⑦ トルネードドラゴン
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ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
――やばい!
『! 避けろ!』
音が聞こえた瞬間、恭介はアネモイ2へ命令していた。
一転攻勢。逃げてばかりだったアネモイが初めて攻撃のモーションを見せたのだ。
生まれたのは可視化されたトルネード。顎を開けた風の竜が明確な意思を持って牙を剥いた。
ヒュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
竜の大口は恭介達の体を吸い込もうとする。空に居るのにも関わらず浮遊感が彼らを襲った。
『アハハハハ! すごいねぼくの先代は! なら、ぼくもいっくぞぉ!』
アネモイ2が両手をパンパンと叩いた。直後、上方より迫り来る三体の竜と全く同じトルネードの竜が恭介達の前に現れた!
ゴオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!
六つの竜の唸り声が周囲の気圧を急激に歪める。
たまらず恭介は耳を抑えた。音がうるさいからではない。このままでは鼓膜が破けてしまうという確信からだ。
竜達の唸り声はアネモイ2の風のベールを容易く貫通する。
見るとホムラとココミは既に互いの耳を抑え合っていた。
――ほんっと仲がよろしいことで!
心中で悪態を付く。この二体の互いへの意識を少しでも自分に割いてくれればどれ程この戦闘は楽だっただろう。
そして、六体の竜がその牙と爪を互いに突き立てた。
複雑に絡まり合った気流の平衡状態は消失し、周囲へむちゃくちゃなソニックブームを引き起こす。
ババババババババババババア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ン!
恭介、ホムラ、ココミ、アネモイ2、セリア、アネモイ。モルグ島の上空に居た者全てが空気の爆発を受けた。
爆発は連続的で牙と爪が風の鱗に触れる度に周囲へ圧縮された空気を開放する。
恭介の視界は縦横斜め、全方向に回転し、自分の頭が何処を向いているのか分からなくなった。
アハハハハハ!
アハハハハハ!
アハハハハハ!
耳を塞いでいるはずなのにアネモイ2の笑い声が聞こえる。このキョンシーには今の激流と呼ぶのも生温い空の光景がはっきりと知覚できているのだろう。
――甘かった! さっきまでは全然全力じゃなかったんだ! くそ!
先程までは恭介達だけが攻撃し、セリアとアネモイは迎撃か逃亡するだけだった。生まれる被害は全てアネモイ2が生んだ物で、周囲の破壊力も一つしかない。
だが、風の神の名を冠する二体のキョンシーが互いに攻撃と言う選択肢を選んだ時、エアロキネシスは相乗効果を見せ、結果、世界へ破壊をまき散らす。
鋼鉄のミキサーの中で踊っているに等しい。アネモイ2が生んだ風のベールが無ければ、恭介の体はとっくに粉微塵だ。




