学校にテロリストが侵略してくる妄想を何割の男がしたことあるのか統計してみた件
僕は今幼馴染みの家の階段を登っていた。
長年気になっていたこと、しかし聞くことができなかったこと。
僕は勇気を振り絞って、それを訪ねてみる決心をしたのだ。
「カナメ、おいカナメ」
「なに……」
僕たちは両親同士が仲が良く、お互いの家が隣同士と言うこともあり、カナメの部屋に来ることも珍しくなかった。
しかし今からする質問はもしかしたら僕たちの関係性さえ壊してしまうものかも知れない、そう考えると急に緊張してきた。
「だからなに……」
「あのさ、カナメ…お前さ……」
「あー、イライラする! ゴニョゴニョ言ってないではっきり言ってよ!」
僕は覚悟を決めてカナメに一世一代の質問をした。
「女の子って授業中何考えてるんだ……??」
空気が凍る。
「キモ」
「うぐっ……」
カナメの容赦のない一言が僕の心を突き刺した。
しかし僕はめげずに質問を続ける。
「いや、あのな? 昔から気になってはいたんだよ。男子の考えてることはなんとなく分かるけど女の子って何考えてるのかな~って」
「いやいや、気持ち悪いよ! あんたいつもそんなこと考えてたの!? うわー、すみません今日から他人になってください」
「ちょっと待てよ、お前は男が授業中何考えてるか気にならないのか!?」
「ならないよ、だってなんとなく分かるもん」
「え? ちなみにどんなこと」
「エロいこと」
あーこいつ何にも分かってない。
これは僕の質問の答えを聞く前にこいつの考えを正さなければならないな。
「おまえ、それは違うぞ……」
「え、でも男なんて年がら年中エロいこと考えてるんでしょ?今だってあんたが私をエロい目で見てることくらい分かってるんだから」
「みてねぇよ! 誰がお前なんかに発情するか!」
「はぁ!? こんな美人で成績優秀、しかも人望も厚いカナメ様と同じ空気を吸わせてやってるってだけで感謝してほしいくらいなのに、その私に向かってふざけてんの!?」
「ふざけてるのはお前だ! てかそもそもな、年がら年中エロいこと考えてる男もそりゃいるさ。でもそれは全体のほんの数割程度であって、他は80%くらいしかエロいことは考えてないぞ?」
「それもう100%でいいんじゃないかなぁ!?」
「分かってねぇな、その20%があるから社会は成り立ってるんだろ!? もういいよ、他の人に聞くから!」
そういって部屋から出ようとすると呼び止められた。
「ちょっと!」
「んだよ、まだ文句言い足りないのか?」
「そうじゃなくて、違くて……」
「あー、イライラするな! ゴニョゴニョ言ってないではっきり言えよ!」
カナメは覚悟を決めて僕に一世一代の質問をした。
「男はその20%って何考えてるの……??」
「……」
「…………」
「………………」
「……………………」
「お前も気になって────」
「うるさい! あんたが余計なこと聞いたのに乗ってあげたんでしょ!? さっさと答えろよ!」
「ハイハイ、えーっとね。男は大体授業中暇なときはエロいこと以外だとテロリストに襲われる妄想してるかな」
「……まじめに答えろよ」
「いや、マジマジマジマジマジ! 嘘なんて言ってねぇから!」
「ハァ!? じゃあてめぇは年がら年中発情してるとき以外はテロリストが学校に侵略してくる頭のおかしい妄想してるのかよ!」
「頭のおかしい妄想っていうなよ! 男は皆妄想してるぞ、財産だぞ! 銃の嵐やナイフ突き立てた暴漢の隙を突いてクラスのヒーローになる妄想してるんだぞ!」
「嘘つけぇ!」
困ったな、嘘じゃないのに。
これじゃただ僕が頭のおかしいやつで終わってしまう。
「じゃ、じゃあ他の男どもに聞いてみろよ。皆僕に同意いてくれるぞ!」
「イヤだよ! 私が頭おかしいと思われちゃうじゃん!」
「あー、だったらいいよ! もうこの話はおしまいだ! バーカバーカ!」
「バカはお前だバーカ!」
僕は勢いよく扉を閉め、部屋を後にした。
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昨日喧嘩したことにも懲りず、僕はまた幼馴染みの部屋に来ていた。
「なに、謝る気にでもなったの?」
「いや、今回は報告に来た。今日学校でクラスの男全員に授業中テロリストが攻めてくる妄想をしたことがあるか聞いてみたわけだ」
「おぉ、学校でぼっちのあんたにしてはよくやったじゃん。でもどうせあんただけだったんでしょ。昨日はバカにして悪かったね、そんな気持ち悪いところもあんたのいいところだから気にすることないと思うよ」
「気持ち悪いのが取り柄ってなんだよ、僕はモンスターかよ。てか、ちゃんといたよ。僕以外にも同じこと考えてるやつ。まぁ、思ったほど多くはなかったけど」
「え!? いたの!? あー、分かった。 あんたがよく一人で話しかけてるエア友達だね」
「違うよ! てか何でオレのエア友達のこと知ってるんだよ!」
「皆知ってるから友達ができないって考えたことないの?」
「ファアアアーー!!」
そんなこと聞きたくはなかった!
僕は頭を抱えてその場にうずくまった。
「元気出せよ!」
「ダメージ与えた張本人が……」
「テヘッ☆」
「そうじゃなくて、僕が調べた話。実際聞いてみたら4割しか考えてなかった」
「そんなにいたの!?」
お、これは意外な反応だぞ。
僕は10割とはいかなくても7~8割は考えてると思っていたので、4割という結果は少ないと思っていた。
「えー、なんか幻滅……男ってそんなこと考えてるやつが4割もいたんだ……あんたと同類がそんなに……」
「ちなみに言っとくが、ぼっちだからとか非リア充だからとか関係ないからな。野球部エースの杉下君、あいつなんか僕の話にすごく同意してくれたばかりか、ノリノリで他の男子集めるのまで協力してくれたぞ」
「ぐわぁ!! 何やってんだイケメン杉下!! イケメンはイケメンらしくふるまぇ!」
「それは流石に杉下君に求めすぎだろ……」
まぁ、今日初めて杉下君と話したけど、めちゃくちゃいいやつだった。
イケメンで性格いいとかあいつ異世界から来てチート能力使ってんじゃねぇの?
「あー、もう聞くんじゃなかった」
「まぁ、まだ続きがあるんだけどやめとくか?」
「いや、聞きたい」
「だと思った。まぁ、今回分かったこととしては他に、テロリストの妄想といってもいろいろあったことが判明した」
「はぁ……?」
「例えば僕のような相手を不意打ちで倒すという考え方は少なくて、大抵は真っ向勝負で打ち倒すというのが多かったかな」
「うわ、中2くさ……」
「他には結束バンドの外し方まで研究してるやつ、自分がテロリストになったときの侵入経路を考えてるやつ、なんてのもいたかな」
「自分がテロリスト!? 何考えてるの、超危険人物じゃん! 誰……!?」
「守秘義務があるからいえないな」
「もうイケメン杉下の残念な一面をさらしてる時点であんたにその義務を語る資格はない! はよ言えや!!」
「…………杉下君」
「……………」
変な空気になっちゃったじゃん!!
「で、他に分かったとなんだけど……」
「まだあるのかよ!!」
「この妄想をしたことがある40%のやつのほぼ全員はこの統計が100%近いものになると思ってたんだ」
「……どゆこと?」
「つまりテロリストが学校に侵略してくる妄想をしたことあるやつはみんな、テロリストが学校に侵略してくる妄想は誰もがしている一般的なものだと思ってたんだ」
「えー……」
「中には40%という結果を認めず他の奴らは嘘をついているんだと断言するやつまで現れた」
「うわぁ……」
「杉下君だけどな」
「……」
杉下君には悪いが、もうこの際こいつに僕の理論を納得させるためイケメンパワーを借りさせてもらう。
彼なら許してくれるだろう、優しいから。
「まぁ、そういうことだから僕の妄想も決して逸脱したものじゃなく、皆考えてると思ったのも間違いじゃなかったってことだよ」
「それだけじゃあんだが周りから逸脱してない理由には決してならないけどね?」
「うるさいな!
分かったら帰るからな」
「帰れバーカ!」
「帰るわバーカバーカ!」
と、僕は扉に手をかけたところで気付く。
「そういえば女の子が何考えてるのかまだ聞いてなかったんだけど結局なに考えてるんだ?」
「あぁ、まぁ男に比べたら隠すほどのことでもないしいいか」
カナメはそうつぶやくとあっけらかんと答えた。
「大抵イケメンのこと考えてるよ」
お前も大概じゃないか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
作中に出てくる統計や妄想のパターンなどは、大昔に筆者が周りの人に聞いて回ったデータを元に作っています。
ちなみに自分は主人公の「僕」と同じでした。
時代や地域などによってもデータは左右するかもしれませんので、皆さんも周りの人に聞いてみてはいかがでしょう。
「自分はこんなだった。」「こんなことしたこともない。」などの感想もお待ちしています。
因みに作者はこんな小説も書いています。ぜひこちらも読んでみてください。
タイトル:「え、それは嫌だな。私帰っていいですか?」
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