6限 変わる日常
前回までのあらすじ
3年ぶりに母さんが帰って来たが喜ぶ圭介と反対に
加奈の様子はおかしかった。
圭介はいつも通り高校に行き、授業に行ったが帰宅すると「いつも通り」ではない。カードキーを差し込みドアを開けるとリビングの扉から光が漏れている。母がいるのだ。その母に向かって言葉をかける。
「ただいま」
「おかえり」
その当たり前の言葉が圭介はなんだか恥ずかしく思い自室に着替えに行く。
「バイトって何してるの?」
母が料理を始めながらリビングに戻ってきた圭介に尋ねる。
「駅前の飲食店だよ」
「駅前かー、3年の間にだいぶ変わっちゃったよね」
そうだね、といいながら母の仕事について聞いたり母のいなかった間の出来事を話した。
「やっぱりテニスやめちゃったの?」
部活には入らなかったことを伝えると母は残念な表情を見せた。
「あのことが原因なの」
「そんなことはないよ、あの頃調子悪くて伸び悩んでいてやめ時だったんだよ」
残念そうな表情をみせた母を安心させるため言うか悩んでいたことを話す。
「……今でもたまに壁打ちとかやってるよ」
「心残りがあるんじゃないの」
安心させるため言った言葉が自分を苦しめる。何も言えないでいると母さんからある提案を受けた。
「……それならテニスの練習に付き合ってほしい人がいるんだけど」
「テニスの練習って誰と?」
突然のお願いに驚く。
「皆里 睦美ちゃんって子、小学生の中ではトップレベルみたいだよ」
名前を聞いてもピンとこない。しかしそのようなことはどうでも良かった。人に教えることなんてできなかったからだ。それを伝えると母は手を合わせ目をしっかり合わせてきた。
「練習相手でいいからお願い」
「まあ、それなら」
母の熱意あるお願いに頷く仕方なくなかった。
それを見た母は良かったと安心した表情を見せた。
「それと……」
母がまた真剣な表情になり慎重に言葉を選ぶ。
「母さん、再婚を考えていて……」
母さんの口から出た言葉の意味を考える。しかしいくら考えても文字としては理解できたが現実として考えるとどうしてもぼやける。どこか遠くのことと捉えてしまう。
「それで、顔合わせっていうのかな、どうかな?」
父と離婚して4年近く過ぎたのかと思いを巡らす。圭介は高校2年生になり、加奈は中学2年生になっていた。そんなことを考えていると再婚という意味が薄々分かってきた。それでもまだはっきりとわからないため濁す。
「加奈が賛成するか……」
母は暗い表情をして俯いて黙ってしまった。昨日の加奈の様子は母に対して良く思っていないものだった。さらにそこに新たに父が現れたらどのような反応するのかわかりきっていた。
そこに加奈が帰宅した。