9限 一時の休息
前回までのあらすじ
壁打ちに来た武本 圭介はまた、池波 沙織里さんと出会う。そして池波さんから皆里 睦美について知ってしまった。
高校が終わり家に帰宅する。
「疲れたー」
今日はバイトがないためソファに身体を預ける。
「せめて、着替えなさいよ」
今まで圭介が妹に注意してきたことを母に言われてしまい口が綻ぶ。ゆっくり身体を起こし自室にのんびりいく。
着替えてリビングに戻ってくると母が夕飯の支度を始めた。
「加奈はテニス部だよね」
手際よく料理をしながら訊いてくる。
「うん、そーだよ、部内で上位みたいだよ、なんか手伝おうか」
圭介はソファから立ち上がり手伝おうとした。
「大丈夫だよ、テレビでも観てて」
分かったとソファに寄りかかる。4時とあってニュース番組が流れていた。その番組をぼんやり観ながら過ごす。母さんの料理の音が心地よく感じてうとうとする。
「んー」
目を開け反射的に大きく背伸びをする。視野がはっきりしてソファで寝ていたことに気づく。
「あ、お兄ちゃん、おはよ」
リビングで何か母と話していた加奈が圭介に気づき近づいてくる。
「おはよう、いま何時?」
加奈が9時と教えてくれた。かなり寝てしまっていたようだ。まだ完全に働かない頭を目覚めさせるため風呂に移った。まだ、寝ぼけているのか足がおぼつかない。そのため、加奈に溺れないでね、と忠告を受ける。
「あぁ」
曖昧な返事をして風呂に入った。シャワーを全身に浴びると、冷たい水が全身の神経を攻撃し、徐々に目が覚めてくる。そして水がお湯に変わった時には完全に覚めていた。浴槽に入ってしまったらまた寝てしまいそうでシャワーだけにして風呂を上がる。
「さっばりしたぁ」
おっさんみたいなセリフを漏らしリビングに戻る。
「あ、お兄ちゃん、ごはんの用意出来てるよ」
そう言われて視線を食卓に移すと確かに美味しそうな夕飯がならんでいた。加奈は圭介の前に座ると、今日の学校のことを話しだした。この時、母さんはおそらく自室にいたと思う。
「美味しかったー」
綺麗に夕飯を食べ終えると加奈が話があるということで食器を流しに置き、飲み物を用意してテーブルに向かい合うと加奈は母を呼びに行った。
「お兄ちゃん、再婚のこと聞いたんだけど…賛成?」
いきなり本題に入る加奈。多少驚きはしたが冷静に考える。重い空気が流れていたため半端なことは言えない空気だった。一口飲み物を含み答える。
「僕は賛成かな、加奈は?」
「私は……」
暗い表情を見せ、言うか躊躇っているようだったが、正直反対と小さく答える。意見が分かれ詰まる。
「加奈、一度会ってくれないかな」
母が提案する。加奈は絶対反対というわけでもなさそうだったため頷いた。その後、母が相手と相談した結果、土曜日会うことになった。
「それとお母さん、仕事に戻らないといけないから明日はかなり遅くなると思うから、圭介には悪いけど夕飯お願いね、ホントゴメンね」
圭介は頷くしかなかった。