プロローグ
——僕はやってないよ、先生。
俺はそんな声がした気がして、後ろを振り向いた。しかし、そこにあったのは人通りの少ない、俺が帰りにいつも通る道だった。
「気のせい……だよな。」
そうして、前をもう一度向いた時。
俺の視界は逆さまになった。聞こえたのは車のブレーキ音。見えたのは夜の闇を照らすライトの光。そして思う。
「ほんと…………ついてねえな。俺。」
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「ここは、二つの世界の狭間。世界で死んだ魂は、ここで浄化され、一旦オリジナルの状態に戻る。」
その者に、体はいらなかった。
「それはどこかの世界で、車にはねられた人間の魂も例外じゃない。」
必要なのは、生物と話すための声のみだった。
「僕がその魂を他の世界へ引き寄せたりしなければ、ね。」
顔がなくても、笑っているように感じられるだろう。その声にから発せられる謎の感覚によって。
「さあ、君は僕の期待に答えてくれるかな?」
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よし、まずは状況を整理しよう。俺はさっき車にひかれた。死ぬほど痛くて痛くてと思ってて……その後が現状な訳だが。一言で言おう。意味がわからない。
「あれ、せっかくお茶を出したんだが、気に入らなかったかい?」
「いや、体も見えない声に突然茶出されても……な。」
そうだ、今俺は自称神に変な部屋に連れてこられて、茶を出されてる。いやーこれやっぱ俺死んだんじゃないか。だってこれおかしいって。絶対おかしい。
「あ、死んだっていうのは間違ってないよ? 僕が死んだ後の魂を確保しただけだから。あとやっぱ声だけじゃ話しずらいか。いつもはお告げしかしないし、いいかなって思ってたけど。ほい。」
そんな気が抜けた声とともに、俺の前には長い金髪の5歳ぐらいの少女が現れ、茶が出された机の、俺とは反対側に座った。
「ほら、これで話しやすいでしょ。」
どうやら信じるしかないらしい。これは……いわゆる……
「そ、異世界転生ってやつさ。」
(俺に出したはずの)お茶を飲みながら神は言った。
しかし、俺の中には困惑よりも、これからの事が楽しみな気持ちの方が大きかった。前世では、親の顔も知らず、せっかく頑張って教師になったと思えばトラブルに巻き込まれ。実際、未練などはなかった。
そして、俺はこの類の小説などもよく読んでいた。そしてこれが、いわゆるお約束にそった異世界転生だとしたら!
「まあ、スキルは一個は授けてあるよ?」
「マジか! 一体それはどんな……。」
「ああ、それはね〜。ん? ああ、時間だ。」
「え?」
「いやー僕も他の転生やったりとか忙しいんだよ。詳細はお楽しみってことで。じゃあね〜。」
そんな、適当な。俺には人生がかかってるんだぞ! しかも他の転生者とか言わなかったか!? トラブルの予感しかしない!
俺の必死の抵抗も虚しく、俺は意識を失っていく。
そして神は笑う。
「さあ、始めよう。これは君の物語だ。邪魔するものは排除すればいい。例え力づくでしか排除できないものだったとしてもね。」
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目が覚めた時、俺には白い天井が見えた。
「あう、あうあうああ(ああ、ここは病院か)。」
あれ、おかしいな。声がうまく出ねえぞ。
「お、起きたみたいだぞ。ブレイズ。」
「そうみたいじゃな。それにしても可愛い赤子じゃのう。」
赤子? ああ、そうか。俺、転生したのか。
黒髪のおっさんと、赤い鎧と兜を着た人の二人が視界に入った。
これが、俺の父親と師匠との出会いである。
話の都合上、大幅な修正を加えました。これからもよろしくお願いします。