超人クラブへようこそ その6
目がさめると家には誰もいなかった。
携帯を確認すると角田先輩からメールが届いていた。
「明日、緊急招集、場所、時間いつもどおりに」 角田 護
深夜の丑三つ時に届いたらしい。先輩ねてないのか
……はぁ?いつも通りって……何?
今日、日曜なんだけど学校は休みでカウンセリングルームに集合なわけないし。
第一、初めての部会って言うんで張り切って、三日後をどきどきしながら待っていた俺の気持ちは……。
携帯を開いたままボーッとしていると誰かのメールを受信したらしくはメールマークが画面の上部左に表示された。
確認すると角田先輩だった。
「今、外にいる。マンションの入り口、駐輪場まで来てほしい」角田 護
……えっ、今、外って、俺の住んでるとこ、何で知ってるの?教えてないのに……
あわててパジャマを脱いで服に着替え、財布の入ったカバンと鍵を握りしめ、靴をはいて転がるように部屋を出た。
共同スペースにあるエレベーターの前に行くと、まさに扉が閉まる寸前で中にいた人が気がついて、「開く」のボタンを押してくれた。
お礼を言って中に入り、エレベーターが階下に着くのを待つ。
エントランスホールを通り抜けて駐輪場スペースの方に行くと数本植えてある桜の木の下に着物を着た先輩がしゃがんでいた。
先輩は持参したガラスの小瓶の中の米を地面にまいていた。
足元に数羽の雀がいて、先輩を恐れるでもなく一生懸命、ちゅんちゅんと餌をついばんでいる。
なんとも不思議な光景だ。
「角田先輩」
「やあっ、高森、おはよ」
今現在11時、実際には、朝と言い難い時間だ。
「よく、ここが分かりましたね。俺家の場所いいましたっけ」
「いや、雀に聞いた」
雀に?そういえば先輩の能力は動物全般の意思の疎通だった。
便利な能力だ。
「そのエサは?」
「僕の家のお米、減農薬米で八分づきだからあんまり害がないだろうと思って持ってきた」
動物の能力を利用する場合、必ずお礼をするように心がけているのだと先輩は言う。
「それにしても、先輩はいつ見ても制服以外はほとんど着物と草履なんですね」
「ああっ、これ?今朝は母上の茶道の稽古につきあったから……。
でも僕は君に言われるほど毎日、着物を着てるワケじゃないぞ」
「ふーん、そうですか、茶道に、書道、先輩の趣味は優雅ですよね」
「それは、母上に言われて……」
先輩にとって、母という存在はとても大きいものらしい。
マザーコンプレックスなのか?
「……それはそうと高森要、朝ご飯は食べたのか?」
「いや、まだです。実はさっきまで寝てたんですよね。
眼覚めたら、親はいないし、姉貴もどっか行ったみたいで」
「幸せな奴だな、僕も日曜ぐらいその時間までねてみたいよ」
「メール確認したら、緊急招集とか書いてあるし、場所も時間も書いてないし、おれ焦って」
「ごめん、高森がはじめてってこと失念してた。だから直接家に来たんだ。こっから遠くない場所だから今から行こう」
先輩に先導されてついていくと何の事はない、
銀行員の菊留氏とあったあのファミレスだった。