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ハーフムーン  作者: 人生輝
6/7

6日目。

*** 6日目(土曜日)***

雲一つ無い絶好の行楽日和だ。

8時半過ぎ、唯は、相変わらずのメイクだったが、服装はそれ程派手なものではなく、金髪の長い髪をなびかせ改札口にやってきた。


「お待たせでーす!」と、いつも通り大きな声で、オレ所に寄ってきた。

「よっ!じゃあこれ」

「なに?」

「競馬新聞だよ」と、オレは渡した。

「電車の中で見方とか教えてやるよ」

「ありがとさんでーす!」と、やたら元気で、大声で返答してきた。


オレ達の地元駅から府中競馬場まで、乗り換えを合わせて30分ぐらいだ。

その間をオレは唯に競馬新聞の見方を始め、馬券の種類・買い方、今日ある12レースの簡単な説明をした。

まあ、オレの言ったことの半分も判ってなかったと思う。


「やったあ!当たったよ、ノリカズさん!」と唯。

ビギナーズラックだ。1レース連複で5.2倍を唯が取った。


オレは唯に「最初だから、1レース千円までにしておけよ。」と注意をしていた。そして、彼女もその注意を守った。

オレは唯が、全12レース外れた場合を想定して、終わった時に”付合い代”として1万2千円を用意していた。

しかし、早い段階でその必要はなくなった。唯は、2レース、3レースも立て続けに当て、3千円があっという間に1万円越えする額まで増やした。


「いや、楽しいね!」と、唯。

「そう。」

「なんか、ノリカズさん、つまらなそうだね。」

「未だ当たってないから、当然だろ」


その後、4レースから8レースはオレが少額だが取返し、逆に唯が負け続ける。

それでも、唯は終始とても楽しそうにしていた。

お互い、9,10レースも外し、迎えた11レースは、今日のメインだ。年末の大レースに向けてのトライアル、唯でも分かる”スターホース”も出走する。パドックで出走馬を観ていた時、唯がオレに聞いた。


「このレースさ。ワタシ、3連単で行くよ!」

3連単、それは1位から3位までの馬を的確に当てる、馬券で1番難しいものだ。

「自身あるのかよ。」

「無いよ。でも、どうせならやってみたい」

と、彼女は言った後、変なことを聞いてきた。

「ノリカズさんは、何月生まれ?」

何となく見えてきた。一番素人らしい賭け方だ。

「オレは6月だけど・・・」

「ワタシ、2月。じゃあ、私の2と、ノリカズさんの6、そして足した8.2-6-8でどうだあ!」

「唯ちゃん。それは無理無理」とオレは強く言った。

先ず、6、8はまあ考えられる。ただ、2は10番人気だ。ここで1着予想は無謀だと諭した。しかも数字通り2-6-8は考えづらい。せめても、6-8-2にするべきとオレは、アドバイスしたが、


「ワタシのお金です。好きにやるもん!」と言い2-6-8を買っていた。

その数分後、立場は逆転する。


「やった!競馬って凄いね!凄い!」

世の中不平等だ。オレは長年競馬をやってきたが、こんな倍率を取ったことがない。

幾らとは言わないが、数十万円が唯に転がってきた。


「本当にビギナーズラックだからな。次やる時はこんなことは絶対ないから。」と、オレ。

「じゃあ、最終レースは今日儲けたお金全部賭けるよ」と11レース同様、今度は、自分の友達誕生日とかを足したり引いたりして、3連単で賭けていた。


当然だが、そうそう”ビギナーズラック”なんて続かない。結局、唯は儲けゼロで終わった。

非常に勿体無いことしたと、第3者のオレがグダグダと言ったが、

彼女は明るく、「楽しかった!本当に楽しかったよ、ノリカズさん!」と上機嫌だった。

オレは、何とか最終レース1.8倍を取り、トントンで終了。2人で競馬場近くの駅に向かった。


「何か食べたいものある?夕飯は奢ってやるよ」と、オレ。

「ゴメン、これから行くところがあるんだ」

「そっかあ」

「ねえ、ノリカズさん、明日もここに来るの?」

「まあ、他にやることもないからね」

「じゃあ、今日と同じ8時半に駅で待っているよ!」と、唯。

「大丈夫かあ?今日みたいなこと続かないぞ」

「へへ。じゃあね。また明日!」と、唯は言い、オレとは反対側の電車に乗って行った。


「結構、楽しかったなあ」と、オレ思い、明日も唯と会うことをワクワクしていた。

オレとしては、久しぶりな感情だった。

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