7限 慣れない日常
今までのあらすじ
母さんがいる生活に新鮮さを感じる武本 圭介。
その母さんが突然、再婚話を切り出した。
そこに母さんをよく思わない加奈が帰宅した。
「たっだいまー」
その口調は重い空気を破壊するには十分だった。
「今日もお兄ちゃんが作ったのー?」
テーブルの上の料理をきらきらの目で眺める。
「今日はお母さんが作ったんだよ」
圭介はそれを聞いた加奈が一瞬だけ曇った表情を見せたのを見逃さなかった。
「それより、着替えて来いよ」
いつも通りの言葉を掛けた。この時、母の表情を怖くて見えなかった。そして仲良いのね、と明るく装うどこか寂しげな母も見たくなかった。
着ぐるみパジャマに身を包んだ加奈がそんなことを知らず無邪気に母の夕飯を頬張る。
「おいしー」
「そう、良かった」
それを聞き圭介も一口食べる。
「ん、本当においしい」
嘘ではなく本当に美味しかった。料理を作っていたときも手際が良かったので海外赴任中でも作っていたのだろう。そんなことを考えながら加奈と話しながら夕飯は進んでいく。そのほとんどが一方的に加奈が話していた。その間、加奈に母の再婚話をするなら今しかないと考えていた。次の休みが数日後なため早いほうがいいだろうと考えた。
「はー、美味しかった」
夕飯を食べ終え、満足している加奈に言おうとしたが何と言いだせばいいのか困る。
「今日はお兄ちゃんが食器洗いねー」
いつもの仕返しでもするようなイタズラ顔で言う加奈を見たらなにも言えなくなってしまった。そしてそのまま加奈はやりたくないのか、押し付けるためなのかすぐに自室に行ってしまった。母さんが立ち上がり食器を洗おうとした。
「母さん、やらなくていいよ」
そう言い、圭介は食器を洗い始めた。