51限 ラリー
前回のあらすじ
五人は旅館につき、テニスをすることにした。
「最初は加奈と睦美と誰やる?」
圭介がボールを弾ませ、やる気満々で尋ねる。
「圭介やっていいよ」
唐崎が呆れた声で言う。
「ごめんねー、あと池波さんやらない?」
ネットをあげていた池波さんが顔を上げ嬉しいそうな表情を見せる。
「じゃあ、やろっか」
加奈と睦美と圭介と池波さんがコートに入り、斉木と唐崎がベンチに座りラリーの様子を見ることにする。
「睦美ちゃんの実力わかる?」
「いや、全国レベルということだけで実際の強さは」
唐崎と斉木が睦美に期待していた。一体どれくらい強いのか、知りたかった。加奈はテニス部の部長で腕はかなり上手かった。圭介は元南中エースで唐崎、斉木より強い。池波さんの腕は圭介に劣るもかなりのものだと知っていた。斉木と唐崎は実際ラリーをして驚かされたのだった。
「じゃあ、いくよ」
その掛け声とともに圭介がボールを軽く打つ。ボールは弧を描きながら池波さん、睦美ペアのコートに弾む。池波さんがそれを少し強めに加奈に返す。
「本気だしていいですよー」
加奈がそう言い、強めに睦美に向かってストロークを打つ。まっすぐ矢のように放たれたボールは弾んだ後、伸びたが睦美は平然と思いっきり圭介に返す。
「うぉっ」
圭介がその速さに驚きタイミングがずれ、フレームに当たりボールがおかしな軌道になる。圭介は以前リベンジした時よりもかなり鋭いショットに驚く。その打球は一番最初の時の睦美と同じだった。どうやら睦美は気分でかなり変わる性格のようだった。
「もう、お兄ちゃん、なにやってんの!」
圭介の緩いフレームショットのせいで決められ、加奈が楽しそうに怒る。
「けっこう、いいショットだったな」
「さすがだな」
ベンチの二人が睦美の強さに感心していた。
「じゃあ、次行くよ」
圭介がボールをまた軽く打つ。そして池波さんが先ほどより強めのトップスピンを打つ。深く打ったショットはラインギリギリで急激に落ちる。
「え、なんなの、今の」
加奈がその打球に驚き、タイミングを逃した。
「みたか、いまの、あんなに落ちるんだ」
斉木と唐崎もその打球には驚いていた。