3限 情熱への点火
前回までのあらすじ
小学生に負けた武本 圭介は妹の加奈との会話で
少し回復しつつあった。
次の日、高校に着いた圭介は唐崎に話しかけられた。
「圭介、おはよー」
昨日のことを気にしてないのか、いつも通りの唐崎に習い圭介もいつも通りにだるそうに返す。
「昨日もバイトか、お疲れさまです。そのかわり明日は休みだったよね」
「そうだよ、火、木が休みだからね」
圭介は家庭の事情というやつでお金をできる限り自分で稼がなきゃと思っていた。
「偉いな、夏休みはどうするの?」
週5、6時間バイトだよ、と言うと唐崎が驚きの表情を見せる。圭介自身ももっとバイトを入れようかと思ったが、店長に昔の怪我や働きすぎを心配をされたのだった。さらに加奈との夕飯の時間を作れなくなるということも原因の一つだった。いま、加奈と圭介の二人暮らしで加奈にこれ以上、寂しい思いをさせたくなかったのだ。
「おはよ」
そんなことを話していると斉木が登校してきた。
「おはよ、圭介、夏休み暇らしいよ」
そのことを聞いた斉木は嬉しそうな表情をみせた。
「それじゃあ、、みんなでどっか行こうぜ、加奈も連れてさ」
妹のことを言われると圭介は黙ってしまった。圭介の両親は離婚していて父はその時に出ていってしまっていた。さらにその数年後に母は仕事で海外に行ってしまい、いつ帰ってくるか分からなかった。そして圭介もバイトであまり外出する機会がないため加奈のことを気にしていたのだった。
「そうだな、海とかいいな」
「いいな、それ」
先生が来る間圭介達はその話で盛り上がった。そのため教室の後ろにあった圭介のラケットケースに気づかなかった。それは授業が終わっても変わらなかった。
[加奈と圭介のテニス講座]
加奈「お兄ちゃん、今日はサーブについて教えて」
圭介 「サーブというのはゲームのなかで最も重要な
んだよ、これが入らないと試合にならないん
だ」
加奈 「どういうこと? 」
圭介 「サーブというのはね、最初に打つ大きく上
から下に振り下ろすやつで、これが2回連続
で相手コートの小さな枠に入らないと失点
になるんだよ。
ちなみに一回目をファーストサーブ、二回
目をセカンドサーブというんだ」
加奈 「ずっと入らなかったらずっと相手の点数に
なっちゃうの?」
圭介 「そうだよ、だからって弱く打つと強いボール
が返されちゃうんだよ」
加奈 「えー、どうしよう」
圭介 「そこでファーストサーブを攻めた強めのボー
ルにしてセカンドサーブは確実に入るボールに
するんだ」
加奈 「なるほどねー」
圭介 「明日も頑張ろっか」
加奈 「うん!」