したシカバネ町南部の地図を睨んだ。地図上では百数のイエローマーカーが点滅している。


 ヤマダの席は第六課にあるが、人的素質は第二課に向いている。


「何処に居るのカ、じゃ失敗すル」


 思考を纏めるための独り言。キーボードとマウスでカタカタカチカチ。


 マップ上のイエローマーカーを中心に監視カメラの有効範囲を意味する円が浮かんでは消えていく。


「けれド、何処に居ないのカ、なら、分かル」


 野良キョンシー達の潜伏場所は監視カメラの範囲外。


「まだ場所は絞れませんカ」


 南区には潜伏できる場所が多過ぎる。


 充が野良達を取り逃がした地点をヤマダは見る。西区と南区の境目。ここから南区へ渡るルートはそう多くない。


「正義バカと同じ身体強化ヲ受けたキョンシー」


 となれば逃走経路は無数にある。


「困りましタ。どうしましょウ?」


 少し考えて、ふとヤマダの頭にとある方法が思い付いた。


「ふーム」


 腕組みして目を瞑り、今思い付いた手法を吟味する。


 手元にあるのは南区の監視カメラと警報装置の位置、最後に野良キョンシーが観測された地点、野良キョンシーは周囲の電子機器をジャミングする、野良キョンシーは金銭を強奪しているという四つの情報。


「めんどうデス。やってしまいましょウ」


 カタカタカタ。ヤマダは第二課と第三課へとあるデータを送る様にメールを送信した。


――返信が来るのは早くて二時間後ですかね。


「セバス、オヤツにしましょウ」


「仰せのままに。本日のお茶菓子はマドレーヌでございます」


「エクセレント」







 午後八時。ヤマダはセバスを連れてシカバネ町南部を歩いていた。


 地点で言えば中央部から南部への境目を少し過ぎた場所。


 白と黒を基調としたメイド姿で可愛らしいミニバックを片手に歩くヤマダの姿は、給仕がお忍びで夜の街を徘徊しているようだ。


 それはシカバネ町では異常なことだ。ヤマダの様な見目麗しい女性がシカバネ町をこの時間に歩くのは基本的に自殺行為である。


「ワタシが攫われたラ、何処のパーツが残るでしょうネ」


 フフフとヤマダは楽しげに笑った。


「お嬢様、戯言を言うのはお止しになってください。私の存在に代えてもその様な事は起こらないのですから」


 ヤマダの頬と胸と腹がカァッと熱くなる。良い。その言葉が欲しかったのだ。


 熱っぽい視線をヤマダはセバスへ送る。生まれる前から自分と共にあり、自分に尽くすことを絶対の存在理由とした好々爺。


 ヤマダから歪んだ愛情を向けられていると、セバスには理解できないだろう。それはセバスがキョンシーだからという訳ではなくて、仮にセバスが人間でも同様だった。


 自分の感情が誰にも理解されないことをヤマダは良しとしていた。


「なら、セバス、ワタシを守りなサイ。その全身全霊を賭けテ。ただシ、壊れることは許しますガ、ワタシの前から居なくなることだけは許しまセン。良いですネ?」


「御意に、お嬢様」


 ゾクゾク。まるで背筋を愛撫された様にヤマダの肌が粟立った。


――おっと、いけないいけない。落ち着かなくては。


 ヤマダはコホンと軽く咳払いをした。南区に来ているのは仮説の正否を問う為である。


「さて、そうこう話している内にそろそろデス。セバス、準備ハ?」


「万全でございます」


 ヤマダの視線の先、そこには南区のとある自販機があった。

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