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小学生に教わる庭球講座  作者: いさまた
4/75

4限 違和感

前回のあらすじ

小学生に負け落ち込んでいた武本 圭介。

普段と変わらない高校生活を友達の唐崎 拓、斉木 祐真と過ごしているように見えた。しかし圭介はテニスラケットを学校に持ってきていた、

高校が終わった圭介はその足で壁打ちにきていた。壁打ちがあるのが高架下だからなのかボールが壁に当たる音が響く。圭介は小学生に負けて以来、夏休み前の短縮授業を使って壁打ちをしていた。この時もアルバイトを入れようとしたが夏休みにやらないのと同じ理由でやめた。斉木や唐崎のようにテニス部に入りテニスの大会に出るという目標はなかったが小学生に負けて悔しい、強くなりたいという想いでラケットを振る。中学でテニスをやめて以来、そんな思いをもうしないかと思ったがやはり圭介はテニスを手放さないでいた。スマホでフォームを撮り確認しては打つことを繰り返す。ラケットをお腹の前で構え、腰骨のあたりを軸に身体を右に向けて、テイクバックをして、そのままラケットを前に押し出すように振る。フォアハンドストロークのイメージができているが思い通りにコントロールできない。動画サイトの打ち方と比べてみるが分からない。それに常に違和感を感じていた。


「あれ、武本くん?」


急に話しかけられ驚きつつ、声のするほうを向くと同じ高校の制服を着た女子生徒がいた。同じクラスの池波さんだった。下の名前は確か沙織里だった。


「池波さん?」


「うん、そーだよ、いつもここで練習してるの?」


嬉しそうな表情を見せながら急に制服を脱ぎ出した。


「うぇえ!?」


素っ頓狂な声をあげた圭介がおかしかったのかクスクスと笑う。


「大丈夫だよ、下に体育着着てるから、ほら」


確かに制服の下には体育着を着ていたが高架下のテニスコートには壁なんてまったくないため外なのだ。一応網はあるがボールが外に出さないためで外から丸見えなのだ。そこで恥ずかしげもなく体育着を着てるからという理由で制服を脱ぎ出せるのかと圭介は疑問を感じた。


「それでいつもここで練習してるの?」


もう一度同じことを池波さんは尋ねてきた。


「最近短縮時間だから時間ができたからね」


「部活はやってないの?」


「家庭の事情でちょっとね」


それ以上その件に関しては踏み込んでこなかった。軽く準備運動をした池波さんはボールを慣れた手つきで軽くラケットで下につく。壁にボールが当たる激しい音ではなく地面にボールが弾む小さな音が響く。圭介はベンチに座り池波さんのテニスの腕を見ることにした。


「なんか見られるの恥ずかしいね」


制服を脱ぎ出したのに何を言ってるんだと笑いそうになるのを堪え、気にしないでいいよ、と答えた。

池波さんが壁打ちを始める。その様子を見るとかなり高いレベルでそのフォームに見惚れる。フォアハンドストロークもバックハンドストロークもフォームが基本に忠実で綺麗だった。流れるように一つ一つのボールをコントロール良く壁の一点に返す。さらにフォアハンドストローク、バックハンドストロークと交互に打つだけではなく球種もスライス、トップスピンなど変えていた。数十回続いたところでやめた池波さんは不満げな顔で僕の隣に座る。


「バックのスライスがまだ上手くいかないんだよねー、他のショットもまだまだだと思うし、バック、私も片手で打とうかな、かっこいいし」


「そうは思わないよ、僕よりかなり上手いし、いまのままで大丈夫だよ」


それを聞いた池波さんはそうかなと嬉しそうな表情をみせた。


「よし」


気合いを入れ立ち上がり壁の前に立つ。ボールを軽く打ち壁打ちを始める。回転を意識せずそのまま打つが違和感を感じる。


「ワンテンポ、遅くない?」


ベンチに座った圭介への最初のアドバイスがそれだった。


「毎回打つとき、イメージしてから打ってるんじゃないのかな、とりあえず何も考えずに打ってみたら」


言われた通りに打とうとするが身体がうまく動かない。その後もいろいろ試すがうまくいかない。そしてそのまま時間が過ぎていってしまった。


「ごめん、夕飯の支度があるからそろそろ……」


教わっときながら途中で帰るのはどうかと思ったがこれ以上やると部活帰りの加奈に夕飯が出せなくなってしまう。


「あ、夕飯自分で作ってるんだ、偉い!私には無理だよー」


「まぁ、料理できれば楽しいよ、悪いけどコート整備やっといてくれる?」


「全然大丈夫だよ、まだ、やってるから」


また明日、と僕たちは別れた。帰り道で圭介は自然と笑みがこぼれてしまった。


[加奈と圭介のテニス講座]



加奈:「お兄ちゃん、今日はバックバンドストローク

フォアハンドストローク教えて!」


圭介 :「テニスの試合で一番多く使われる一回弾んだ

ボールを打つことをストロークというんだ。

その弾んだボールを利き手側で利き手で返すの

がフォアハンドストローク。フォアとかフォア

ハンドともいわれてるよ。つまり右利きだった

ら右側で左利きなら左側だよ」


加奈:「じゃあ、利き手と逆の手で打つのがバック

ハンドストローク?」


圭介:「違うよ、バックハンドストロークは利き手の

逆側にきたボールを利き手もしくは両手で

返すことだよ、これはバックとかバックハンド

ともいわれてるんだ」


加奈:「なんか、胸の前に腕が来ちゃうよ」


圭介:「それでいいんだよ、フォアハンドストローク

は手のひらが前にきて、バックハンドストロー

クは手の甲が前に来るんだよ」


加奈:「ところでバックハンドストロークの片手打ち

と両手打ちは何が違うの?」


圭介:「両手で打つと安定感がいいんだよ、その代わ

り片手打ちに比べて回転がかけにくいんだ。

片手打ちの方はカッコよく見えるんだ、しかし

慣れるまで時間がかかるんだ。ほかにもメリッ

ト、デメリットがそれぞれにあるんだよ」


加奈:「そうなんだ!」


圭介「この調子で明日もがんばろうね!」


加奈:「うん!」

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